廣澤やすまさ
#5 小さくたって、無名だって、ブランド。
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#5 小さくたって、無名だって、ブランド。

廣澤やすまさ

ブランドとは、「印象を良くして活動し続けていきたい事業体のことで、自治体も含む」みたいに最初の投稿で書きましたが、実はこれ、僕なりの考え方なので、ここでもう少し突っ込んで、どうしてこう定義したのか説明しておきます。

まずブランドの語源を調べると、家畜の焼印から来ていて、「この牛は俺んちのだ」と区別するためだったとか。さらに、通説となっている定義を追っかけてみると、敬愛してやまないマーケティングの神様のコトラーによれば、「ブランドとは、個別の売り手または売り手集団の財やサービスを識別させ、競合する売り手の製品やサービスと区別するための名称、言葉、記号、シンボル、デザイン、あるいはこれらの組み合わせ」となっています。これは語源からの発展というところでその通りだとは思いますが、最近の「ブランド」という言葉の使われ方を考えると、どうもよく分からなくなります(敬愛してますけども)。

「ブランド」って例えば、《ナショナル/プライベート》《コーポレート/事業/商品》《アパレル/家電/自動車/etc.》といった言葉のあとに来ますよね。それぞれ《メーカー発/流通小売業発》《企業発/事業部発/商品群》《各業種発》みたいなことです。それで名称とかロゴとかがブランドだとしたら、アパレルブランドってアパレル事業者のロゴのこと? なんだか、どう考えれば良いのか分からなくなっちゃいます。 スッキリしないわけです。

それで考えたんですが、「その分野で、(ライバルと区別され)好印象を得ている事業体」と定義すると、まあ分かります。きっとこの解釈が、今の使い方に合ってるとも思います。「あのパン屋さんは、ここらへんじゃブランドなのよ」などと使われたときも、意味として理解できます。きっとみんな、こういう意味で使っているんじゃなかろうか。でも、僕にはまだ疑問が残ります。

好印象ってどの程度? それは少なくとも、規模や知名度ではないですね。 例えば、地元の小さなパン屋さんは大きな製パン会社よりも超小規模で、日本全体での知名度も低いけど、ブランドと言われることがある。そこはやっぱり、イメージが良いってことです。そうすると、「美味しい」「カラダにいい材料を使ってる」「感じが良い」「店がオシャレ」「包み紙がかわいい」「みんなが買ってる」みたいなことで決まってくる。でもそれって、主導権が客側にあり過ぎませんかね。

好評価を基準にするっていうのは、いわゆるマーケットインの方向で、それを100%にすると、作り手のプロ意識などなどが評価されない。つまり、人々がまだ気づいてない(=評価されない)革新的なモノを生み出す芽を摘んでしまいかねない気がします。マーケットインの考え方も大事ですけど、それはブランドの「チカラ」の評価基準としてのことで、「ブランド」そのものの定義に使うのはどうなの? と思うのです。

それに、好印象を基準にしちゃうと、悪い言い方をすれば印象操作で何とかなっちゃうかもしれない。ライバルにネガティブキャンペーンをしかけて実際とは違う印象を与えれば、ブランドじゃなくもできちゃう。それはやだなー、ということなんです。

そこで思ったのが、プロダクトアウトの方向で、主観的な意思を見ればどう? ってことです。結果としての好印象を得るために頑張っている事業体を「ブランド」とする。もうちょっと突っ込むと「信頼、安心、価値を強く感じてもらい、印象を良くして活動し続けていきたい事業体」という定義です。全部そうだろうって? いやいや、瞬間的に儲けてすぐやめる事業だってあるし、それこそ意思が金儲けのためだけなのでブランドじゃない。というわけで、僕はこの定義でスッキリしました。

整理しますね。

定義1:ライバルと区別して覚えてもらうための名称やロゴなど。(もともとの定義)

定義2:その地域、その分野で、好印象を得ている事業体。(お客様の評価を基準にした定義)

定義3:印象を良くして活動し続けていきたい事業体。(事業者の意志で成立させる定義)

それで僕は、「定義3」にしたということです。つまり、自分たちがこれからも続けていくために頑張ろうとしてるなら、自己申告でブランドと言っていい。

さてここで、ブランドとブランディングの関係についても説明しておきます。例えば、ブランドを「ライバルと区別して覚えてもらうための名称やロゴなど」と定義しちゃうと、ブランディングは「名称やロゴをいい感じにすること」になるってことです。確かに、かつてはそういうことだったんですね。それがもう少し進化して、広告やプロモーションで印象を上げる活動をブランディングとしていた時期もあります。でも、これももう違うわけです。ここらへんのことについて、ブランド論を確立させたと言われるデービッド・アーカーは『ブランド論」という本の冒頭で、1980年代後半のこととして『ブランド構築という行為が、広報宣伝チームに任せてかまわない戦術的取り組みから、事業戦略の決定要因へと変化した』みたいに書いてます。つまり30年以上前に変わったという話ですね。

下の図のようにブランディングは、名前やロゴも、質の高い商品やサービスの提供も、社会的な活動もぜ〜んぶやって、四角で囲ったところにチカラを注いでいく感じです。言い換えればブランディングとは「自分たちのブランドを知ってもらい、好きになってもらい、人に薦めてもらう」ことで良いと思いますが、そのためには前提となる事業活動もしっかりさせないと成立しないってところですかね。つまり、いい感じの事業活動のためにブランド内で、理念などの「自分たちのあり方」を整理し浸透させる、いわゆる「インナーブランディング」も、その名の通りブランディングの一部ということです。

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これが僕なりの「ブランド」と「ブランディング」の定義です。今のところですけどね。今回はややこしい話だったんで、少し字数が多めですね。すみません。

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廣澤やすまさ
ブランドストラテジスト /クリエイティブディレクター /コピーライター ◆ https://yasumasa-hirosawa.com/