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仙台89ers:2024-25シーズン ロースター展望


◯まえがき

2024-25シーズン、明けましておめでとうございます。昨季はB1復帰の2022-23シーズンで露呈していた得点力不足の課題を改善し、目標の30勝には届かずとも、リーグの強豪たちからも何度も勝利を挙げるなどして27勝を積み上げられたシーズンとなりました。また2026−27シーズンからのB-PREMIRE開始にむけて今季は降格のないシーズンとなって、来季までは現B1で闘えることは確定。そしてその後のB-PREMIREへ参入すべく、仙台も昨季はHome Gameでの入場者数基準はクリア、クラブとしての売り上げ基準もほぼクリアできた模様と着々と準備が進んでいる感にはワクワクもしますね。

昨季B1は広島が第7シードから下剋上を果たして悲願の初優勝を果たす一方で信州、富山の中地区の2クラブが無念の降格、現行カテゴリー分け最後のシーズンをB1で闘うために今季はB2で奮闘することになり、B2では大方の昇格候補の下馬評に上がっていたA千葉が2季連続でPO準決勝で涙をのみ、そのA千葉を降した越谷と、B2降格から1季での復帰となる滋賀が昇格、岩手とまさかの新潟がB3 へと降格となりました。そのためB1は東地区へ越谷が入りA東京が中地区へ地区替え、西地区へ滋賀が入り名古屋Dが中地区へ地区替えとなったことから、今季の中地区はA東京、SR渋谷、川崎、横浜BC、三遠、三河、FE名古屋、名古屋Dと有力クラブばかりがそろう大魔境の様相です。

さて翻って今季も東地区を闘う仙台ですが、昨季まで3季仙台を率いていた藤田体制にピリオドが打たれ、その藤田氏と前任の現琉球のHC桶谷氏のもとでACを歴任していた落合氏が満を持してHCとして指揮を執ることになります。その落合氏のもとで2024-25シーズンを闘う仙台89ersの選手たちを見てまいりましょう。


【継続所属選手】

9 ヤン・ジェミン:SF

韓国の次世代のホープ、ヤンがプロ選手としての活動を日本で始めてから今季で5シーズン目。ヤンは様々な巡りあわせからBリーグ初の韓国籍選手でもあったわけですが、そのパイオニアとしての活躍もあってか、昨季は他クラブにおいても韓国籍の選手を獲得するケースがずいぶんみられるようになりました。

Bリーグでは仙台に来る前は信州、宇都宮に所属し期待はかけられつつそこまで多くのミニッツを得られていたわけではなかったところ、仙台ではシーズン中に外国籍選手の一人であったトーマスが負傷離脱するとその不在を埋める大活躍。本来はウィングロールのプレイスタイルではありますが、PFの一人としてリバウンドやインサイドアタックなど実に仙台らしい、Grind!を標榜するようなプレイでミニッツも大幅増加。今季にあたっては昨季のその活躍ぶりもあってか、はたまたもともと複数年契約だったのかはわかりませんが、ブースとともにいち早く契約更新。もともと持ち合わせた韓流アイドルを思わせる穏やかで人懐っこい表情とは裏腹な泥臭いプレイスタイルで仙台でも多くのファンの心を掴んで離さない、「長町商店街のBTS」に今季も期待です。

14 青木保憲:PG

2022-23のシーズン途中に加入し低調にあえぐチームの救世主となりB1残留をクリンチすると、昨季はキャプテンに抜擢されてチーム全体を引っ張る立場に。1シーズンケガもなくチームを引っ張ると、終盤にはオフェンスの面で大きな成長をみせ、その本来持っていたのであろう得点力がアップ、今季はここ最近のBリーグのトレンドでもあるように「得点できるPG」としての活躍が期待されるところ。年齢的にはそろそろベテランの域に差し掛かろうというところになってきますが、今季もチームを引っ張っていってほしいですね。

15 渡辺翔太:PG

昨季は久々に大きなケガもなくほぼほぼシーズンを全うできました。なんとなく他クラブへの移籍もありうるかなと思っていたところ、仙台への残留となりました。

結構ムキムキと一回り大きくなった感がある上半身を見ると、昨々季の大けがが文字通りの怪我の功名となってしっかりした体作りができたのかもしれません。とはいえそのスピードにはいささかの陰りもなく、小さな体躯で鋭くインサイドに切れ込んでいく様はBリーグを代表する小兵PGの富樫や河村とも遜色のないものです。もっとも、シュートの正確性といったところで彼らに少し及ばないところはありますが、それでもかつてのB2プレイオフ西宮戦の決勝ブザービーターを彷彿とさせるようなビッグショットを何本も決めていましたので、向上の余地があると思えばまだまだ伸びしろ。その持ち味をさらに研ぎ澄ませてBリーグを代表するようなPGに登り詰めてほしい。

45 ネイサン・ブース:PF/C

今季に向けての契約更改第1号がブースでした。更新の早さを思うと、今季も含めた複数年契約だったか、あるいはオプション1年だったかのような気はしますが、その辺の契約事情は我々にははかり知れません。

昨季のブースは阿部諒の大ブレイクのインパクトに隠れた形にはなりましたが、Bリーグ初年度からすると各スタッツで向上を見せ、3PTランキングでは成功率43.2%でリーグ2位、ブロックランキングではリーグ8位へランクイン。また昨季メンバーの個人的評価で紹介したように、ペリメーターエリアからのシュート成功率が非常に高く、仙台の大きな武器の一つでありました。それゆえ、昨季終了に当たってはもし契約期間満了だとすると他クラブがほっとかないだろうなと思っていましたが、いの一番での契約更改で仙台ファン・ブースターもほっとしたことでしょう。今季も愛すべきグレートホワイトバッファローの活躍に期待しましょう。

91 片岡大晴:SG

「ソルジャー」のニックネームですっかり仙台の顔にして現社長志村氏のあとを継ぐミスター仙台89ers。

そのバスケットボールに取り組むストイックなまでの真摯な姿勢はクラブ内外各方面から大きなリスペクトを集めているのは周知のことですよね。さすがにここ最近はベンチを温める時間のほうが長くはありますが、ベンチでは誰よりも大きな声でチームを鼓舞し、ひとたびコートに立てば大ベテランの域にあってなおキレキレのニンジャバックカットやここというところで決めてくる3Pで今季も活躍し、我々を勇気づけてくれることでしょう。本人としては40歳までは現役を続けたい意向がある模様ですが、40歳と言わず、納得のいくまで息長くプレイを続けていってほしいですね。


【新規加入選手】

2 星野曹樹:SF

B1群馬より移籍。

白鴎大時代に落合HCのもとでプレイしていたとのことで、さっそく落合HCの人脈が活きた形になったでしょうか。ポジション的にはSFということですが、群馬ではSFといえばトレイ・ジョーンズという絶対的な存在がいたことと、そのトレイ不在時にしっかり穴を埋めてみせた成長著しい八村に次ぐ序列ではなかなかミニッツを得ることも難しかったでしょうか。昨季のスタッツを見てみると、出場数が27、MINPGが3:49というのはちょっと寂しい数字。

比較的サイズがあり、インサイドへぐいぐいと切り込んでいくスタイルのようですが、要所で3Pを決められるシュート力もある模様。仙台ではキッドが加入したことで群馬時代と同じような境遇になりかねないかもしれませんが、今季の仙台の外国籍選手の構成的にはチャンスはもっと多いはず。再び落合HCのもとでその持てるポテンシャルが開花してくれるといいですね。

6 クリスティアーノ・フェリーシオ:PF/C

昨季のゲルン加入も7月末ごろだったので、そろそろ3人目の外国籍選手にして12人目のロースター加入の報があるかなと思っていたところ、やってきたのはバスケファン、特にNBAファンなら誰もが驚くとんでもない選手でした。

現役ブラジル代表選手で今夏のパリオリンピックにもロースター入り、NBA時代はシカゴ・ブルズに6シーズン在籍して258Gameの出場歴といったパワーワードが並ぶプロフィールは圧巻の一言。過去3年ほどはドイツやスペインといったユーロ圏でプレイしていた模様ですが、これほどの経歴を持つ選手がこう言ってはなんですが、仙台に加入してくれるとは実に予想外。社長をはじめフロントの手腕に恐れ入りました。

ブラジル代表選手と言えばA東京に昨季加入したメインデルを思い出しますし、昨季仙台所属だった大阪のゲルンはウクライナ代表、今季も仙台所属のヤンは韓国代表、島根のケイはオーストラリア代表、宇都宮のフォトゥはニュージーランド代表などなど、その他にも大勢の各国代表選手がBリーグに活躍の場を求めるようになってきているのが実に感慨深い。また各国代表級選手だけでなく、今オフ大きく話題になった渡辺雄太の千葉J加入、三遠にはNBAでのプレイ経験豊富なヌワバが加入など、NBA経験豊富な選手もかなり日本にやってくるようになったのもまたすごいこと。

実績・実力的には申し分ない素晴らしい選手の加入となりました。あとは他の選手たちとしっかりケミストリーを築いて、Bリーグを席巻してくれることを願いましょう。

7 スタントン・キッド:SF

昨季はB1信州に所属も、ケガにより10Game出場したところで無念の負傷欠場からの契約解除。今季は仙台で復活をかけることになりましょう。

とはいえこのキッドの獲得はなかなかのサプライズ。キッドといえばやはり2022-23シーズンの秋田で見せた活躍の印象が強い方が大半ではないでしょうか。自らハンドリングしながら切り込んでよし、外から放ってよしのスコアリングマシーンとして、仙台の前に立ちはだかったのも記憶に新しい。しかし縁というものは奇なるもの、昨季スポット加入したエリック・マーフィーよろしく、ライバルクラブの主力として仙台に痛い目をあわせていた選手が今度は味方になるとなればなんと心強いことでしょう。昨季のケガの影響はいささか気になるところではありますが、その得点力にはやはり期待を抱かずにはいられません。インサイドではフェリーシオというこれ以上ない選手がきっと体を張ってくれることでしょうから、どんどん得点を狙っていってほしいですね。

8 多嶋朝飛:PG

B1大阪より移籍のベテランガード。

出身が北海道ということでレバンガ北海道でのプレイ年数が長く、ワタクシもやはりどこか「北海道の選手」というイメージがありましたが、昨季は大阪、その前は2シーズンを茨城でプレイ。茨城では平尾、福沢など優れたPGとミニッツをシェアながらチームを引っ張り、2022-23シーズンは終盤にはスターターの座を掴んで活躍し仙台を大いに苦しめましたし、昨季は鈴木達也に次ぐ2番手PGとして大阪でもその変わらぬスピードと3Pの正確性を発揮、まだまだ衰えを見せません。今季比較的若手の選手が多い中でのベテラン選手の獲得となりましたが、片岡とともにメンター的な役割を果たしつつ若手を導いてくれる活躍に期待しましょう。

13 ディクソンジュニア・タリキ:PG

B1長崎から移籍。

青木、渡辺との契約更改、多嶋獲得ときてタリキの獲得はやや意外。登録ポジション的には4人目のPGとなりました。昨季終盤にスコアリング能力に開花した感のある青木や3Pシュート力のある多嶋をSGに的に起用するのだろうか?と思ったりはしますが、そこはどうなるのかはPSMや開幕を待つことにしましょう。さてタリキについてはカタカナ名前ではありますがれっきとした愛知県出身の日本国籍選手(A東京のザック・バランスキー選手と似たようなパターンですかね)で登録名はタリキですが漢字で「太力」と書くのだそうです。

タリキはクラブの獲得時のコメントにあるように、長崎ヴェルカのクラブ発足時のオリジナルメンバーの一人。2022-23シーズンはケガでほぼシーズンを棒に振ったり、昨季は一時期熊本に所属していたりはしましたが。プレイスタイルとしてはディフェンス面で強みを持つといういかにも仙台89ersのスタイルに合致しそうな選手。ディフェンス面で引き締めなおしたいところでの活躍が期待されます。

22 石橋侑磨:SG

B2熊本から移籍。

石橋の加入と同時に長く仙台で活躍してくれた澤邊の熊本移籍も発表、奇しくもトレード成立のような形に。澤邊が熊本出身で熊本へ凱旋となれば、この石橋も福岡出身の九州男児というあたりもどこか因縁を感じたり感じなかったり。

昨季のB2についてはあまりウォッチできていなかったのですが、クラブがまとめたハイライトを見る限りでは3Pが得意そうなのはいいですね。昨季のスタッツを眺めてみてもMINPGは16:05ながらも3FGPAGが4.0、3FGMPGが1.4となかなかのもの。ミニッツが多くなればこのスタッツも上昇するかもしれませんが、そこはB1各クラブの一段強度の高いディフェンスに対応できるかどうかがカギになりそう。熊本では「ばっしー」と呼ばれていた模様で、奈良へ移籍した小林の後を継ぐ・・・のだろうか?

23 半澤凌太:SF

B1京都から移籍。

福島県出身で仙台にとっては2020-21シーズンの鎌田以来久々に東北出身選手を獲得。半澤自身も筑波大在籍時には福島の特別指定選手として登録されてはいましたので、今般東北クラブへの凱旋ということになりました。筑波大といえば青木の後輩でもありますね。

ポジションとしてはSFというところで、星野とともに昨季ちょっと手薄だったかなと思っていたところへの的確な補強と言えましょうか。しかし外国籍SFのキッドも獲得していることから、もしかするとSG的な起用もあり得るかもしれませんね。半澤も他の新規獲得選手に負けず劣らずディフェンス力がある模様で、京都のファンも流出をかなり残念がっていた様子。他の若手と切磋琢磨しながら大きく成長してくれることを願うところです。

HC 落合嘉郎

昨季まで3季指揮を執っていた藤田HCの後任としてACからの昇格という形で今季からHCへ就任。Bリーグでは正HCとして初めて采配を振るうこととなりますが、桶谷・藤田という名将二人のもとでACとして積み上げた知見と経験がありますし、かつては白鴎大でもHCを務めていたことからその采配は未知数ながらも期待大。とはいえさすがにBリーグでは初めてという点にいささかの不安がないでもないですが、宇都宮を率いていた佐々氏も昇格人事でHCとなり、宇都宮の伝統をしっかり守りつつ自分の色も出しながら強豪の地位を確固たるものにした事例もあるので、落合氏もきっと佐々氏と同様な道を進むものと思うことにしましょう。藤田氏が内外に評価の高い名将だったあまりに落合氏の就任については疑問視する声も少なくないですが、そういった声を吹き飛ばす采配に期待です。


○まとめ

名将藤田HCの大阪移籍という激震から始まったストーブ(クーラー)リーグはその後も阿部やゲルンといった昨季躍進の屋台骨だった選手の移籍というさらなる衝撃もありつつ、最後は現役ブラジル代表かつ元NBAのフェリーシオ獲得というリーグをも揺るがす大激震で締めくくり。フェリーシオ以外にも、欲しかったスコアラーでもあるキッドの獲得や昨季手薄だったSF陣の強化など的確な人選での陣容になったと思います。若干SGが薄めな気はしますが、青木や多嶋、半澤などで十分にカバーはできそう。若手中心にシフトしつつ、ベテラン・中堅どころも程よくブレンドされたバランスのいい布陣と言えるのではないでしょうか。

今季のロースターは外国籍選手の布陣がB1屈指といっても過言でないほどの充実のラインアップ。ただその分、日本人選手が他クラブで少しミニッツを得られていなかった若手中心の獲得で、これからの伸びしろを重視したような感じに多嶋といったベテランもいれてくる渋いところをついてきた人選と言えましょう。

昨季はトランジションのペースを速めたバスケットボールと阿部の非凡なシュート力で2022-23年に露呈した得点力不足を補いましたが、今季はまた更にペースを上げてきそうな気配。ハンドラーも担っていたスコアラー阿部のところはキッドやプレイの幅を広げている青木、シュート力を持つ多嶋などで補えそう。インサイドを支配しリバウンドを取りまくっていたゲルンのところはフェリーシオの円熟の技と高いスキルでこちらもなんとかなりそうでしょう。ブースはさらに今季は警戒されることは間違いなさそうですが、そこは相手ディフェンスをどう掻い潜っていくのかは落合HCの戦術、手腕に期待するところ。新規獲得の若手については、彼らが一皮も二皮も剥けていくにつれ、チームも強さを増していきそうなポテンシャルは十分と、実に楽しみなロースターに仕上がってきました。

これを書いている時点で、クラブからロースター確定のアナウンスはまだなく、もしかしたら特別指定などの日本人選手の加入があるかもしれませんが、その時は加筆したいと思います。まずはロースター12人が決まり、レギュラーシーズンやPSM、天皇杯のスケジュールも続々と発表され、長かったようにも思うオフシーズンもそろそろ終了、いよいよ2024-25シーズンの開幕が近づいてきます。毎季シーズン終了時には様々な選手とのお別れもありますが、その分こうして新たな出会いも生まれます。想いを引きずる気持ちを否定するものではないですが、やはりここからは心機一転、この新しいメンバーを迎え入れた新しいチームを黄援していこうじゃないですか。

昨季はチームとして掲げた目標であるにほんの少し及ばない結果ではありましたが、今季はもう一段上の目標としてChampionship Series進出を目指していくことになるのでしょう。とは言え仙台がクラブとして力をつけているのと同様に、他のクラブも同じく力をつけていっているのは明白。そんな中でもGrind!の精神を持ち、一つ一つ勝ちを積み上げていければいいのですし、我々も変わらぬ大黄援(ダイキエン)をして参りましょう!

それではまた。

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