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いつかこの博多の森を思い出してきっと泣いてしまう(VS磐田)

戻りつつある日常。ただ、厳格なプロトコルのもと、クラブの運営もサポーターも手探り感の否めない久々の観客のある試合。

慣れ親しんだ場所だけど、違和感を感じる、そんな中で試合開始を迎えました。

堅調な出だし。見えた変化。(前半)


福岡も磐田も共に4-4-2のボックス(ダブルボランチ)の形でスタート。前節からのスタメン変更は右SHの増山、左SBの輪湖でした。
共に堅調な試合運びで、大きく形を崩さないままのスタートとなりましたが、福岡はフアンマの高さとキープ力を活かす中央からの攻撃と、両サイドのSBとSHの連携を活かした攻撃の狙いが見えました。逆に磐田はハーフスペースに侵入するSH、特に14番の松本を中心に福岡のペナルティエリア近くでの勝負を仕掛けていました。

共に同じシステムを取っているため、守備時、攻撃時嚙み合わせがよいことから、福岡は前節までの状況より改善したネガティブトランジション(ボール喪失時の守備への切り替え)の速さで少しずつ有利な状況を作り出していきます。特に改善したのが菊池です。これまで、自らがボールロストした場合以外はあまり速度のある帰陣がみられませんでしたが、この改善により、輪湖との連携で左サイドでのボールの奪取に貢献し、良いリズムを作る要因ののひとつとなっていました。

前半は一進一退の攻防を繰り返しながら、両チームとも得点に至らないまま、前半終了の笛を迎えることとなりました。ここで、特に気になった点について以下に述べてみたいと思います。

左サイドに張った罠。輪湖の台頭。


昨日の試合、磐田の2トップの一角である11番のルキアンがサイド、特に輪湖が位置する左サイドに流れて長いボールを受けようとする場面が多くみられました。これは推測の域を出ませんが、171cmの輪湖に対し、183cmのルキアンはデュエルでも十分に勝利できると踏んだのではないかと思われます。これにより、身体能力を活かして中央突破される脅威も減らすことができ、尚且つ、一度ルキアンにボールキープさせて地上戦に持ち込むことで、身長差という質的な差を無効化するというタスクを達成していました。まさしく「罠」ですね。このおかげで守備をかなり優位に運べたと思います。
今節の輪湖はコンディションの良好さも垣間見え、非常に充実している様子が見て取れました。まさに「台頭」という表現がふさわしい活躍ぶりでした。

設計された磐田の攻撃。


磐田の攻撃にも言及します。再開前のTRMでもよく見られましたが、ハーフスペースに侵入させる選手を循環させることで、マークをつきにくくしようとしている場面が何度か見られました。一番多い形が、SHがハーフスペースに移動してボールを受ける形で、その次に見られたのが、SHが一番外のレーンに異動し、空いたスペースにSBが侵入し、ペナルティエリア近くのハーフスペースを陥れる状況を作っていました。


今節ではペナルティエリア侵入後のアイデアがまだ整備されていない状況でしたので、事なきを得ましたが、ここのところがうまくいくようになると非常に厄介であるな、という印象を受けました。

「継続」の結実。待望の先取点。(後半序盤~中盤)


後半も互いに4-4-2の形でスタート。メンバーも変更なし。福岡は前半から行っていたネガティブトランジションの際の素早いボール奪取への取り組みを継続していました。磐田においては若干ペースが落ちたものの、ハーフスペース攻略の意識は高く、徐々に福岡のゴール前に近づいてきました。

前半と同じような膠着状態に入るかと思われたその時、69分でした。大きく浮かせたクリアボールを磐田DFが回収、バックパスしようとしたところ、距離が短くなってしまいました。そのミスから、前半よりネガティブトランジション時に継続してプレスを見せていた遠野のプレーが得点を呼び込みます。ボールを奪取した遠野はDFと一対一の勝負ができるように若干中央寄りにドリブルを開始し、その結果スプリントしてきた増山にフリーの状態が発生し、遠野のアウトサイドのパスを受けた増山がループシュートで得点します。
まさに「継続」が結実した瞬間といえるでしょう。これまで遠かった待望の先取点を得ることができました。

そして逃げ切りへ・・・(後半終盤)


磐田が攻めのギアを上げようとした矢先の80分頃、福岡は城後、篠原、「信用できる」湯澤を投入し、5バックで逃げ切りの態勢を整えます。これにより、ハーフスペースを含めた5つのレーンを全て封鎖することができました。放り込みに対してもグローリがシャットアウトしてしまうため、磐田がフィードするボールはどうしてもそこを外すために長くなり、結果的に篠原・上島、そしてセランテスが回収する形となり、効果的に対応できていました。
ただ、磐田にはスキルの高い選手が多いことから、どうしても中盤でボールを握られる場面も散見されました。そんな時に発揮されたのが「お気持ちプレス」です。5枚のDFラインで堅牢に築いた壁の前に猟犬の如くボールを追い回す4枚のMF。素晴らしき日本の伝統、お気持ちを全面に押し出したプレスです(錯乱)。さらに磐田がDFラインでボールをキープしようとすると城後が二度追い三度追いする勢いでプレスを開始します。なんという自己犠牲の精神これこそまさに素晴らし(略

終盤何度かペナルティエリアへの侵入を許す場面もありつつも福岡は守り切り、勝利のタイムアップの笛を聞くことができました。

総評

今回のポイントはやはり、

・ネガティブトランジション時の守備

です。

これまでの福岡はボールロストした場合にうまく切り替えができず、相手選手のフリーな状態でのボール保持を許したり、その他にも、深い位置でしかボールを奪い返すことができず、結果、攻撃に転じた時に遠い所からしかスタートできないため、素早い攻撃ができないことが多くなっていました。

今節では4-4-2同士で相手との距離感が近い、という条件付きではありますが、そうした状況が改善されたことから、チャンスの創設が前節までよりも増え、より相手のゴールの近くで、より速く攻撃することができました。次節以降もこうしたシチュエーションを多く見たいものですね。

まとめ

今回は感謝の言葉で締めたいと思います。

観客を入れたこの試合が開催されるまで、多くの人が頭を悩ませ、苦労を重ねたことだと思います。

クラブの運営の方々だけでなく、スポンサーをはじめとした関係者の皆様、本当にご尽力ありがとうございました。お陰様で今日の日を迎え、勝利を目の前で見ることができました。

いつかマスク越しでない笑顔で、感謝の言葉を述べられる日が来ますように。そう願ってやみません。

本当に、本当にありがとうございました。

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