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ニコ動発の”NT札幌”がショッピングモール展示会をオススメする6つの理由

〜 流氷交差点 interview vol.3 〜

みなさんこんにちは、鎌田です。お待たせしました! 流氷交差点#3、ついにリリースです!
この『流氷交差点』は、サイボウズ(株)の西原さんが、地方で活動されるITクラスターのリーダー的存在の方へ勉強会やイベントなどコミュニティにまつわることを聞き、記録をしていくという壮大なプロジェクトです。
西原さんは2021年今年の夏に東京から北海道に移住されました。OSC北海道の実行委員長も務めるなど、北海道のITコミュニティ底上げに本気です。
さて、今回のインタビュイー(話し手)ですが、北海道札幌で電子工作をはじめとするモノづくりの展示会”NT札幌”を主催する湯村さんにご登場いただきました。彼らのプロフィールはこの記事の最後にございます。
湯村さんも石川県から北海道へ転職を機に住まいを移されました。NT札幌を立ち上げた時のお話、勉強会とはちょっと風味の違う『モノづくりの展示会』、有志コミュニティで開催していくその目的などを、西原さんが湯村さんへお聞きしました。
語りの全てをお聞きしたい方は、Podcastへ。そのPodcastの文字起こし全文をご覧になりたい方はこちらへ
それでは、さっくり読める簡略版(といっても約5000文字・NHKのアナウンサーだったら12分ぐらいで読めるそう)の当記事を、どうぞ!
あとがきに、鎌田のぷち感想文もございます。ぜひとも最後までおつきあいください。


そもそも”NT”って何の略?


── 流氷交差点#3 では、 北海道札幌市にある”NT札幌”の湯村さんにお時間いただきました。パチパチ! さっそくですが、”NT札幌”について軽く説明してもらって良いですか?

”NT札幌”はモノづくりの展示イベントで、札幌で活動しています。そもそも”NT”の略なんですが、ニコニコ動画(以下、ニコ動)ってみなさんご存知かと思うのですが、そのたくさんあるニコ動コンテンツの中に、モノづくりをしている人たちがいるんです。彼らがその動画を上げていると。そこから派生して、#ニコニコ技術部 というタグが生まれ、バーチャル組織的なものがつくられていきました。そこで盛り上がっているメンバー同士で「オフ会やろうぜ!」と、オフラインイベントを立ち上げる声が集まり、最初は大阪の高槻で、”NTMニコ技高槻ミーティング”という名称で始まりました。
名古屋や金沢など拠点が増えていったので「NTなんとか」にしようとなったのが始まりです。”NICO TECH”の略が一応発祥なのですが、実態は動画を上げた人に限定せずに、モノづくりを好きでしている人たちが出展に参加できるように間口を広げています。人によっては、「”な”んか”つ”くってみた! の略だ」と言います(笑)。

── もともとのイベントの一番最初はいつぐらいなんですかね?

一番最初はですね、2010年とかそれぐらいだったかと思います。ニコ動が2005、6年なので。

── そこからいろんな流れがあって、ようやく札幌でも2019年にスタートできたということなんですね。

正確に言うと、札幌でも一度集まってLT大会やるというイベントがあったのですが、それは一般向けの展示でもなくて、別の方がやられていました。展示イベントとしては、2019年に札幌では初めてやったという形ですね。

── 展示されたモノって、どういうものが多かったんですか? 編み物ありましたよね?

電子工作ですとか、VRでアプリケーション作りましたって人もいました。LEDの装飾品作った方や、技術や電気の関係のないハンドメイド作品、そう、編み物などもありましたよ(笑)。
縛りなくなんか作ってみたらなんでもOKで。

── みなさん何か”モノ”を持ってくるということは、道外の方は飛行機に乗せて持ってきたのかと…。

飛行機手配あるし告知は早めに

飛行機ですね。NTは全国でやっていて、北陸の方が多いのですが、旅行的な感じで来る人も多くて。道外からの参加者は他のNTも参加されていますね。12月、当日は大丈夫でしたが、けっこう雪が降ったんです。そしてシーズン的にはもうちょっと遅いと雪まつりで、秋の行楽シーズンでもないので、飛行機はわりと取りやすかったんじゃないかと思います。12月って普段ならあまり雪降ってないですけど、この時はけっこう積もっていましたね。
でも飛行機止まっちゃうリスクがあるんで、本来なら雪は避けたい。


── 当日は雪止んだと。狙い撃ちのように降ってくれたんですね。ちなみに初めて札幌で開催したというオフライン展示会、準備をスタートしたのはいつ頃なんですか? 運営も6人だったとか。

運営6人だし、この時私札幌に住んでおらず、石川県に居たんですよ。札幌に住んでたのは2.5人。一人は半分東京で半分札幌に住んでるという人がいて、週末だけ札幌に帰ってくる。あと私が旗振りをやっていたんですけれども、会場となったラソラ札幌さんとの交渉は現地の人にまかせて、10月ぐらいに1週間ぐらい居る時期があったので、もうそこで最終的な交渉や決定や確定などはその時に進めて。あとはSlackとビデオ会議で話をしていきましたね。

── 資料によると6月に始めて実質5ヶ月しかなくて、半年きってる。12月の1日ですよね、開催日。

そうそう。そうなんですよ、イベントは場所が決まらなかったら決まらないんで。まず札幌にどういう場所があるのか、ぼくも札幌から離れてその時は10年ちょっと経ってたので、今イベントやるならどこがいいのかと色々調べて、札幌だと「チカホ(地下歩行空間)」が良いんですけど、チカホはすごく値段も高いし、競争率高いし難しい。チカホでできればよかったんですけど、いずれはチカホでできるようにと思いつつ別で探し、ショッピングモールを探しました。家族連れとかに見てもらえるというのは、ショッピングモールでやるのはけっこう大きなポイントですね。

ショッピングモールを
超オススメする6つの理由

── 具体的にどんなことがメリットなんですかね?

石川県の加賀市、最初は加賀の駅前のショッピングモールでNT加賀が開催されました。メリットは、いろんなお客さんが来るというのもあるし、冷暖房完備されているし、綺麗なトイレもあるし、お腹空いたら食料はスーパーや総菜屋さんで買えるし、なにか壊れたり足りないものがあったら、100円ショップですぐ調達できるし。ショッピングモールでやるのは、わりといいことずくめだなと思っているので、最近はこういうイベントはショッピングモールをおすすめしています。

── はじめての勉強会に朝早く行って、会議室に近寄ってみても一般の人がいなかったら、帰るという人もいるだろうから。

そうそう。知り合いがいるイベントと聞いて行っても、その人がいなかった場合無駄足になる。ショッピングモールだと人が誰かと話をしてて忙しそうだったら、他で時間が潰せていつでも戻ってこれるし。

── それこそご家族に「お前は何しに行くんだ?」とか言われなくて済む。勉強会参加の一つのハードルですよね、土日とかに子供の面倒みないのかと。それと、子供が立ち寄るという点でもメリットありますね。とくにモノの系統って、普通のソフトウェアの系統よりわかりやすいと思うから、そういう子たちに刺さりやすいんですよね。

そうなのですよね、まさに。学校の勉強だけだと、こういうのに触れる機会ないし、興味持つきっかけがないと思うので。実際に自分で、たまたまでも何か見たことがきっかけにして。科学館とか行くような子供だったら良いかもしれないけど、みんながみんなそうではない。
しかし、将来的にものづくりやプログラミングとかこういう道に興味持って欲しいと、運営も出展参加者も同じように思っていることが多いです。
ショッピングモールで家族連れとかに見てもらえるというのは、けっこう大きなポイントですね。


★メリットまとめ

1 いろんなお客様が見てくれる【集客】
2 100円均一で緊急な部品を購入できる【調達】
3 ランチの場所に困らない【栄養補給】
4 駐車場や駅チカなど【交通の便】
5 家族の理解を得やすい【家族計画】
6 子供たちの未来【プライスレス】



 Cluster、豊かな喜怒哀楽
表現のイロイロ

── オンラインの話になりますが、「cluster(クラスター)※」でのイベントは、どうでしたか?

去年いろんなイベントが現地でできなくてオンラインでやったと思うのですが、NTもZoomでやったり、ニコニコ動画を上げてそれを見る会をしたり。VRChatですとか、いろんな形があったと思うのですが。2020年のNT札幌は展示会をバーチャルでやるのは無理だなと。よくZoomでインタラクティブでやっているやつもあったんですけど、やはりコミュニケーションが難しくてギクシャクしちゃったりして。
割り切って完全にプレゼンテーション形式のイベントにすると舵を切り、イベント感を出すためにclusterを使うことになりました。
clusterご存知の方もいるかと思うのですが、(参加者が)アバターを着て、バーチャル空間の中に入るとスクリーンがあって、そこでプレゼンテーションをやるという形。
見る情報量でいったらYouTubeを見ているのとそんなに変わらないのですが、自分のアバターがあることで、動いたり、隣に一緒に見ている人が居たりする。バーチャル空間の中に入り込むことでただYouTube見ているよりもさらにプラスの臨場感があったりするのが、clusterの面白いところだと思います。

※ cluster : バーチャルイベントプラットフォーム(仮想的なイベント会場)。3D技術を用い、アバターで観客側も臨場感を持つ、現実を模したイベント用コミュニケーションツール。 https://cluster.mu/

── Zoomだと誰かひとりがリアクションで拍手とかクラッカーとか押すと波及すると思うのです。ですが、YouTubeなどの視聴型はそこの部分がたいしたことないかなと思うんです。clusterの中だったら、見えるじゃないですか、音も聞こえるし。リアルのイベントで「ヒューヒュー」やんないですもんね。

人気声優さんをゲストに呼んで
集客効果増?!



── Zoomだと誰かひとりがリアクションで拍手とかクラッカーとか押すと波及すると思うのです。ですが、YouTubeなどの視聴型はそこの部分がたいしたことないかなと思うんです。clusterの中だったら、見えるじゃないですか、音も聞こえるし。リアルのイベントで「ヒューヒュー」やんないですもんね。

リアクションの種類も多いですしね。拍手とか笑ったりとか、クラッカー鳴らしたりとか、サイリウムいろんな色振れたり。できるリアクションが多いので、むしろリアルのイベントよりやりやすいかなと。リアルのイベントだと「笑う」のと、せいぜい「拍手」ぐらいだと思うのですけど、clusterだったら色んなリアクションできるので。

── むしろ発表者は、リアルのイベントよりたくさんリアクション受け取れるんじゃないかという。

オンラインもclusterで入るだけでなく、YouTubeLiveやニコ生でも見れるようにして、clusterのほうは50人とかそれくらい居たのかな。YouTube今見たら再生数1500ぐらい見ていますね。 

── めちゃめちゃありますね!(笑)!

めちゃ見られていますね。今回声優の小岩井ことりさん目当てに見た人は多いんじゃないかな〜って気がするんですけど、1500って、思ってたより多くてびっくりしました。

──  ハードウェアものを、オンラインで展示してくださいって言われても迫力が伝わらなくないですか?

学会のデモ発表とかもオンラインでやっているんですけれど、Zoomとかで見せたり説明したりとかするんですけど、いきなり1:1が始まっちゃったりするので、Zoomだと。むちゃくちゃハードルが高くて。
普通の展示(オフライン)だと、人だかりができてたりすると誰かに説明しているので、一緒に横で聞くみたいなのができるんですけど、Zoomは情報ゼロの状態から1:1が始まるので、難しいんですよね、それなら聞かなくていいかとなってしまうんですよね。

──  ちょっと気になるから覗いてみるか、ってのぞいてみたら「捕まった」みたいな(笑)。

1:1になって抜け出せないってなっちゃうんで

──  展示系はどこもかしこも苦戦しているというか。重さや動きの説明とかされてもっ...... ていう人とかいるでしょうしね。反応がわからないから伝わらないんじゃ、というのも多いだろうし。参考までにお聞きしたいのですが、海外の Maker Faire も何個か行かれたことあるんですね。

Maker Faireは、いろいろ行ってます。

ものづくり海外イベントの
クレイジーな面白さ

── 良し悪しとかあります?

これは場所ごとに確かに違うんですけど、アメリカとかベイエリアには2回行ってるんですけど。バーニングマンとかいうイベントあって。火を吹きながら砂漠を横断するというイベントがあって。ちゃんとした背景はわかってないんですけど、火を吹く超巨大なマシーンがあったりとか。あとはいろんな乗り物があって、超背の高い乗り物、「竹馬」とか履いて練り歩いてる人とか。カップケーキの形をしたゴーカートに乗って移動している人とか居て。
日本ではそういうのが禁止されているので、そういうところはけっこうクレージーだなって思いますね。

── 良い意味で(笑)。

バンコクだとNight文化で、ある程度涼しくなった時間に活動したい。なので、夕方に始まって夜21時とかに終わる感じです。
当然、後半のほうが日が落ちているので後半のほうはなにか光るものを持って練り歩くパレードがあって、あとは電球がテントにはいっぱい貼ってあるし、光ると面白いものをみんな持っている。前半は明るくて、後半だんだん暗くなるんで、どの明るさにも応じてきちんとみれるように調整されている。その辺が面白い。
僕が展示していたのは、キーボードにプロジェクションマッピングして、キーボードを押すと画像が出てくるみたいなやつなんですけれども、プロジェクションマッピングは明るい場所でやると何も見えないので、囲いをつくって、影を作って。明るい時間帯でも影を作って作品を見えるようにというのはやっていましたね。

── 札幌だと外の空間をうまく使って、雪と何か、みたいなのもできそうですよね。

雪を使って何かやりたいけど、難しいですよね。

いつか真似してみたい
「氷のプロジェクションマッピング!」

── 微妙に電波が届かないとかね。雪相手だから。そういう課題もあるかもしれないけど。

けっこうNTって「作ってみた」というポリシーというか、テーマでやっているんですけれども、作ってみたの究極系って、雪像づくりが作ってみたの際たるものではないかなと思っているんで。

── なるほど(笑)。

道民の人は知っていると思うんだけど、雪まつりって大通公園でやるんですけど、市民雪像というのがって、あれ一般公募で市民が2メートルぐらいの雪の塊渡されてそれを削りなさいって、雪像を作るんですけれども、あれとかまさに「雪像で・なにかつくってみた」なんじゃないかと。ゆきだるまづくりとかイベントするのも面白そう。

── NT札幌、札幌感を出すために「雪」を使う!

せっかく北海道でやっているんで、そういうのもやりたいという願望もあります。
あと、中国の北(ハルビン市)で、氷祭りがあって、氷の像の中にLEDとか入れて光るとか。日本でやるものとは規模が違う。それとかはすごい面白そう。冬ならではのイベントができたら。

── これは日本だったら札幌とかがやらないといけないですね?

そうそう。プロジェクションマッピング、最近めっちゃやっていますけど。ここまで埋め込んだやつは、他はやっていないですね。

── 雪だから投影なんですね。投影だから映えるんだね。なるほど旭川だと氷彫刻大会の世界大会が毎年ある。買物公園通りに作った氷像がばーっとあって並ぶ時期がありますけど、ああいうのとディテールが細かいのとかが組み合わさったら面白いだろうな。

屋外ならまだイベントもやりやすいかもしれないですね。


対談した人:

湯村 翼(ゆむら つばさ)
北海道情報大学 情報メディア学部 情報メディア学科 准教授。専門は情報科学。人とコンピュータの新しいインタフェース、物理空間センシングによるデータの収集などの研究に従事。ものづくり展示イベントNT札幌を運営。メイカー系ポッドキャスト品モノラジオを配信。

西原翔太(にしはら しょうた)2010年頃より北海道(旭川,北見,富良野)で中高生の学生を中心としたITコミュニティ活動を展開。2019年に東京都小平市へ移り同様の活動を展開。2020年5月サイボウズ株式会社に入社、コネクト支援チームにて、地方ITコミュニティ活性化につながる活動を模索中。元工業高校教諭。



おわりに

ショッピングモールで展示会…。想像するだけでワクワクしますね! 今回はイラストに気合が入りました(笑)。
確かに、家族の理解はかなり得やすいとおもいます。やはり勉強会だと、お子さんの面倒をどうするのか、とくに女子エンジニアは本気で悩んでいますよね。昔、お子さん対応可の勉強会の運営に携わったことがあって、お母様方から非常に感謝してもらった記憶があり、そんなことを思い出しました。
もちろん、お父様がお子さん連れてきたパターンもありましたよ。
ショッピングモールでITで、電子工作なイベントが開かれたら、それこそ家族連れで参加できますし、家族関係は夫婦だけでなく子供含めwin-winになりますね。
今回は運営の裏話(本編ではだいぶカットしたので、もっと聞きたい方はPotcastか文字起こしのほうへ)が盛りだくさんでした。北海道開催をリモートで仕切るということをやってのけた湯村さんすばらしいです。
NTの”「なんかつくってみた」人が展示できる”というポリシーも間口が広くて、ITや電子工作だけに絞らないことも、敷居が低く、参加の意思があるけど迷っている人や技術に自信のない人にとっては、ありがたいんじゃないかと思います。
湯村さん、石川県から札幌へ引っ越されて、しかも社会人やりながら博士号を取られたという努力家。博士号取得話を以前から見聞きしていてましたが、ご多忙の中こんな素晴らしいイベント運営もこなしちゃうバイタリティもある方とは…、札幌の未来は明るいですね…!(石川県の人すみません)。

このイラストと記事を書いた人:鎌田広子(@kamapu)


この記事を、以下のライセンスで提供します
:CC BY-SA

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または、
サイボウズ株式会社 開発本部 コネクト支援チーム (西原・風穴) まで。
問い合わせ先:<insideout{at}cybozu.co.jp>

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