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業務説明とweb取材、株主総会とyoutube配信番組は似ている

佐藤ひろおです。会社を休んで早稲田の大学院生をしています。
三国志の研究を学んでいます。

今年を振り返りつつですが、今年のぼくにとっての変化点は、ABEMA TVのネットのインタビュー記事に答えてヤフーニュースに載ったり、youtubeで配信される生放送の番組に出たことでした。ギャラを頂戴しました。どちらもリピートで発注を頂いたので、悪くないお仕事ができたのではないかと思っています。
「三国志の解説役」としての役割ですけど、じつは、「研究者」「専門家」としての脳みそよりも、会社員としての脳みそを使ったな、というのが出てみたときの感想でした。
専門家2割:会社員8割ぐらい。
持てる三国志の知識は、ほとんど使ってなくて、それよりも、「場」や「案件」を円滑に成立させることに心を砕いています。

ニュースの取材記事

インタビューに答えたときは、取材時間の大半を、「三国志とは何か」「日本には、どのような背景があるのか」の説明に費やしました。この部分、記事になってないんです。
三国志に詳しくない聞き手が、記事を書くために(最低限)必要な知識をインストールするため、取材時間の3分の2ぐらい、記事の本編「以前」のお話をしています。言葉の説明とかも。
「だからダメなんだ」ではなくて、ぼくはこういう「説明」「翻訳」のスキルを大切に思っています。なぜなら依頼主は、三国志のことがほぼ分からないから、わざわざ安くないお金を払って、ぼくに話を聞いているので。その場で煙に巻いたり、頭を抱えさせたら、お金を頂く意味がない。

早稲田大学三国志研究会にいるような学生には、「もっと専門的な話をすればいいのに。たいした情報量がないし、深掘りもされていない」と言っていました。
心ない人々がヤフーニュースにおります。「だれにでも言える内容を語っているだけだ」と批判されていたようで(自分では見ていない)、いやいや、ちょっと待ちなさいと申し上げたい(笑)。

世間一般に向けて、三国志の「入口」を記事にして頂くためには、他分野に伝わるように情報をカット・加工しなければならない。かつ単純化しても誤りがないように、微調整の連続。ここに時間と体力の過半を費やすことは、必要なプロセスだし、「本業」だと思ってます。
三国志の知識が生半可だと、カット・加工の仕方を間違えるだろう。「出さなかった情報」の選定と「シンプルな言い回し」に、専門性が発揮されている。ものすごく逆説的ですけど、記事の外部でいちばん頑張ってるんですね。これは、コメント欄の諸兄には伝わらないです。
ニュース記事は、公開前に細かいところ(技術上の細部)をいっぱい修正しましたが、1時間ほど話をしただけで、過不足ない記事が上がってきたので、さすがプロのお仕事だなって思いました。またやりたいです。

取材の受け答えは、社内の他部署への業務説明に似てます。「経理のプロセスは素人だけど、それぞれが専門性を持っている人たち」なので、適度に情報を限定し、しっかりと勘所を話せばきちんと伝わります。

生配信番組に出演して

ぼくは自動車会社のグループ企業の経理屋なんですけど、社内外から大勢の人々が押し寄せる会議に出たことが、何回もあります。

所属する会社、背景や利害が異なり、「勝利条件」が異なるひとが、なかば儀式とアリバイ、あるいは監視のために出席している。譲れない一線と、つぶされたくないメンツを持ち寄り、思惑が交錯する。ひとつの発言には、ウラの意味があったり、ウラを取られないように防御力を固めたり、牽制したりする狙いがある。面と向かって話しているのとは別の相手に、メッセージを送っている場合もある。全体の前で、言質を取った・取られた、承認を得た・得られなかった、という事実と解釈をめぐって、同時に考えるべきことが無数にある。ドラマみたい(笑)

生配信番組は、まさにドラマでした。
まず、お金を支払っている、クライアント(スマホゲームの提供元)がある。クライアントが、システムやグラフィックを使わせてもらっている、更なる親元がある。かれらのメンツは大切。
制作会社がいる。かれらは全知全能ではなく、クライアントの要求を満たさなければならない。台本を書いた作家さんがいるだろう(フリーなのか、制作会社に所属しているのかは知りません)。スタジオのネットワークやアプリを管理しているひとも。
当日、顔を合わせたばかりの出演者たち。知識や得意分野、活動の背景が違う。持っているSNSのネットワークも違う。短時間のリハーサルで、顔合わせをして、努めて雑談。「本番でどの話題を振っていいのか」「どこはNGなのか」「役割とキャラクターの分担は?」を詰めていく。
そして、数千人の同時視聴者がいる。

だれの顔もつぶさず、かつエンタメとして成立させるべきだ。
台本に載っている視聴者参加型の三国志クイズ(賞金あり)で、番組側が用意した回答に、間違いがあったら?司会者が台本を読み上げた解説に、不備があったら?台本を読み間違えて、クイズの正誤が不成立になったら?それを多数の視聴者がコメント欄が指摘をし始めたら?
アプリの不具合によって番組が止まったり、アプリが「不正解」の挙動をしたりで、現場スタッフが走り回っていたら?充電ギレによって回答者も立ち往生し、やりようがなくなったら?指摘する?スルーする??(自分の端末が死んでても、以降の進行に支障がないならスルーが正解か)。

トラブルによって司会者が動揺し、場つなぎのため、「佐藤先生、この問題に関してどうですか」と咄嗟に解説やツジツマ合わせを求められたら?
退屈させないようにシンプルに説明し、トラブル復旧までに「尺」が足りなかったら?せっかく別の角度から話し始めたら、突然アプリが復旧し、「早く次に進んで下さい」とカンペが出されたら?どうやって不自然じゃなく、尻切れトンボにせず、話を切り上げたらよいのか。

もうこれは、三国志の解説役じゃなくて、株主総会のスタッフですよ。
「会社のメンツと正当性を守り、特定の部署に恥をかかせず、取引先や銀行の心証を損ねず、監査法人の顔も立て、株主さまに納得してもらい、絶対にこの総会を不成立にさせない」ために、トンチと機転で場つなぎをする、経理屋のお仕事なんですよ(笑)

来年も仕事をがんばりたい

以上、三国志の専門家として、お金を頂いてお仕事をしているのだが、中間的・中堅サラリーマンとしての「強み」をいちばん使っている気がする。もしも、そのような「強み」があるのならば……、ですけれど。
もしくは、三国志の解説はできて当たり前。「自動運転」なので、努力しようと感じたり、意識に上ることがない。他方、閉じられた集団から抜け出して外部に向けて説明したり、複雑な「場」を成り立たせるのは、才能における強みがないため、凡人として努力を重ね、経験に支えられた「マニュアル運転」をするしかないので、意識に上るのかも知れません。

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