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新国立競技場は誰のために設計されたのか[観察スケッチ]

新型コロナウイルスの影響で家にいる時間が多いので、山手線の乗っているときに電車の中で見た、新国立競技場[隈研吾建築都市設計事務所+梓設計]の観察スケッチをやってみました。

インスタグラムで観察スケッチのメイキング動画を発信しています。
こちらもよろしければご覧ください。

◾️競技場という建築に対する隈研吾の想い

1964年の東京オリンピックで丹下健三や片山光生の設計した競技場の造形美は世界に認められたが、その一方で巨大なコンクリートや鉄の塊である競技場が彫刻としては美しいのに近隣の人を寄せ付けにくい雰囲気を放ってしまっているのに隈さんは疑問を持ったそう。
そういった設計背景を知ってから様々な場所をスケッチしてみると、この競技場は驚くほど“近隣の住民や下を歩いている人”に配慮して設計されていることに気がついた。

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片山光生が設計した旧国立競技場。

◾️下から“体感する人”の為だけに設計された競技場

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デザインのターゲットは近隣の住民と実際に訪れた人々。日本で最も流通していて他の場所で見ることの多い馴染みのある105角の木材を三つ割りしたルーバーをコンコースの軒裏に粗密を分けながら配置することで日本らしい細やかな表情を作る。京都の五重の塔から着想を得たという木ルーバーが4層に渡って積層している風景は航空写真や上からの視点では見ることができない。

その為この競技場を他国のスタジアムと同じような斜め上の視点で撮ると屋根に変わった形のギザギザ天窓がついているだけの白い普遍的な競技場に見えてしまう。旧ザハ案と最も異なる所はココだと個人的に思った。

建築の良さを外観の造形美や航空写真で見た時のプロポーションで判断する人は多く、設計案が公開されたときも「普通すぎる」「便器みたい」などの批判が見られた。

が、隈研吾はそういった批判が来るのが分かっていて、それでも造形のインパクトや奇抜なデザインをせずに愚直に、このスタジアムを下から体験する人の為に厳しい世論や予算の中で設計したのだと思う。

なぜなら、この競技場の歴史は東京五輪だけでは終わらず、その後も近隣の人々と良い関係を築いて共に歩んでいく為の競技場にしたかったからだろう。

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“隈研吾のデザイン”は、オリンピックが終わった後にこそ真価を発揮する。
のだと思いました。

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