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お店の伸ばすべき所は、まだ隠れているだけかもしれない。

競合はたくさんいるが、知名度があって売りやすいものを売っていくか。知名度はなく売れ行きはわからないが、自社のオリジナル商品を売っていくか。

ショップ運営に関わったことのある人は、一度はぶつかる壁ではないだろうか。

どちらも商売の戦略としては正しい。セレクトショップは両者のバランスを巧みに融合させていくのが望ましいが、言うは易し行うは難しだ。

利益を出しながら社会的意義を全うすること、革新的な挑戦続けながら人的・経済的キャパを確保すること、安定志向と挑戦志向のバランスをとっていくこと。どれも一筋縄ではいかない。

例えば利益率を上げたい場合。オリジナル商品を作ろう(増やそう)となるケースが多い。だが、オリジナル商品を作るには生産ロットをクリアする必要があり、在庫リスクをとらなければいけない。在庫を抱えるということは、お金を一時眠らせておくことになる。なので間違えなく売れる流行りのモノを作ろうとする。けど他社も”今”売れるものを作ろうとするので、他社と似たものが店頭に並ぶことになる。

ならば差別化しよう!と、他店にはない独自性の強い商品を作ろうとする。独自性の強い商品は一般受けしないケースが多い。既存顧客だけで消化できる独自性の強い商品の数はたかが知れている。せっかく作るならと、こだわり抜いて独自性を追求し一点物や少数生産のものをつくる。結果、素敵なものができる。だけど高い。日常的に買える価格では到底売れない。

これはファッション業界の歴史をみても同じことが言える。

オートクチュールとプレタポルテ。オートクチュールは完全オーダーメイドで、スカートで100万円、スーツで300万円、ドレスでは1,000万円はくだらない。半年〜1年かけてオーダーした洋服の仕上がりを待つ。ごく一部の上流階級しか頼めないが、オートクチュールのショーは見る人すべてを魅了するほど美しくて華やかだ。プレタポルテは高級既製服と言われ、受注生産ではなく卸売用にブランド側が在庫を抱えてすぐに持ち帰れるようにした販売スタイルで、こんにちのアパレルショップの方法だ。

世界中で知られる有名メゾンでさえもオートクチュールだけを見ると赤字だ。それでもやり続けるのは、プレタポルテしかやらないブランドに比べオートクチュールを制作するブランドには伝統あるメゾンが多いのと格式があり、ブランド力を底上げするからだ。他アイテムでライセンスフィーを得ることができるので、オートクチュールの赤字を相殺して利益を出すことができる。

オリジナル商品で独自性を出して利益をあげていくには、思い切って利益商品と魅せる商品を分けて、魅せる商品の赤字を全体で補填する戦略が差別化に繋がると私も考えてきたし、多くのブランドがこの戦略をとってきた。
ただ、このやり方を手本とできるのは資本や経営資金に余裕のあるショップだけだろう。

そもそもオートクチュールラインなんて作れないし、商品軸の取捨選択やコンセプトをどうすればいいのかがわからない、というショップは何から行えばいいのだろうか?


それは、”客観的に見た強み”を伸ばしていくこと。

人間は自分のことは一番わからないというが経営も一緒で、他店からみた自店の強みは、自分達にとっては当たり前すぎて強みと自覚できていない場合が多々ある。

強みとして伸ばしていくべきことは、現在数字がとれているモノとは限らない。ここが、自店の強みを判断しにくくなる最大の原因だ。お店の伸ばすべき所は、まだ影に隠れているだけかもしれない。

強みとして注力していくべき商品やサービスと同じくらいか、それ以上の売上を占めている他のモノがあれば、そちらに時間をさこうとするのは経営的に考えて当然だ。

だがそういうショップの経営者や店長の話を聞くと大半が、違和感を感じながら自店の強みにならない商品を伸ばそうとしている。自社にしかできないアピールポイントをおまけ程度にしか出していないから、消費者には特徴として理解されない。

強みを出しても売れないのではなく、強みの出し方がズレているか足りないだけ。現状の数字の惑わされず、自社の強みを客観的に理解して伸ばしていけば、後に何倍にもなって返ってくる。





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