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予告編冒頭で何の映画かわかってしまった40年前の本のこと

映画館に行った。
キングダムの新作を見るため。

上映前には流れる何本かの予告編。
そのうちの一作品の予告編。

切り替わった映像が流れた数秒後に。
戯作者 滝沢馬琴
という文字が画面に出た、その時に。

えっ? もしや?!

と、作品がわかってしまった。
そのことに、自分でも驚いた。

続いて流れる
葛飾北斎
という文字。

「虚」と「実」が交差する。

戯作者、滝沢(曲亭)馬琴が28年書き続けた
失明してもなお、代筆を頼んで書き続けた
それが、「南総里見八犬伝」

馬琴の戯作のいくつかで挿絵を描いた北斎。

二人は親友...親友?
腐れ縁?


山田風太郎作「八犬伝」原作映画の、予告編だった。

今、公式サイト見て、掲載されてる予告編見たんだけど。
さっき映画館で見てきたのと、出だしが違う気がする。
公式サイトに載ってる予告編は、冒頭で伏姫の光の球が出てくる。
八犬伝以外ないじゃん。

さっき映画館で見たのは、八犬伝のシーンは馬琴と北斎の後に出てきたような。

まあ、そこは別にいいか。


ともかく。
馬琴と北斎のかけあいってところで、山田風太郎の八犬伝が映画になったとわかった。
いやあ…40年前の小説よ。
もちろん、持ってるけどね。


稀に見る頑固ジジイな馬琴と、これまた稀に見る変人の北斎。
彼らの「実」世界を描くパートと、
作中劇つまり「虚」世界の八犬伝を描くパート。
これが交互に語られて、どっちも大変面白い。
そんな小説だ。

え…まってなにこれ、上下合本版440円って、めっちゃ安くない?
Amazonポイントで払えちゃうじゃん。
...で、ポチってしまったよ。
宮田雅之様の切り絵が表紙の昔の文庫本持ってるけど、いいよもう。



めっちゃ好きな本だから、現代に蘇って映画になるのは、嬉しい。

でも。
ちょっと、怖い。

この本を初めて読んだ頃は、完結させるのに10年かかった小説を書いてる時。

ここに出てくる作家馬琴の執念に共感した。
というより、「こうありたい」とさえ思った。
これほどの執念で物語を編み出すことに。
そこに人生賭けることに。

当時まだ、北斎を「心の師匠」とまでは思ってなかったのだけど。
この本の中に出てくる北斎の人間像は、すごく好きで。
想像で書かれたものなのに、北斎ってマジこんな人...みたいに思えるくらいだった。

虚の世界の方は、内容は知っているからまあ、それほどの感動はなかったんだけど。

実の世界の物語には、とにかく終始惹きつけられた。


読んでから40年…
今のわたしは、「物語を編み出す」ことに対してのあの頃の熱意には、遠く及ばない。

なくなった、とは思わない。
今も、どこかには、ある。

回路が切れてるのか、どこか錆び付いてるのか。

でも
熾火を掘り起こしたい気持ちに、なる。


映画は10月25日封切りらしい。
見に行こう。
いや、行かねばならん。

その前に、改めて合本版を読もう。


No ART No LIFE!
芸術なくして人生なし

ここに至った今、この時に。
この本が映画になって封切られる。

無意味なわけがない。

偶然だとしても、無意味であるわけがない。

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