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日本のTranceシーンにおける闇とは

Tranceというジャンルの曲がある。誰もが...とまでは言わないが多くの人がその名前ないしは曲を耳にしたことはあると思う。

数多くあるクラブミュージックのジャンルの中でもアンダーグラウンドな側面が強いと個人的には感じているTranceだが、うねる様な旋律と高いBPMが相まって、”当たり”を引けばその名の通りトランス状態になれる素晴らしいジャンルだろう。(ヤクとかでトランス状態になってる奴は知らん)

そんなTranceは、かつてヨーロッパを中心に覇権を取ったまさに”主役”になった瞬間があったものの、残念ながら現在では下火に。それは、ここ日本でも同じ。

しかし、根強いファンが多いのもまた事実で、多くのDJやProducerが2020年現在でも精力的に活動を続けている。

彼等、彼女らの活躍次第では、日本でTranceをまた”流行”...はさすがにエクストリームすぎる難易度だが、まあ良くて2番手、3番手レベルにはなれるかもしれない。

ーーと、ここまでが現在までの簡単な流れ。

そして、ここから先は、日本のTranceが抱えてる最大の闇を綴ろうと思う。最初に念のため言っておくと、これは個人の主観でしかないからあしからず。

......むかーし、むかーし。あるところに、日本のTranceシーンを盛り上げる為、立ち上がった一人のDJがいました。

そのDJは、日本から世界へ。あるいは、世界から日本へTranceという物をより普及させるために、自身の楽曲をリリースするProducerとしての活動を始めた。

ここで補足しておくと、DJとしてクラブで回すのと、Producerとして曲を作るのは全く違うスキルと、経験値が必要であり生半可では”モノ”にならない。ここでいう”モノ”というのは、商業ベースとしてある程度の規模...つまり競争力を保っているレーベルからリリースすることである。

多くのProducer達は、自宅なり何なりのスタジオで日々楽曲制作に励み、無数のトライ&エラーを繰り返している。そして、本当に少しずつではあるもの徐々にスキルが向上していきやがて類い希な曲を作れるようになるわけで。

そこには、チートコマンドもなければ仕様の穴を付いた裏技もない。曲を作り続ける。ひたすら地道で、華やかさもない。”千里の道も一歩から”を地でいくこの作業が、唯一にして最大の近道でもあるからこそProducer達は曲を作り続ける。

しかし、この不変のロジックを無視し、いきなり登場してものの数年であっという間にシーンの10年選手の如き曲をリリースする”怪物”が日本から現われる。

それが冒頭で名を挙げた某DJだ。

彼女は、まさに最高峰の楽曲を作るために日々スタジオに籠り、冠婚葬祭よりも作曲。挙句、DJの時間さえ勿体ないと感じ狂気のなか曲を量産し続ける。つまり、あらゆるプライオリティを作曲に捧げた......わけではない。

彼女が取った手段は至って簡単だ。”誰かに作らせる”、そうただこれだけある。

自身の掲げたあまりにも高い目標と、圧倒的なまでに満ち溢れた自己愛。そして何より途方もないほど莫大な承認欲求。これら全てを両立するために、”禁断の果実”に手を出してしまう。

そう、"ゴーストプロデューサー"だ。ゴーストライターとも呼ばれるコレは音楽に携わっている者なら一度は聞いたことがあるだろう。そして、このワードが国内で広く認知されたきっかけは、今から6年程前のある事件なのは間違いない。

この物語には2人の主役がいる。佐村河内守という自称聴覚障害者の作曲が出来ない当代きっての承認欲求の怪物。そして、それら全てを受け止められるだけの素晴らしいスキルを持った新垣隆による闇のタッグは、佐村河内氏の曲を新垣氏が作り続けることで、"現代のベートーベン 佐村河内守"というブランドを現世に誕生させた。

それは鉾でありながら盾でもある。加えて、遠近両用かつ水陸両用。

あらゆる有象無象のクズどもを片手で捻じ伏せれる、謂わば全天候型のこのタッグにおけるキーワードは、やはり”重度の聴覚障害がある作曲家”という矛盾だろう。これこそが、佐村河内氏をスターダムにのし上げたのは間違いない。しかし、ここで待って欲しい。

その"設定"を成立させるためには、"誰か"が曲を作らなければならない。目の前にどれだけ素晴らしい旬の食材(設定)が並んでいても、それを調理(作曲)できる人間がいなければ、宝の持ち腐れどころか月曜のゴミ収集に出される生ごみ以下の価値でしかない。

佐村河内氏は、端的に言って自身の承認欲求を満たす為。新垣氏は、自身の作った曲の反響を直で聞けて息抜きにもなる。更にはそれなりの金も懐に入る。

不本意だろうがなんだろうが双方の思惑が合致して、いざ闇のタッグが始動したわけだが事の顛末はご存知の通り。全国民からブーイングを浴びせられた佐村河内氏はシーンから退場。諸行無常とはまさにこのこと。

どんな形であれ間違いなく一時代を築いたこのタッグしかり、やりたければ勝手にやればいい。しかし、それならばProducerしかり作曲家を名乗るべきではないし、真面目にやっている多くの作曲家やProducer。バンドマンからDTMerまで...全ての音楽に携わる人間を嘲罵していると言わざる負えない。

さて、話しが脱線したが件の彼女は、はっきり言ってしまえば曲は作れない。反面、世界のトップレーベルなどからリリースした自身の代表曲があればDJとしての活動の幅は∞に広がっていく。

あまりにも高すぎる目標と、非情ではあるものの事実として全く足りてないスキルおよび現在地。それでいながら、DJやりつつ片手間でサクッと世界最強レベルのクオリティの楽曲を作れるようになった暁には一瞬で頂点に立つ。

それ即ち、矛盾と不合理。加えて背馳と頓珍漢も入り混ざった”THE・デタラメ”な宿望でしかない。

これぞ”砂上の楼閣”と声を大にして言える程の煌めく理想に対し、現実は無情にもその憧憬をマッハの速度で乖離し続ける。だからこそ、起死回生の逆転満塁ホームランを打つためには”ゴースト”の存在が必要不可欠だった。

良い曲を作れるように...いや作れるようになるかも分からない。そんな終わりのない地道な努力よりも、如何わしい錠剤と注射針こそキャリアハイを叩き出すための最適解。不可能を可能にするウルトラCどころかウルトラZがそこにはあったのだ。

そして、ゴーストという"ドーピング"を駆使した結果はすぐに表れる。それも彼女が一番望んだ形で。A〇A Recordingsを皮切りに現在のTranceシーンにおける最重要レーベルの1つでもある”本家”FS〇Eともサイン。

それはまさに最後方どころか、そもそもエントリーフォームに未登録。つまりレースに参加していないド素人が、応援するファンで賑わう沿道からいきなり乱入し、あろうことか並み居る歴代の猛者たちをごぼう抜きをしてトップに躍り出た瞬間でもある。

言うまでもなく、日本史上初の出来事でもあり、後世に渡って口承される偉業なのは間違いない。

しかし、彼女のドーピングはすぐにばれてしまう。それも、最初のレースで......

振り返ってみれば、かつての100メートルの記録保持者でもあるベン・ジョンソンや、四半世紀以上経った現在でも女子の100と200メートルの記録を所持しているフローレンス・ジョイナー。古今東西、ドーピング使用者はその時代のアベレージを優に超える異常な記録を叩きだすため、馬脚を露すまでもやたらと早い。

ましてや、彼女のように彗星の如くシーンに現れ、Producerとしての様々な”実態”がない人物が、これほどなまでに短期間であの”レベル”に到達するのは、客観的に見てゴーストの使用が疑われるのは勿論のことだ。しかし、100歩譲ってこれがまだ取るに足らない推察だとしよう。

たとえば、昔からクラスで1人、2人はいる大して勉強もしてないのに好成績を叩き出す天才肌ーー

彼女はそんな典型的な材器たちの例に漏れず、普段から作曲を全くしてないのにもかかわらずある程度要領よく作れたとしてだ。しかし、それでもなお極めて短期間でFS〇Eレベルに到達できるのだろうか。

勘違いしてはいけない。これは学校の中間テストのような1面で出てくる有象無象にさえなれない野次馬連のようなクソ雑魚ではなく、東大でありマサチューセッツ工科大学。いや、NASAやペンタゴン。果てはエリア51といってもいい。早い話しがラスボスなのだ。

しかし、彼女にとっては所詮"雑輩 "といったところか。RPGでレベル1でスタートしてるのに次の瞬間には99のカンストになるようなフィクションであっても無理がある強キャラ設定。現時点で既になろう系主人公とも伯仲する領域に到達しているから末恐ろしい。

それはまるで、魔法を纏ったかのような唯一無二の俊豪。もしこの偉業が"クリーン"で達成した物であるならば、あらゆるProducerどころか、”時代”そのものは彼女の影さえ踏めない程遅れているということになるわけだが、当然真実は違う。

そしてそれを決定づけるキーワードを我々に勝手に提供(自爆)したのは皮肉にも相棒でもあるゴーストだった。

仲間であるはずの彼女に派手な同士討ちをかましてしまったゴースト。次回は彼(彼等)の話しから再開しようと思う。

......









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