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4つの役割の中で葛藤する、マネジメントという仕事

「マネジメントは重要だ!」
というのは、誰しもが思っています。けれど、「マネジメントの役割とはなにか?」と聞かれるとどうでしょうか。何をする役割の人なのかがいまいちピンと来なかったり、人によってバラバラなのではないかと思います。
この記事ではマネジメントの役割について僕なりの考え方を共有したいと思います。

マネジメントには大きく4つの役割があると思います。
その4つは2つの軸によって分けられます。

1. マネジメントの対象:ヒト or コト 
2. マネジメントの期間:短期 or 長期

 図解すると以下になります。

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1.コト×短期=業務管理
 チームの目標を決め、進捗を確認しながら、目指した成果が出るように 
 業務のアドバイスやサポートを実施していく役割

2.コト×長期=業務改革
 抜本的な業務改革・戦略設計を行い、短期施策の積み上げではなく、長 
 期的に価値を高め続けるための施策を設計・実施していく役割

3.ヒト×短期=関係構築
 メンバーの人となりを知り、声をかけ、動機付けを行い、チームの良い関
 係を構築し、心理的安全性の高いチームを作る役割

4.ヒト×長期=人材育成
 強みや弱みを踏まえ、次の成長テーマを設定し、成長を実現する挑戦的 
 なミッションを設定し、足りない部分を日々フィードバックする役割

補足すると、初級マネジメントは短期マネジメントの役割比重が大きく、ミドルマネジメントやトップマネジメントになるにつれ、長期マネジメント役割比重が大きくなります。

4つの役割を葛藤しながら担う

4つの役割は時に、何かを優先すると何かが劣後することが発生しますそのため、常にその優先順位や自分の得意不得意と向き合いながら葛藤し、葛藤を受け入れながらマネジメントをしていくことになります
今マネジメント職に就いている人で、「葛藤が無いです〜」という人は、マネジメントの神なのか、何かの役割意識が欠けていると思います。

たとえば、

・短期成果を求めるために、厳しいフィードバックをすることは、メンバーから「厳しい人だ」「私のことが嫌いなのではないか。」「ついていけない」など、関係構築に影響が出そうで出来ない

短期成果や本人の成長を考えれば、短期的に嫌われてでも、向き合って乗り越えていかないといけませんよね。

また、

・(中長期)戦略をしっかり考えないといけないのに、日々、目の前の短期成果を高めることで時間も気持ちもいっぱいになり、長い目で見た企画や仕掛けが出来ない
・「まずいなぁ、戦略設計をちゃんとやらないとなぁ」と思いながらも、中々時間や気持ちが割けない

ということもありますよね。

4つの役割の葛藤に失敗するよくある例

僕も、これまでマネジメントをする中でたくさん失敗してきましたし、今でも中々うまくいかないこともあります。僕自身やたくさんの組織を見てきた経験から、よくある失敗例を共有します。

例① 業務管理<関係構築=弱虫仲良し集団(サークル的組織)
厳しいことや細かいことを言うと、本人のモチベーションが下がるのではないか、嫌われるのではないかと、いう気持ちから、業務管理がしっかり出来ず、メンバーのモチベーションばかりを気にしてしまうパターンです。

・メンバーに高い要望を出した際に、「そこまでは出来ません。」「それは
    難しいです。」と言われたので、要望レベルを下げる
・最初からその人に出来そうな範囲でしか業務を任せない
・出してもらった成果が期待したものに届いていないのに、「よく頑張ったね」と褒める

上記は、ヒトのモチベーションや人間関係の優先順位が高く、コト側のマネジメントが緩く、高いコミットメントを持ったプロ集団になれていない状況によって起きる事例です。

結果的に、組織で決めた成果をやり抜けない、高い目標を張ると、モチベーションが下がるので頑張れない。という形になります。仲は良い組織ですが、凡庸な成果しか出ません。例えるなら、「仲良しサークル」です。

例② 業務改革<業務管理=目の前を最適化しすぎて絶滅する

・中期的成長に向けた戦略や、未来を見据えた抜本的な業務改革が、進んでないと理解しながらも、短期の業績対応で手いっぱい
・わかってはいながらも忙しさに負けて葛藤を乗り越えて行けず、あきらめてしまい、本来必要な中長期の事業成長のための施策が後回しになる

特に、課長から部長に変化するなど、マネジメントの役職が変わり、期待されている役割が変わっているのに、本人が役割の変化に気づかない、または気づいていても変われない人が多いです。

・戦略を策定・推進するよりも、現場の仕事に直接手を出そうとしてしまったり、従来の経験から各論の具体施策は考えられるが、戦略は考えられない

などが代表的な役割不全の状態です。全員が目の前の仕事に取り組み続けるのですが、大きな時代の転換や、変化に対応出来ず、過去の環境に最適化しすぎた結果絶滅していってしまいます。

コト側マネジメントがヒト側マネジメントの前提となる

僕自身も4つの役割を意識してマネジメントしてきましたが、4つは葛藤しながら、その時の事業や組織の状況に合わせてバランスを絶妙に変えながら取り組んでいく必要があります。

その中でも学んだことは、基本的には、コト側のマネジメントが前提で、その上でヒト側のマネジメントに注力することでマネジメントの役割はより機能するということです。

まずは、期待する役割や、どれくらいの成果を期待するのかを本人としっかり会話し、それをしっかり伝え、その実現に向けてどのようなサポートが提供できるかを考え、メンバーに伴走をすることが1階部分です。

それがしっかり出来た上で、本人の動機づけ、モチベーションマネジメント、当事者意識の引き出しなどをしっかり取り組んでいくことが2階部分です。いくら2階がしっかりしていたとしても、1階がしっかりしないことには総崩れになっていきます。

ただし、前提としては、
「業績を積んだ人には報酬を、徳を積んだ人には位を。」が大事だと思っていますので、業績は上げるが、組織の推進したい文化と違う行動をする人を任用しないことです。
※徳=推進したい企業文化を行動で体現してくれる

僕は、マネジメントは、一つの職種だと思っています。初めからうまく行かなくて当然ですが、日々しっかり4つの役割を意識し、職種としてのマネジメントの専門性を磨いていきましょう!

読んでいただいてありがとうございました!
次回のnoteでは、「いかに適切な目標設定をするのか?」についてまとめていきたいと思います。

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林 宏昌(リデザインワーク・スキルキャンバス代表)
経営戦略、人事戦略、働き方について、自身の経験を通じて得た気づきや学びを書いていきます。フォローしてもらえると喜びます! リクルートにて営業→経営企画室長→広報ブランド推進室長→働き方変革推進室長→リデザインワークを創業+ベーシック取締役COO+情報イノベーション大学客員教授