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読書感想文 史論力道山道場3羽烏

力道山道場3羽烏とは、ジャイアント馬場、アントニオ猪木、大木金太郎の三羽である。

その三人が日本マットではなくアメリカ武者修行の出来事を史実から読み取っていく。

私自身アメリカ武者修行時代はうといので様々な発見があり面白く読めました。

馬場さんは北米マットという当時も今も黄金テリトリーを回り、リアルドルの雨を降らせたレインメーカー。
猪木さんはテネシーなど金払いの悪いプロモーターがいるところでファイトしていた。金払いが悪いので相対的にいいレスラーは来ずに金のかからないレスラーがくる。猪木さん自身、アメリカでの評価は悪くなかったが同期に馬場さんがいるためあまり目立たなかった。
大木さんは同郷である師匠の力道山襲名を夢見て、世界タイトル奪取に執念を燃やしていた。

このアメリカでの経験が三人のこの後のプロレス人生の糧となる。
馬場さんは全日本プロレスを立ち上げ、自身がサーキットした北米マットの大物レスラーを招聘し、興業に彩りを加えたが支払うギャランティーが多く経営をひっ迫していた。
また猪木新日本から度重なる挑発も受けるも、常に大人の対応を示し相手にしなかった。それはプロレスの本場アメリカでトップを取ったという余裕から来ているのであろう。

猪木さんは新日本を立ち上げた時、テレビやアメリカレスラーなどのつてはなく自分たちでやっていかなくてはならない状況に立たされた。そこでテネシー州での経験が役に立っていると思う。安いレスラーを呼び自分たちが育て安いギャランティーでファイトする。話題性に事欠かなかった新日本プロレスは全日本プロレスに負けないほどの観客動員を誇った。安いギャランティーで雇った新日本のほうが儲けは多かったろう。
また猪木さんは業界の常識に囚われずプロレスファン以外の対世間を想定し異種格闘技戦に始まる様々な仕掛けを展開していった。

大木さんは世界タイトルを取れば力道山を襲名していいよとのことで、タイトル奪取に躍起になる。そのことでプロレス興行で大事な営業活動を疎かにしてしまう。馬場猪木がそれぞれの団体で成功しているのに対し、大木さんは韓国でプロレスを発展させ続けさせることが出来なかった。
韓国では朴正煕大統領がプロレスを支援していたおかげで営業活動をしなくても観客を動員することが出来ていたが、朴正煕大統領が暗殺された時点でプロレスを維持することが出来ずに終わってしまう。

タイトル奪取に躍起になったおかげでファンからの人気は少なく、客の呼べないレスラーだった。が猪木新日本に呼ばれ一本やり頭突きのとしてブレイク猪木のマッチメーク術が光りブレイクする。その後全日本プロレスに呼ばれファイトする。
ようやく集客力のあるレスラーとなったが営業活動が出来ずに祖国のプロレスを発展させることが出来なかった。

アメリカ武者修行時代の事を知られて良かった。その後のプロレスラー人生に大きく影響を及ぼしているなと感じた。
また巨人の馬場、ブラジル移民の猪木、韓国人の大木、当時の世相ならはぶれそうな三人だが、プロレスを通じ人々を熱狂の渦に巻き込んだし。それぞれ人に言えないコンプレックスがあったのだと思う。その怒りやコンプレックスがありそれをぶつけるからこそこの三人は面白いのだと思った。

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