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【相談案件】折れそうな心;メンタルぎりぎりの韓国人の部下をどうすれば?

「韓国人の部下が、休みがちになってるんです。韓国人のメンタリティがわかんない。もう、どうしていいのやら・・」

LINEに友人の美希さん(仮名)から、SOSが入り話を聞くことに。
心理学に詳しいわけでもないのですが、韓国で会社を経営していたこともあり、経験談が役に立つかもと相談に乗りました。

いきさつ

世界を代表するマルチナショナルな食品メーカーの開発部門。辞めそうになっている入社3年目韓国出身で29才のパクくん(仮名)は、今年、製造現場から開発部門へ異動してきたばかりだと言います。
現場から開発へと順調なキャリアパスのように見える考えられた人事異動と思うのですが、そこで何が起こっているのでしょうか?

本当は、優秀な人で伸び代はまだまだあるので、どんどん頑張って成果を出していって欲しいのに。。と相談者や、その上司も心配しているが、何しろ外国人だから何かあるのか?それとも個人的なメンタルの話なのか? 初めての経験でどうしていいかわからない、という状況。

心が折れそうな韓国人の部下が、、

最近休みがちになっている。仕事に対してもう少し任せたいが、全然独り立ちしてくれない。上司としては、「そのぐらいは、もう自分でやってよ」と言いたいぐらい、甘えてくる。パクくんの独り立ちのためにも、ちょっと突き放して考えさせるようにしていたとのこと。
そうしたところ、「自分でやっていける自信がない」とか言い出して、最近は、もう出社拒否に近い状況だと。

原因は何なのか、仮説を立ててみた

製造現場から開発部門へ異動してきて、何が変わったのか? ポイントはそこだと思いました。詳しく話を聞いてみると、開発部門は「裁量労働制」だそうで、成果を出すことがミッションで、働き方は比較的自由なのだそうです。研究開発部門としては、のびのびできそうな環境で羨ましいすね。

しかし、裏を返すと、入社3年目で異動してきたパクくんにしてみれば、なかなかうまくいかなかったり、成果につながらなかったり。とはいえ、仕事量は膨大だから、日々遅くまで仕事に追われているそうです。「裁量労働制」なので、残業代が全てつくわけでもなく、どれだけ働いても給料が上がるわけでもない。

美希さん:「仕事がうまくいかない自分に自信を失っているのでしょうか? だから、細かいことまで指示されようとしてくるし、弱音を吐いてくる。そして、仕事が面白く無くなって辞めたくなってるのでしょうかね? だとしたら、メンタル弱すぎじゃないですかね? そもそも。」
と若干イライラしているとのこと。

私:「まあ、確かにそうだけどね。でもそれってどちらかというと、どれだけ働いても給料(得るもの)に反映しないことの方が問題なんじゃないの?」

美希さん:「まあ、それもあるけど裁量労働制は、そういう会社の仕組みだから、どうしようもない。若手は確かに、仕事きついのはわかるけど、みんなやってることだからね。そんな、不夜城みたいなブラックなわけでもないのよ。流石にそこは大手なんで、ちゃんとしてるんだけど。」

私:「そうかー。多分だけど、韓国人の考え方として、仕事がきついとかというよりは、会社の裁量労働の仕組みもわかった上で、自分でもどうしようもない状況に陥ってしまったという、パクくん自身のいまの悲しい境遇に心が折れてる(失望してる)ような気がする。つまり、今回、異動によってこれまでうまくいっていた仕事ライフから、とてもつらい環境の職場に移ってしまったが、自分も含め絶対にどうすることもできないことがわかって、このままずっと辛い生活を送らなければならないのかーと、自分の置かれている不運な人生に思いつめちゃっているんじゃないかな? 韓国の人って、そういう自分の不運な境遇みたいなのに敏感で、自分がそういう立場になってしまうことをものすごく悲観する感じだよね。

なんでなんだろう?と思うこともありますが、そういう文化なのかな? というか、日本人が逆に、そういうところに鈍感というか、「みんなそうだから」というだけの理由で速攻であきらめきれる、我慢できる特殊な能力があるんじゃないかと思ってしまいます。

もし、これが原因なのであれば困ったことになりました。何しろこんな大手の人事制度そのものの問題なので、もはや誰がどうすることもできないわけです。

作戦会議。1時間後に面談が迫る

美希さんも立場上、美希さんの上司から、パクくんを辞めさせないようにという方向でよろしく!となっており、まさに板挟み状態。

美希さん:「私の手には負えんってことじゃない? どうしようもないよね。今日、パクくんと面談これからするんだけど。。」

私:「マジか。それはどうにかせにゃね。ただまあ、もし原因が不運な自分パターンなんだったら、そこから抜け出す光の道を見せてあげないと、回復していかないよね。」

美希さん:「そんな道あるのかな?っていうか、そこに悩んでるのかー。でも、よくよく彼の発言を考えると、確かにそういう感じにフィットするわー。」

私:「つまり、今は厳しい境遇だけど、これを頑張っていれば、将来こういった見返りがあるよというサクセスストーリーの例を話してあげるとか。ポイントは、ちゃんとした「見返り」につながるということを見せてあげることが大事。なんとなく、偉くなれるよとか、仕事楽になるよとかだと、外国人は響かない。具体的に、今の仕事への時間投資が、将来の給料や次の異動の際の昇進の場合にどれだけよくなるか(この制度を実は外国人の感覚で持ち合わせてない)などを誰か身近な人を例えに話してあげて、決していまのあなたの置かれた境遇は悲観するようなことではないとやさしく教えてあげる。これじゃないかな。」

美希さん:「そういうものなのかなぁ。私たち世代じゃあ、考え方甘いよそれって思っちゃう」

私:「確かにそう。でも、それって僕らの世代(40代)の価値観だし、また日本人特有の感覚だとしたら、世代の違う外国人にとっては、全く理解できないことなのかもしれないしね。」

美希さん:「世代と異文化が掛け合わさったら、もう全くわからんw」

いったん応急処置

いったん、パクくんの今の不満や主張をヒアリング。結果はやはり、今の自分の境遇が良くなるために、仕事を減らして欲しいという働き方改善の話が中心でした。

それをまるっと全ては飲めないし、彼自身の甘えの部分ももちろんある。なので、渡していた裁量の幅を狭めてきちんと労務管理しつつ、もっと向き合ってきちんと仕事できるように見てあげながら、溢れた仕事は引き取ってあげるという応急処置をとることで負担を軽減してあげることにしたそうです。
そして、美希さんは、「弱音受け止め係」で、美希さんの上司が「褒めて励ます係」で役割分担し、彼の折れた心の修復に取り掛かるそうです。

次は、「今頑張れば、こんな未来が待っている」的な話を、美希さんの上司からきっちりやってもらう予定だそうです。

まだ、めでたしめでたしと言える状況ではありませんが、今回の一連の話が、実は、美希さんの上司に響いたらしく、さらにその上司(役員)にまで連携して、職場の働き方改善に前のめりになり始めたとのことです。

今回、外国人マネジメント相談は、結果的には、上司のお悩み解消になったという、サイドエフェクトにばっちり効いたという「落ち」のお話になりました。美希さん的には、どっちに転んでも嬉しい話でよかったよかった。

今回の異文化ピットフォール

根本的なところで考えると、やはり今ちょいちょい話題になっている「メンバーシップ型」雇用と「ジョブ型」雇用の制度の違いに外国人の方がフィットできてない問題が発端のような気がします。
職種そのものが変わってしまうほどの異動に対して、外国人の職業観がマッチしないことの違和感から始まっていると思われます。
そして、「人事異動」というトリガーによって、この異文化ギャップの症状が出たのではないかと分析します。

裁量労働制というところに始め着目してましたが、その環境の中での日本人の長時間労働に、外国人から見たら「働きすぎ」と思われているように見えます。しかし、それは全てに当てはまるわけではなく、頑張る外国人は、日本人より働いているという話も聞きます。OECDによると日本の平均労働時間は、22位ぐらいで際立って高いわけでもない(働く立場によって違う)(※)。働く時間の不満は、日本人同士でも価値観はそれぞれです。この対応は、異文化比較の範疇には入ってこないと思います。

日本の終身雇用型で総合職人事体制という特殊な人事制度「なんでもやっていく」という働き方がベースとなっている日本の職業観に、外国人の「ジョブ型」で、やるべき仕事をして、責任をはたし、報酬が紐づいているという職業観のギャップが、「人事異動」というイベント出現で表面化し、メンタルに直撃したのではないかと分析します。

日本の「人事異動システム」は、労働者の人生を狂わす強力な破壊力を持っていると思う。「異動で飛ばされる」とか「全く畑違いで」とかのパワーワードは、日本でしかありえない職業感なのかもしれません。

しかし、日本の人事が柔軟にポジティブに活用できれば、活躍できてない人に違う部署で再チャレンジしてもらう、経営方針でなくなってしまうポジションの人にも、別のポジションについてもらうことで解雇を減らすと言ったエフェクティブな面も持ち合わせている制度だとも言えます。

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※ Refer from 日本の労働時間は世界に比べて長い?短い?本当の問題点とは  https://workstyle.ricoh.co.jp/article/workingtime.html

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