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「月がきれいですね と伝えたいあなたへ」BUMP OF CHICKENの新世界から汲み取った言葉のカタチ

※2018年12月14日に掲載された音楽文です。いろいろ訂正したい箇所はあるにせよ、あえてそのまま転載します。

まさに青天の霹靂だった。いや、今朝は雪が舞って積もっていたから、青天ではなかったけれど。寒くて布団から抜け出せずにいたけれど、スマホからの情報ですっかり目が覚めた。「君と笑うため」じゃなく、バンプの新曲を聞くために「ちゃんと今日も目が覚めた」(新世界)

空耳ではないかと耳を疑った。「ベイビーアイラブユーだぜ」と藤原基央が連呼しているように聞こえる。空耳ではなかった。たしかに「ベイビーアイラブユーだぜ」と歌っている。ある程度、バンプを知っている人なら誰でも「あの藤くんがアイラブ―ユー!?」とびっくりするだろう。臆病者からすれば、元々直接的な意味合いをもつ恋愛ソングが少ないのが、バンプの長所であり、魅力であり、ひがむことなく安心して聞ける楽曲ばかりだったのに、なぜ?とびっくりしてさらに目が覚めた。

今までのイメージの藤くんなら、「月がきれいですね」くらいの表現しかしないと思っていた。夏目漱石が「アイラブユー」という英語を日本人ならではの奥ゆかしい表現を使って「月がきれいですね」と日本語訳したのは有名な話だ。「月がきれい」を連呼されたら、バンプらしくてしっくりする。それが「アイラブユー」だけでなく、「ベイビー だぜ」とまるでダパンプかエグザイルあたりがカッコ良くキメて歌うようなフレーズに拍子抜けした。

あまりの衝撃にタイトルが「ベイビーアイラブユーだぜ」と勘違いしてしまったのだが、よく見れば「新世界」という曲名だった。ああ、バンプの新境地という意味かと妙に納得してしまった。「ベイビーアイラブユーだぜ」ばかりが目立って、最初は他をちゃんと聞く余裕がなかったけれど、よくよく聞けば他はいつもの藤くんの歌詞だった。ちゃんと藤原基央だった。

「君と会った時 僕の今日までが意味を貰ったよ」
「昨日が愛しくなったのは そこにいたからなんだよ」
「明日がまた訪れるのは 君と生きるためなんだよ」

なんてまさに藤原節で、「ベイビーアイラブユーだぜ」の衝撃の後は
安心していつも通り聞くことができた。

藤くんの歌詞でいつも感じるのは、孤独(そう)なのに、本当の孤独ではない。一人が好き(そう)なのに、一人が嫌い(そう)だ。誰にも自分さえ興味なさ(そう)なのに、実は人一倍思いやりがあって大切に思う相手がいる。一緒にいても、一緒にいられなくても、相手に伝えられない思いだとしても、自分の中に人を思う愛を持った歌詞が多いと思っていた。

「僕がここに在る事は あなたの在った証拠で
僕がここに置く唄は あなたと置いた証拠で」(花の名)
「手をとった時 その繋ぎ目が 僕の世界の真ん中になった
あぁ だから生きてきたのかって 思えるほどの事だった」(Spica)

孤独じゃなくて、いつでも誰かを思っていて、誰も傷付けない静かな愛に溢れる藤くんの歌詞が私はずっと好きだった。
そう気付かせてくれたのは今回の「ベイビーアイラブユーだぜ」というフレーズ。
直接的な表現がなかっただけで、今までだってずっと愛に満ちた曲を藤くんは作っていた。言葉が変わっただけで、伝えようとしていることや本質は変わっていない。

言葉なんてそもそも曖昧なものだ。感情をすべて言葉で表すことなんてできない。言葉で伝えられる感情なんて限られている。

「涙には意味があっても 言葉に直せない場合も多くて」(Spica)
「言葉は上手に使ったら 気持ちの側まで 近付けるけれど」(アリア)

言葉は相手に近付くひとつの手段でしかなくて、相手に自分の気持ちを伝える上で完璧な方法ではない。

だから言葉では到底表せない、言葉なんて曖昧な手段で表してはもったいない感情を「オーイェーアハーン」など藤くんの叫びにも近いコーラスで表しているのだろう。

「新世界」からだいぶ脱線してしまったような気もするが、話を逸らしているわけではないので、説明を続ける。

「オーイェーアハーン」も「手をとった時 その繋ぎ目が 僕の世界の真ん中になった」も「ベイビーアイラブユーだぜ」も言葉が違うだけで、すべて「月がきれいですね」(=愛してる)と伝えていると私は感じ取った。

藤くんが珍しく、「ベイビーアイラブユーだぜ」と歌ってくれたおかげで、私は言葉の存在意義も考えることができたから、藤くんには改めて感謝したい。
「新世界」を披露してくれてありがとうと伝えたい。

「ベイビーアイラブユーだぜ」はまさに言葉を上手に使って、リスナーの気持ちの側に近付いたと思う。

私もたまには自分らしくないけれど、自分の殻を破って「ベイビーアイラブユーだぜ」と叫んでみようかと思う。

「月がきれいですね」と遠回しに気持ちを言っても伝わらない相手に。
バレンタインデーあたりに。
それまでに「新世界」をフル音源で聞けることを心から願う。

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