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あの言葉に支えられ、続ける事務という仕事

「いやいや」がハッキリしてきた1歳7ヶ月の息子くんを見ていて、彼が高校生、大学生になるのはまだずいぶんと先のことだなぁと思う。

子どもの『17年』と大人とでは月日の流れる早さの体感は違うが、同じ年月。就職してから今まで同じ職場で過ごしてきた『17年』。その間幾度となく思い出したあの言葉にずっと支えられてきたなぁと思う。

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母親から言われた「正義感強いから警察官もいいんじゃない」という一言で法学部を目指し、大学で法律を学んだ。そんな単純な動機だったから、就職活動の頃には自分の正義感の強さなんて人並みで、人の命を守るような覚悟もないことに気がついてしまった。
内定をもらった企業もあったけど、法律の資格を勉強するため辞退してしまい、就職先が決まらぬまま卒業式を迎えた。振り返ると時々、自分でも驚くような決断をするときがある。

でもたいていそういう決断は正しい。

資格の勉強をしながら法律事務所で働こう。そう思い幾つか面接を受けに行った。ドラマの中の弁護士くらいしかイメージはなかったから、実際の弁護士はずっとずっと地味で普通の人だった。いい意味で。
いくつか面接を受ける中で、女性の弁護士2名との面接に少し驚いた。母親とそう年齢の変わらなそうな2人の女性。なんて格好良いいのだろう。
面接を受け終え、
「あぁ、ここで働きたい」
初めての気持ちだった。その気持ちが届いたからかは分からないが、無事採用をもらい働き始めることになった。

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仕事内容は事務兼秘書。
主に電話、郵送、裁判所へのおつかい、弁護士のスケジュール管理。。。

専門用語で繰り出される弁護士からの指示、早口でちんぷんかんぷんなことを言う裁判所からの電話、拡声器のようなモノを使って怒鳴り声で取り立てをしてくるヤミ金…。
意味が分かんない!!なんで私が怒られてるんだろ…。と何度泣きそうになったことか。
(※もう最近はそう言った会社はほぼありません)

とにかく、分からないながら何でもノートにメモを取る毎日。

担当の先輩が優しくも的確に仕事を教えてくれたおかげであっという間に3ヶ月が過ぎた。そこで思いがけず正社員の話が来た。
実は、担当の先輩が結婚を機に退社することが決まっており、その後任を見据えたバイト採用だったのだ。
正社員になれる嬉しさと、それを上回る不安。たった3ヶ月教えてもらっただけで、仕事を引き継げるのだろうか…。
とはいえ正社員になる話はありがたく受け入れ、残り1ヶ月弱でひたすら引き継ぎをした。どんどんメモでノートが埋まっていく。

そんな不安げな私に先輩は
「この仕事向いてるよ」
ふいにそんな言葉をくれた。

先輩は予定通り退社し私が正社員になってからも、この言葉はずっと心の奥で私を支えてくれた。

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何度となく他の仕事に憧れた。
「企画」とか「プレゼン」とか「プロジェクト」とか。。。格好良くて『自分で仕事をしている』ように感じた。
「出張」とか「視察」とか「海外勤務」とか。。。ばりばりと『自分にしかできない仕事をしている』ように感じた。

私は『誰でも出来る仕事』をしているんじゃないか。『私にしか出来ない仕事』がどこかにあるんじゃないか。。。
事務という仕事をしている自分に何度もそう思った。

そのたびに「この仕事向いてるよ」
この言葉が頭をよぎり、何故かすーーーと気持ちが落ち着いた。

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弁護士は信頼・信用されることが仕事に繋がる。
依頼者は悩み不安や怒りを持っている人がほとんどで、電話や直接の応対は安心感を与えられるよう気配りをする。裁判は書面でのやり取りが多く、提出期日・誤字脱字がないよう最善の注意をはらう。あらゆる可能性を想定して守秘義務をまもる。
人の人生がかかっている仕事だからね。
事務員はその小さな気遣いを弁護士の影で積み重ねる。

法律事務所での仕事は、その事務所・弁護士によって違ってくる。ただ、弁護士との相性は何より大事であることは間違いない。
それぞれの弁護士の好み・クセを把握し、過去も含め依頼者の名前・事件を把握し、経理や労務もこなす。そういった業務が私には楽しい。
気がつけば「この仕事向いている」そう自分でも思えるようになっていた。

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華やかでも大きな仕事でもない。でも、人の人生を左右する仕事を小さな気遣いで支える仕事も素晴らしいものだよ。そして、誰にでも紹介したいと思える上司(弁護士)と働けていることを誇りに思うよ。

17年目でもおもしろいと思えるって、この仕事向いてるね!!

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