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案ずるより産むがやすし、横山やすし!〜良太のグループホーム、行くとか行かないとか〜

ずいぶんと久しぶりにnoteを書いています。
どれだけ書いていなかったかというと・・・半年近く。
noteの機能がものすごく使いやすくアップデートされていてびっくりしたくらいのお久しぶりになっいました。

この2年ほどで母の認知症が急に進行し、家族だけではどうにもこうにもならなくなり。
母も私も、娘も息子も、岸田家みんなの気持ちがすっちゃかめっちゃかのズタズタ、ボロボロになって。

そこからいろいろあった末、母は「認知症対応型共同生活介護(グループホーム)」に入居することになり。

その手続きから入居の準備と、疲れた心のままバッタバタの忙しい日々を過ごしていました。

母のことでのいろいろはこちら。

そして、母のことが落ち着いたら今度は、ダウン症のある良太のグループホーム(共同生活援助)入居のことを考えないといけなくなりました。

良太は今年の11月で27歳になります。
ずっとこれから先も私と一緒に暮らす、これももちろん選択肢の中の1つです。

願わくば私も良太も元気でお互いに助け合って、これまでのように楽しく仲良く過ごしていきたいと思っています。

しかし、親は子より先に死ぬ。いや、死なずとも病にたおれて息子の面倒をみれなくなってしまうかもしれない。

そうなったら良太はどうすれば?
姉・奈美に頼る?

それはちょっと違う。
姉だから弟の面倒をみなくちゃいけない、それは違う。

もちろん、困った時には姉弟で頼り合って、助け合ってほしい。
けれど、姉弟、そして家族以外にも頼れる先はなるべくたくさん作っておきたい。

それぞれが自立して、自分の意思で自分の人生の「幸せ」をたくさん選んで生きるため、頼れる先はなるべくたくさんつくることは必要だと思うから。

これはもうずっと前から。
良太が高校(特別支援学校)を卒業し、作業所に通うようになった頃から考えていたことでした。

そして、いつしか訪れる良太の自立に向けて、頼れる先である良太が暮らせるグループホームを探すようになりました。

グループホームが見つかって、入居までのドタバタ、あんな話、こんな話など、詳しくは娘・奈美が書いたこちらから。

特別支援学校を卒業した後、通いたい、そして通える条件にあう作業所を見つける時も大変でしたが、グループホームを見つけるのはそれと同じくらい、いやそれ以上に難しいことでした。

作業所もそうですが、グループホームも、常に満員。新た開設されることも期待できません。入居したい人に対して、受け入れられるグループホームが圧倒的に少ないという、需要と供給があっていない状態なのです。

そんな状況の中、奇跡的に近所に新しいグループホームができるという情報をいただきました。そして速攻で見学の予約を入れて行くことにしました。

そのグループホームは、周囲の環境もよく、陽あたりのいい部屋で、広いお庭があって、とてもいい雰囲気でした。何より、責任者の方やお世話人の方の対応もとても優しく、感じがよかったのです。

私が思う「感じのいい人」とは何かというと。
いくつかあるのですが、外せない理由の1つは、話す時の様子です。

私にだけ話すのではなく、良太に、直接、話をしてくれるとということです。

良太は上手に言葉を話すことができません。
聞かれていることは、難しい言葉や複雑な指示以外であればだいたい理解できるます。しかし、伝わる言葉を使って答えるのが苦手なのです。

良太に話してもわからないだろうと、最初から私にだけに話かけられることはよくあります。

でも、良太と向き合って、良太が話すことを聴こう、理解しようとしてくださる方も時々いらしゃいます。

これまでの経験上、そういう方は信頼できることが多いのです。

そして、そういう方に良太はたくさん話します。おしゃべりが止まらなくなるくらい、よく話します。聴いてくれるという安心感で、自分の思いを一生懸命に伝えようとするのです。

こちらのグループホームの方は皆さん、良太としっかり話してくださいました。

帰り道、良太に「ここに住みたい?」「ママはいなくて、良太1人やけど大丈夫?」

そんな質問をしてみました。

「ぼく、1人で住みたい」

「ここに住みます」


なんともあっさり言うではないですか。

私は念を押すように、「寂しくない?」「ママも奈美ちゃんもいないけど、大丈夫?」と聞いてみました。

帰ってくる答えは同じ。

「ぼく、1人で住みたい」


この時点では1人で住みたい意志は強いようでした。

息子の力強い答えに、嬉しさと寂しさが入り混じった何とも複雑な気持ちになりました。

よく考えてみれば。良太は今年で27歳。
親元を離れて1人で暮らしたいと思うことは、とても自然な流れであって、そう思えるだけ成長したという証。

喜ばしいことです。

とはいえ、1人で暮らしたことがない良太にとっては、1人で暮らすということがどういうことなのか、よくわかっていないはずです。

気が変わって、やっぱり嫌だというかも知れない。実際に家族と離れて住んでみなければ、どんな感情になるのか、私も良太もわかりません。

まだ始まってもいない良太の1人で暮らしの先のことを、いろいろ考えると心配ばかりが次々とでてきます。

まだ経験していないのに、これ以上、良太にいろいろ聞いたところで良太だってわからない。私だってわからない。

だからまずは良太を信じて、良太の自立への第一歩を踏み出そう。
今することはこれだけだと、まずは本入居までの体験入居から始めることになりました。

「いってきまーす」


初めての体験入居に出かける朝、はりきって嬉しそうに手を振る良太。

私と梅吉に手を振る良太


いよいよ良太が家を出て、自立する日が来たんだ・・・。
嬉しそうに出かける、たくましくなった良太の背中を見ながら、幼い頃の良太の小さくて弱々しい背中を思い出し、胸が熱くなりました。

最初の体験入居は1泊2日。

あっという間に次の日になり、良太は帰ってきました。

良太「ただいまー!」

私「おかえりー!楽しかった?」

良太「うん!楽しかった!」

ご機嫌な良太。

私「また来週もグループホームに行くからね」

良太「いや、もう終わりです。行きません」


「グループホームは、もう行きません」



え?終わり?行きません?
楽しかったのに、もう行かないとは・・・?

もしかすると、体験入居は1回で終わりと思っているのかも知れない。
そういえばちゃんと説明できていなかった。

良太は幼い頃から、決まったことを繰り返すルーティンワークは得意でした。しかし、今までとは違うイレギュラーな出来事が苦手でした。

新しいことをするときは、心配がつきまとい、情緒が不安定になります。ひどい時は、お腹が痛くなったり、嘔吐したりする時も。

なので、いつもと違うことをする時は、不安が少しでも減るようにと事前に何度も説明します。

時には、紙に絵や文字で書いて、不安になったらいつでも目で見て確認できるようにしたりします。

今回は、良太のスマホに入れているカレンダーにグループホームの予定を記入しました。いつ行って、いつ帰ってくるのか、カレンダーを見ればわかるように。

そうすると、次の週は納得してご機嫌で体験入居に出かけました。


これで一件落着。


と、思いきや。

「良太さんが、グループホームに行かずに、家に帰るとおっしゃっていて、お迎えの車にどうしても乗られないんです」

作業所から電話がかかってきました。

いったい何があったのか、なんで行きたくないのか、良太に聞いても、怒った口調で「もー!いや!」としか言わず、その理由が全くわかりません。

グループホームの方に、ホームでの良太の様子を聞いてみました。
すると、ホームに着くといつも機嫌良く、たくさん話をして楽しく過ごしているとのこと。行きたくない理由がみつからないとおっしゃいます。

結局、その日は作業所のスタッフの方がしばらく良太と話をしてくださり、良太の気持ちが落ち着くのを待ってからグループホーまで送ってくださいました。

次の日、帰宅した良太に、なんでグループホームに行きたくなかったのか聞いてみました。

「電話、ダメ」
「ゲーム、ダメ」
「テレビ、ダメ」

胸のあたりで腕をクロスさせて、ダメと険しい表情で訴える良太。

良太の話によると、電話もゲームしちゃダメ、テレビも見ちゃダメと叱られた。だからグループホームにはもう行きたくないということらしいのです。

良太がそう言っているということをグループホームの方に伝え、その訳を聞いてみました。そしてその理由がわかりました。

良太は気になることがあったらすぐ、私や奈美に電話をかけてきます。それが夜中の2時や3時の時もあれば、早朝5時だったり。目が覚めた時、心配事が思い浮かんだらすぐに電話をかけてきました。

その後、目が冴えてゲームをしたりテレビをつけたりして、朝起きれなくなってしまうことが続いたそうです。

寝不足で体調を崩さないように、そして他の利用者さんの迷惑にならないように、電話やゲームは消灯時間までにしましょうねと言われたことを、叱られたと思い込んで不安になっていたのです。

叱られたわけじゃない。電話やゲームはしていいけど、夜中はしないでおこうねっていうことなんだよと良太に説明しました。

すると良太は安心して、明るい表情になりました。

「ぼく、グループホーム、行きます」


次の週、再び良太は元気に体験入居へと出かけました。


これで一件落着。


と、思いきや。


「グループホームは、もう行きません」


また!
またの「行きません」

いったいなぜ?

今回は、これまでよりも1日多く宿泊するというイレギュラーが理解できなかったようです。

いつもと同じ曜日に帰ると思っていたのに、帰らずにグループホームに行くということが理解できず、不安になっていました。

朝から何度も何度も「今日はグループホームに行きません」と、LINEや電話がありました。

今回の不安はなかなか大きい様子だったので、私だけでなく奈美からも、良太が安心するように話をしてもらいました。

奈美には何でも素直に話す良太なので、良太が思っていることを奈美から聞き出してもらう作戦でもありました。

2人でおふざけ中


作戦は大成功。

良太自身も説明できないモヤモヤとした何となくの不安をちゃんと伝えられたわけではなかったようですが、よくわからない不安や心配な気持ちを奈美にわかってもらえたことが嬉しかったようでした。

おかげで良太の気持ちは落ち着きました。

話せる人が私だけでなくてよかったと、改めて思いました。

また、作業所のスタッフの方も良太の気持ちが不安定になったら全力で協力していただき、寄り添い、時間をかけて向き合ってくださいました。

そして、迎えにきてくださるグループホームの方も、良太の気持ちを見守り、待っていただき、良太のペースに合わせて動いてくださいました。 

そしてこの週も、たくさんの人を巻き込んで無事に体験入居ができました。


これで一件落着。


と、思いきや。

またもや。。。

「家に帰りません!グループホームへ行きます」


え?
今回のはちょっと違うパターン。

家に帰る予定の日なのに、帰らないと言うではありませんか。

グループホームがそれほど楽しい居場所になったのかと思うと、喜ばしいことなのですが、体験入居を予定している他の利用者さんの予定もあるので、急に今日も宿泊というわけにはいきません。

家に帰らないと、岩のように座り込み、動かなくなっている良太。

行く、行かない、と、状況は違えど、再び私や奈美、そして作業所やグループホームのスタッフの方と、それぞれがそれぞれの立場と役割で、良太と向き合い、話をしました。

そうしてわかった、良太が家に帰りたくない理由は。
良太のスマホのカレンダーに入れているグループホームの予定が、帰る日にも「グループホーム」と書いてあったので、この日も泊まると思い込んでいたことでした。

カレンダーの、作業所での仕事が終わる時間に「家に帰る」と書き込んで、それを良太に見てもらったら納得ができました。無事に家に帰ってこれました。

これで一件落着。


この後も、安心したと思いきや、そこからのどんでん返しでハラハラ、ドキドキ。その繰り返しが続きましたが、その都度、試行錯誤。

良太の気持ちがこんなにも揺れたまま、本入居まで辿り着けるのだろうか……日々色々とある中、私の不安は大きくなっていました。

最初の頃は、私1人が不安や悩みを抱え、落ちこんでいました。でも、私1人が悩んでいても問題は解決できませんでした。

ママでは無理だからと奈美にお願いすて協力してもらったり、作業所やグループホームのスタッフの方を頼って相談したり、お任せするようになってからは随分と状況は良くなりました。

良太の気持ちが揺れるたびに、関わっていただく皆さんと一緒に、臨機応変、試行錯誤。良太が落ち着いて穏やかに過ごせるようにと、たくさんの時間を費やし、協力してくださいました。

良太の部屋

そうして時は流れ、初めての体験入居から1月半が過ぎた頃、平日はグループホーム、週末は自宅という生活リズムが良太に整い、晴れてグループホームに本入居できるようになりました。

日曜日、家からグループホームにもどる支度を、私が声をかける前に良太が1人でできた日。ようやく良太がこの暮らしに安心できるようになったんだと実感できて嬉しくなりました。

良太の自立に向けての大きな変化の中で、何が良太に不安を与えて、何をすればその不安がなくなるのか、その試行錯誤の連続は私にとってもいい経験になりました。

良太が1人で用意したお泊まりセット


ここ何年かの岸田家の目標は、良太が自立して暮らすことでした。
そのために必要なことは、良太のことを知ってもらう「人」と「場所」を増やすことだとわかりました。

学校を卒業してからも、良太は多くの人に関わっていただき、知っていただく機会がありました。

作業所の支援員さん、ショートステイ先のお世話人さん、ヘルパーさん、相談支援事業所の方、スイミングのコーチにご近所さん、よくいくお店の店員さん。私や娘の友人やお仕事仲間の人たち。そしてグループホームのスタッフの皆さんと。

良太に関わっていただく方は良太の成長とともに増えていきました。

良太がいろんな壁にぶつかって、不安になって落ち込んだ時。
家族だけでは解決できないことはたくさんあります。

そんな時、良太に関わってくださる皆さんが、良太に寄り添い、支え、たくさんの力を良太に与えてくれます。

だから良太は、しんどいことや不安なことが起こっても、自分でそれを乗り越えることができています。

良太の背中

これから先も、良太にはたくさんのイレギュラーな出来事が訪れるでしょう。楽しいことも、そうじゃないことも。大きな壁も小さな壁も。

不安で泣きそうになることも、傷ついて悔しい思いをすることも、たくさんあるかもしれません。

それでもくじけずに、良太の人生に立ちはだかる大きな壁や小さな壁を、良太が自ら乗り越えてほしい。

良太のすぐ側にいる、良太の味方でいてくれるたくさんの人たちに頼りながら、その壁を乗り越える力をもらいながら。

不安で前に進めなくなるのではなく、不安な時は誰かに頼ってどんどん前に進める人になってほしいと、ママは願っています。

そして願わくばいつの日か、良太も誰かの頼りになる人になれたらいいな。




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