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水は1日どのくらい飲めば良いのか?

ビヨンセがダイエットや美容のために1日3リットルの水を飲むようにしていることをVOGUE UKで語るなど、一般的に1日に2リットル以上の水を飲むと美容効果を期待できると言われ、多くのセレブやモデルが実践していることが知られています。

一方で、日用品、医薬品、食品などを扱う大手企業のKracieは、1日2リットル水を飲むことに対し、摂り過ぎてしまうとむくみや冷えの原因になるとして注意喚起しています。

果たして、1日の摂取水量は科学的にどのくらいが適切なのでしょうか。

1日2リットルをめぐり議論

国保健福祉省によってコーディネートされカナダ保健省と共同でおこなわれた研究「Dietary Reference Intakes: Water, Potassium, Sodium, Chloride, and Sulfate(2005)」は正確な必要水量を明記していませんが、一般的な総摂取水量として、

・19〜30歳の女性:1日に約2.7リットル
・19〜30歳の男性:1日に約3.7リットル

が目安だと述べています。この研究によると、私たちが1日に摂取する水分量の内訳は、約20%が食べ物、残りの80%は水やカフェイン入り飲料を含む飲料水です。これに基づいて飲料水から摂取すべき水量を計算すると、

・19〜30歳の女性:1日に約2.16リットル
・19〜30歳の男性:1日に約2.96リットル

が目安になります。

一方、「Drink at least eight glasses of water a day." Really? Is there scientific evidence for "8 x 8"?」は、健康な人は1日に約2リットルの水を飲む必要がないことを報告しています。

この研究では、「1日あたり2,000カロリーの食事を摂取している人の場合、1日に少なくとも8オンスのコップで8杯分(約2リットル)の水を飲む」という「8x8ルール」に対し、多数の研究、調査、記事がレビューされました。

結果として、1日あたり約2リットルの水を飲む必要性を示唆する科学的証拠が見つからなかったことを指摘しています。

ただし、とくに暑い気候で激しい仕事や運動するなどの特別な状況下では、8x8ルールが必要であるとも示唆しています。

1日の摂取水量に上限はあるのか?

水を摂取し過ぎると低ナトリウム血症(血液中のナトリウム濃度が低下して血液が薄まった状態)を引き起こし、水中毒(低ナトリウム血症によって頭痛、めまい、下痢などの症状が出る状態)に繋がる危険性があると言われることがあります。

ダノングループのミネラルウォーター「evian」は、1日に飲んで良い水の限界量を3リットルとしています。

果たして、1日の摂取水量に上限はあるのでしょうか。

前述した「Dietary Reference Intakes: Water, Potassium, Sodium, Chloride, and Sulfate(2005)」の研究チームは、摂取水量の上限を設定しませんでしたが、1日の総水分摂取量に制限を設けることを推奨している研究もあります。

Total fluid consumption and risk of bladder cancer: a meta-analysis with updated data」はメタアナリシスの結果として、ヨーロッパの男性とアメリカの居住者では、摂取水量の増加と膀胱癌のリスク増加との関係が観察されたため、

・アメリカの居住者で1日3リットル未満
・ヨーロッパの男性で1日2リットル未満

に制限するよう推奨しています。

ただし、この研究に含まれているデータの大部分は、現在と同レベルで水質が管理されていなかった時期に収集されたことから、実際の推奨量は上記よりも多くなる可能性があることを指摘し、適切な結論を導くには、より多くの新しいケースコントロールおよびコホート研究が必要であると結論づけています。

疾患がある場合は医師に相談を

疾患がある場合、1日あたりの摂取水量はどうなるのでしょうか。

ハーバード・メディカルスクールによると、甲状腺疾患、腎臓、肝臓または心臓の問題などの状態にある場合は、毎日コップ4〜6杯の水分を摂取すると摂り過ぎに値する可能性があるとしています。

とくに非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、アヘン剤、鎮痛剤、抗うつ薬など水分を保持する薬を服用している場合などは、適切な摂取水量を医師に確認するよう推奨しています。

ここまで見てきた研究を踏まえると、「水1日2リットル」についてどのような結論になるでしょうか。

まず気候など特定条件を除けば、1日3リットル以上を飲むことが推奨されている訳ではありません。ビヨンセの「水1日3リットル」を無条件に真似すると、水分の摂り過ぎにあたる恐れがあります。

その上で、さまざまな議論がありつつも1日2リットル程度の水を飲むことは、ある程度の支持を集めていることが伺えます。厚生労働省によると、人間は1日に2.5リットルの水を必要とし、多くの人は不足ぎみにあるため、あとコップ2杯分の水を飲むと1日に必要な水を概ね確保できるとしています。疾患がなく健康状態にある場合は、この指標を参考にしても良さそうです。

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