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『ファクトフルネス』のファクト

12月に入って『ファクトフルネス』の発行部数が50万部を超えました!わお。こんなに売れると思わなかったなあ。いやあ、うれしい。

取次の日販調べによると、2019年のビジネス書では『メモの魔力』に次いで2位となりましたが、ビジネス翻訳書では1位。楽天KoboやBookLive!など電子書籍ストアのビジネス書では1位となりました。

私はビジネス書の編集をはじめて14年になりましたが、50万部を超えたのはこの本が初めて。発売当初から応援してくれたみなさん、読んでくれた方々、訳者の関さんと上杉さん、そして来日してくれた共著者のアンナさんには、本当に感謝しています。2019年1月の発売から11カ月、思えば遠くにきたものです。

でもね、『ファクトフルネス』は「データを基に正しく世界を見よう」と言ってる本ですから、50万部だ、すごいぞ!とばかり言っていたら、著者のハンス・ロスリングさんに叱られそうです。そこで、『ファクトフルネス』のファクトについて考えてみることにしました。

電子書籍の比率は14%でなかなか多い

ファクトフルネスは50万部だと言っていますが、これは紙の本と電子書籍の部数を合わせた数です。電子書籍は7万部超で、50万部の約14%を占めています。本によって電子書籍の比率はまちまちです。私が担当した本の中で電子書籍の比率が一番高い『HARD THINGS』は約3分の1が電子書籍で売れているので、ファクトフルネスは電子比率がめちゃくちゃ高いというわけではありませんが、それでも一般的なビジネス書よりは結構高い水準です。

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日本のシェアは25%とこれまた多い

さて、日本で50万部だ〜と喜んでいるわけですが、『ファクトフルネス』は世界各地でもたくさん売れています。各国に版権を取り次いでいるエージェントが集計した世界の発行部数は、日本版発売前の2018年末で100万部、2019年10月時点で200万部とのこと。このうち日本が50万部ですから、日本版は世界の4分の1のシェアを占めているわけです。

世界の人口は77億人、日本の人口は1億2600万人ですから、日本の人口シェアは1.6%。一方でこの人数でファクトフルネスのシェアは4分の1=25%なのですから、いかに日本の読者が本書を気に入ってくれているかがわかります。

なお、ファクトフルネスは、英語、ドイツ語、フランス語、イタリア語、ポルトガル語、アラビア語、中国語、韓国語など世界30カ国で出版されています。まだ翻訳されていない言語もあるので、世界の人口77億人との比較はちょっと乱暴かもしれませんが、それでも日本の比率が高いことは間違いありません。

でも、『一切なりゆき』の3分の1しか売れてない

ここまで『ファクトフルネス』は売れたと自画自賛してきましたが、今年一番売れた本ではありません。まだまだ上がいます。一番売れたのは、樹木希林さんの言葉をまとめた『一切なりゆき』(文藝春秋)。オリコンの推定によると、実売部数は123万部。同じく『ファクトフルネス』の実売部数は40万部と推定されていますから、『一切なりゆき』は実に3倍以上も売れているわけです。4位も『樹木希林 120の遺言』と樹木希林さんの本ですから、改めてすごい人気ですね。

2019 年間本ランキング(オリコン調べ)https://www.oricon.co.jp/confidence/special/53961/2/

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日本人の100人に1人もまだ読んでいない

今度は、日本でどのくらいの人が『ファクトフルネス』を読んだのかを考えてみましょう。50万人って見たこともないけれど、どんな感じでしょうか?

東京ドームや大阪ドームの収容人数は5万人前後とのことですから、ドーム10杯分。ドーム10日公演だと思うと、すごいっ!

でも、日本に住んでいる人数と比べたら、50万部ってどうなんだろう? 赤ちゃんは『ファクトフルネス』は読まないから比較してもちょっと変。うちの11才の本があまり好きでない息子に読めと言ったらまあまあ読めたので、10才以上の人口=1億1633万人で割ってみることにしました。

50万/1億1633万=0.42%

なんと、たった0.4%しかファクトフルネスを読んでいないじゃないですか。がーん。いやいや、まだまだ伸びしろがあると考えましょう。

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人口推計:https://www.stat.go.jp/data/jinsui/pdf/201911.pdf

まあ、こんな感じで、同じ「50万」という数字でも、どの数字と割り算するかで、すごいとかすごくないとか見方が変わるわけです。これぞファクトフルネス。

私は50万という数字に喜んでばかりいないで、伸びしろを信じて、このすばらしい本をさらに広めていきたいと思っています。



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