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『舌骨上筋群』の機能解剖からの治療アプローチ

こちらは、2021年2月17日に嚥下ナイトセミナーの『舌骨上筋群の機能解剖からの治療アプローチ』のセミナーレポートになります。

 セミナーを通して、皆様と嚥下障害の方を担当する中で臨床場面の疑問や悩みなどを少しでも共有できたことを嬉しく思ってます。

 このセミナーレポートでは、講義の中でお伝えした内容や、皆様が臨床に戻ってから少しでも学んだことを活用して頂き、臨床の手助けになれば幸いです。



この簡易版レポートは嚥下セミナーの概要についてセミナー内で話す内容を簡単にまとめたものです。より細かい部分に関しては是非下記の復習用動画をご覧ください(一部無料公開中)。なお、レポートに関しては、無断での転記等はご遠慮いただきますよう宜しくお願い致します。

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 まず、皆さんが担当する嚥下障害の患者様でよくある現象として
*嚥下反射遅延があり、経口摂取スピードが低下し摂取量が上がらない
*喉頭が挙上しにくい
*咽頭残留やムセがあり誤嚥リスクが高いために経口摂取が開始できない
  などに困ることは、ありませんか?

 その患者様を担当した時に、嚥下反射時の喉頭挙上をアプローチする為に『舌骨上筋群』への評価・治療を考えると思います。
皆さんは、臨床でどのように『舌骨上筋群』に対して評価・治療行いますか?

 また、挙上訓練・メンデルソン手技・開口訓練・舌挙上訓練など多くの方法がある中で、臨床でどのように治療を行いますか?

 これを選択する前に、そもそも舌骨上筋群の解剖的特徴・筋の走行・個々の筋肉の機能・役割を知ることが自分自身は大切だと感じてます。
 今回は、臨床で舌骨上筋群へ評価・アプローチする為に必要な3つのポイントをお伝えしました!

舌骨上筋群とは?

舌骨の上にあるのが『舌骨上筋群』
舌骨の下にあるのが『舌骨下筋群』
舌骨上筋群は顎舌骨筋・顎二腹筋・オトガイ舌骨筋・茎突舌骨筋で構成されており、まずこの解剖学的位置や視覚的な解剖イメージが評価・治療において大切なポイントになります。

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 臨床では、評価・治療をして効果判定する上で触診技術向上が必須になってきます。まずは、自分の舌骨から舌骨上筋群を触診してみてください!

触診ポイント
骨のエッジを捉えること
舌骨上筋群はとても細く薄い繊細な筋肉なのでタッチは繊細に

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また、顎舌骨筋・顎二腹筋・オトガイ舌骨筋・茎突舌骨筋がすべて機能することで、舌骨上筋として舌骨を常に高い位置でキープし、喉頭や舌を保持することができます!

舌骨・舌骨上筋群の進化過程からの特徴


 臨床上で、舌骨上筋群を治療する上で知っておく必要がある特徴としては、

*人の舌骨は浮遊骨であり、舌骨上筋群・舌骨下筋群の活動によって常に自由度が求められ、咀嚼・嚥下・呼吸・会話などの目的に応じた運動を実現する構造
*舌骨上筋群は、収縮に特化しており、反射的に素早く反応する筋肉である。
*舌骨下筋群は、元々体壁筋由来であり、頸部の安定・自由度を得るために頸部前面なった筋肉である。よって筋紡錘が多く筋肉の長さ・速さの刺激に対して筋の緊張をコントロールをする特徴がある。

 この特徴からも、舌骨上筋群の筋の緊張を一定に維持するためには、舌骨下筋群が先に働く活動が大切で、舌骨上筋群は常に自由度を有しておく必要があるということです。

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舌骨上筋群の役割について


 大きく舌骨上筋群の役割は、3つになります。この役割を知っているからこそ、どのように治療していくのかが思考できますので、是非一緒に学んでいきましょう!

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① 舌骨と下顎骨・側頭骨の間で、口腔底を形成している。


まず、口腔底とは下顎の歯ぐきと舌に囲まれた部分になります。
下の図のように、舌を上げて見えるところが口腔底になります。
その中で顎舌骨筋は、口腔底の一番底を形成しており、筋肉の走行や機能からハンモックのように口腔底を支えてくれます。

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  臨床で嚥下障害を呈している方は、顎の下の筋や皮膚はどのような状態になっていますか?
  たるんでいる、皮膚が下がっていることが多くないでしょうか?
 たるんでいたら口腔底はどうなると思いますか?

このように、舌骨上筋群(特に顎舌骨筋)の機能が低下することで、口腔底が下がり舌骨が常に高い位置をキープできない事が、舌運動・下顎の安定には大きく影響してきます!明日臨床で一度触診して、評価してみてくださいね(^ ^) 触り方や触診方法は、セミナーにて紹介してますので、是非覗いてみてくださいね!
 

② 開口時に下顎を引き下げる


舌骨上筋群は、開口筋としての役割があることも治療を考えていく上では重要なポイントになります。咀嚼筋と共に三叉神経支配領域になり、閉口・開口運動が舌骨上筋群の治療になります。

開口のメカニズムは、下図にまとめてみました。

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<開口>
 咀嚼筋が弛緩した状態→舌骨下筋群が先行的に収縮することで舌骨が固定→舌骨上筋群が収縮する→下顎が下方に引き下がる→開口

<閉口>
 舌骨下筋群の弛緩→舌骨上筋群の弛緩→咀嚼筋の収縮(咬筋・側頭筋)→閉口


 舌骨上筋群の中で開口筋として働くのは、解剖学的な筋肉の走行や機能から顎二腹筋前腹・オトガイ舌骨筋になります。まず、評価としてここが開口時にどれだけ収縮しているのか、どんな代償が出るのかを診ることからはじめてみましょう。

 そして、開口を達成するためには『舌骨下筋群』がまず舌骨を固定する事が必要になってきます♪次回は、舌骨下筋群の機能解剖からの治療アプローチをお伝えしますので、良かったら参加してより臨床の幅を広げていただければ幸いです!

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 また、舌骨上筋群の治療展開を考える上でまず開口運動にて『舌骨上筋群』を両側性に求心的な収縮運動を促せるかが大切なポイントです。もし、三叉神経領域の運動麻痺を呈している場合に関しては咀嚼筋と共に開口運動にて、顎二腹筋・顎舌骨筋などの骨格筋の随意収縮練習が必要ですね👍


③ 嚥下時に喉頭を引き上げる

 舌骨上筋群の役割で一番皆さんがよく知っているのは、『喉頭を引き上げる』という役割ではないでしょうか?

 皆さんは、臨床上で喉頭の位置はどのように評価してますか?下の図にあるように甲状軟骨の触診にて位置を把握することで、『喉頭』の位置の個別性の評価ができます!まずは、自分の甲状軟骨の位置関係から確認してみてくださいね👍

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喉頭挙上のメカニズムについて

 まず、『舌骨上筋群』は効率的に働くためには、下顎が固定できている事が大きな条件になります!下顎が固定されていることで、下顎に対して舌骨が運動できます。この下顎の安定についてはセミナーで詳しく話してますので、詳しくは動画で確認してくださいね(^ ^)

 喉頭挙上のメカニズムとしては、

①嚥下圧が生成され、咽頭への感覚入力によって反射閾値を越える(下顎が安定した状態)
②感覚入力→嚥下CPG→嚥下反射誘発(舌骨上筋群の収縮)
③舌骨上筋群が収縮→『舌骨』が前上方に移動→甲状舌骨筋が伸長されることで収縮→甲状軟骨が挙上(喉頭挙上)

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 この図のように、やはり喉頭挙上にはまず『舌骨上筋群』の活動が大切になってきますね!臨床では、高齢や絶食期間が長く低栄養などの廃用症候群の影響で舌骨上筋群の筋萎縮も考えられますが、それ以上に『下顎が安定しない』『姿勢(舌骨下筋群)の影響で舌骨の挙上を阻害』する事が多いと臨床で感じてます。なので、講師が考える治療展開としては、機能解剖的にとても細く・小さい舌骨上筋群をどのように効率的に働かせ、収縮頻度を向上させていけるかが大切です!

*舌骨上筋群への機能解剖からのアプローチ(一部紹介)

 今回のセミナーで嚥下反射遅延改善の為の『舌骨上筋群』の治療アプローチとしては、まず下顎が安定させる事が大切だとお伝えさせて頂きました!

 下顎が安定しない原因としては
①頸椎・顎関節の問題(姿勢・関節)
②咀嚼筋の機能低下(廃用・麻痺・筋緊張の低下)
③舌の機能低下(舌の吸盤化機能)

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 この中で講師が臨床上で、舌骨上筋群を機能的に働かせるために下顎の安定性を向上させる為に治療するポイントが『舌』になります!文献でも舌の挙上運動に伴って舌骨上筋群の収縮も効率よく促せると紹介されています。このことからも舌の挙上運動や舌圧訓練こそ、一番の舌骨上筋群の治療になると考えてます^_^

 下図のように、舌が常に口蓋についており、下顎が安定することによって舌骨上筋群も常に働きやすい状態を維持できます。 

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 皆さん最後まで見て頂きありがとうございました👌セミナーレポートは、皆さんの臨床での手助けになればと思い継続して続けていきたいと考えてます!少しでも目の前の嚥下障害に患者様に繋がれば幸いです!

 次回の記事では、嚥下の基礎を定期的に発信できたらと考えてますのでフォロー宜しくお願いします^ ^

次回のセミナーでは、今回の続編の『舌骨下筋群』の機能解剖からの治療アプローチになります!姿勢と嚥下の関係性について細かく機能解剖から掘り下げていきますので、お楽しみに❗️

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*呼吸リハと嚥下を基礎から学び方は一度覗いてみてください^_^

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今後も摂食嚥下障害で苦しむ方をサポートする為に! 皆さんの臨床で役立つ摂食嚥下の情報を発信していきますので、宜しくお願いします!