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文章を書くのに必要なのは、語彙力よりも「他人への想像力」だ。

「私、語彙力がないから」
「文章を書くのが苦手です」

よく言われます。

語彙力は、確かにあるに越したことはない。たくさんの言葉を知っていれば、それだけ思考は広がるだろう。

だけど、大切なことは「どれだけたくさんの言葉を知っているか」ではない。

どれだけたくさんの「人の気持ち」を知っているかだ、と思う。


「自分とは違う他人」の価値観をどれだけ知っているか

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文章には読み手がいる。自分用のメモなら、読み手は「未来の自分」だが、
それ以外の文章には必ず読者がいる。

その読者にどれだけ思いを馳せられるか。

どんなことに悩み、どんなことに困っていて、何ができなくて、何に迷っているのか。

どうなりたくて、何が欲しくて、何が足りないと思っていて、どんな生活をしたいのか。

「自分と同じ」ではない、「他人の人生」にどれだけリアルに想像を馳せられるか。それが、書き手に求められることではないか、と思う。

情報発信をして、もっと多くの人に自分を知ってもらいたいと思っていたり、何か商品・サービスを買ってくれる人を増やしたいと思っていたりする場合は特に、
自分以外の「誰かの人生への想像力」がどれだけあるかは重要なポイントだ。

私は「自分の言葉でビジネスをつくる」という講座をしている。
受講生さんたちを見ていると、はじめのうちは、
「自分」と「自分の商品・サービス」だけに目を向けている人が多いと感じる。
「自分(または過去の自分)」と「自分の商品サービス」のストーリーを語るのももちろん大切だ。
だけど、それだけでは、そこに「読者が張り込む余地」がない

読み手は、知らない誰かの熱い語りに、いきなりは入れないのだ。

読者が知りたいのは、いつだって、「自分に関係あること」だ。
「あ、私のことだ」
「なんでこんなに俺の気持ちがわかるの?」
「まるで自分のことみたい」

と感じるから、読者はその書き手を信用する。

信用が溜まっていけば、会う前から信頼される。

そのためには、まず書き手が、読者のリアルな気持ちを知らなければならない。



同業者やいつも会う人、スマホの中に閉じこもっていないか?

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朝起きてから寝るまでに出会う人、ネットの中で出会う人。

それらは、世の中の「ほんの一部」に過ぎない。自分の見えている世界なんて、とても小さくて、そこにある価値観が全てではない。

当たり前のことだけど、私たちはつい、それを忘れがちだ。

「あれ」「それ」とか専門用語だけでも伝わる会話。
「ヤバい」「かわいい」だけで成り立つチャット。

それに慣れてしまうと、言葉は増えない。

自分のスマホの中の情報は、知らないうちに「自分用にカスタマイズされた」ものだ。

SNSでのつながり、Googleの検索、Amazonや楽天の購入履歴。いろんなデータから「あなたこれ好きでしょ?」と選別された情報。

それは心地よいものかもしれないが、それが全てではない。そこにどっぷりつかってしまうと、「自分が思っている世界」と「リアルな世界」が乖離していく。

自分のスマホの中にはない情報を、意識して取りに行く。
自分の半径2メートル以外の人の価値観を、意識して観察する。

そうしないと、どんどん、視野が狭くなってしまうのではないか。


雑誌、ドラマ、小説、「他人の価値観」と「生活」を観察する

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自分のスマホの外の情報に触れるには、簡単なのは「書店」だ。

本屋さんに行って、いつもはいかない「棚」の前に立つ。とっつきやすいのは、雑誌かもしれない。

雑誌?いまどき?と言う人もいるが、雑誌は編集者がいて、デザイナーがいて、ライターがいて、プロが作ったものだ。ネットに溢れている玉石混交の情報よりも質が高い(と多くの場合は言えると思う)。

「自分の興味のある雑誌」ではなく「自分の読者が好きそうな雑誌」を読んでみる。

これ、似ているようで違うことなのだ。

たとえば、私がインテリアの仕事をしているとして。普段なら、インテリアの専門誌や、インテリアに興味がある人が読むセンスのいい雑誌を選ぶだろう。

だけど、「読者の気持ちになって」選んでみるならば、ファッション誌のインテリアコーナーも読むし、生活情報誌(主婦向けの雑誌)のインテリアについて書かれている記事も読む。
専門家が専門家向けに出している雑誌と、一般向けに書けてているものは違う。ファッション誌にあるインテリアの記事と、生活情報誌にあるインテリアの記事は微妙に違う。

そして、インテリアの記事を離れ、ビジネス雑誌、スポーツ雑誌、料理雑誌、子育て雑誌、と読み進めていく。

書店で立ち読みするのが難しいなら、表紙のタイトルを眺めるだけでも勉強になる。私は、気になる雑誌はポンポン買う方だが、dマガジンも活用している。月額400円(税抜)で約450誌が読める。バックナンバーも読めるし、単語で検索もできるから便利だ。

専門家としての自分の檻から抜け出し、街に出る。
暴れん坊将軍や遠山の金さんが、身分を隠して江戸の町で暮らしていたようなものだ(わかりにくい)


「自分とは違う人の人生を知る」という意味で最適なのは、ドラマや映画、小説だろう。

登場人物の中には「この人の気持ち、わかるな~」と感じる人もいれば、全く分からない人もいる。

まさに他人の人生を凝縮して学べるツールなのだ。

ドラマや映画には、その時代時代の価値観も如実に表れている。「今の時代にみんなが思っていること」をざっくりと掴むことができる。

Youtubeだと、その人ひとりの価値観が強すぎて、こうはいかない。ネット上にあるスピード感のある情報と、小説やドラマ、映画は、別物なのだ。じっくりと「他人の人生」に思いを馳せるなら、物語がおすすめだ。



カフェや電車の中で出会う人の人生を「観察」して「想像」する

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私はよく、カフェや電車で見かけた人の「観察」をする。ジロジロ見る、ということではない。露骨に見るのは相手に失礼なので、想像しながら観察している。

この人とこの人は、どういう関係性なのかな。
今の会話、どういう意味なんだろう。
人は、言いにくいことを言う時、こういう表情をするんだ。

午後6時半の電車の中では、帰宅途中の人と、これから出かける人の違いを観察する。足取りは、髪型は、表情は。そんなところから想像をするのだ。

「観察」とは、ぼーっと見ることではない。対象物に注意を向けて、ひとつひとつを確認していくこと。

たとえばヨガをやっていると、よく言われる。「自分の呼吸を観察しましょう」「今、背中がどんなふうに地面についているか、観察しましょう」「今の心の状態を観察して」あんな感じだ。

自分とは違う人、全ての人に、「生活」があり「価値観」がある。
人はそれぞれ大事にしたいものが違う。

当たり前のそんなことに、ふと気づける。


「全く理解できない他人の気持ち」を、分解してみる

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私は以前、「自分のやりたいことがわからない」と言う人の気持ちがわからなかった。

自分自身は、小学校の頃からやりたいことが明確だったし、中学の時に「コピーライターになる」と決めて、その職業に就いた。

だからだろうか、「やりたいことがわからない」と言う人の気持ちがわからず、なんでそんなことを言うのかな? なんて思っていた。

「結婚したら仕事はやめる」という女性の気持ちもわからなかったし、「扶養範囲内で働きたい」と言う人の気持ちも、何かを決めるときに「夫に聞いてみます」と言う人の言葉も、宇宙語のように理解できなかった。

仕事でたくさんの人に接してきて気づいたことは、相手の気持ちなんて理解できない、ということだ。
理解しなくてもいいし、ましてや共感しなくてもいい。

「相手はそう思っている」。それを知る、それを認める、それだけでいいのではないか。

思ってもいないのに、「わかる~」と言う必要はないし、ましてや、自分の意志をまげてその人たちに迎合する必要もない。

ただ、「あなたはそう思うのね。なるほど。私とは違うね」「どっちもありだね」それでいい。

でも「書き手」としては、そこで止まらず、もう一歩先に行きたい。

つまり、「自分とは違う」人の中にも、どこか「自分にもわかる点」を見つけたいのだ。

「やりたいことがわからない」と言う人の気持ちの全部を理解することはできなくても、分解して考えたら、その一部はわかるのではないか。

やりたいことがわからない人が、
何に迷い、何が不安で、どういうことに困っていて、
どうなりたくて、でも何がストップをかけていて、どういう自分を目指しているのか、
そんな風に一つ一つ分解していくと、「その気持ちはわかる」という1点に辿り着くことがある。

全体では理解できなくても、パーツに分ければ、一つ一つのうちの一つは理解できる。そうやって接点を見つければ、「その人の気持ちがわかる」につながっていくのではないかと思う。


読者やお客様のことを「どれだけリアルに想像できるか」が全て


文章を書くのに必要なのは、難しい言葉をどれだけ知っているかではなく、人の「感情」や「価値観」や「生活」をどれだけ知っているかだと思う。

人は自分とは違う。だけど、どこかには小さな接点があるかもしれない。そんな風に人を見ていけたら、文章や発信だけでなく、ビジネスも、人間関係も、変わるかもしれない。



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