スライド4

今後の業界予測

マジック業界の過去と現在

 マジック業界の今後を予測するため、またその予測の確からしさを評価するためには、マジック業界の過去と現在を軽く説明する必要があるだろう。
 日本におけるマジックの起源は奈良時代まで遡るとも言われるし、少なくとも江戸時代には手妻(てづま)という大衆演芸として、今でいうマジシャンが職業として定着していたとも言われており、業界の歴史は長いが、その割に、あまり社会に浸透していない節がある。2018年現在においてでも、マジックの市場規模は、100億円とも10億円とも判断できないほど、小さな市場であるように思われる。
 一方で、それよりずっと後から生まれたスマートフォン業界は、わずか数年の間に急成長し、その市場規模はマジック業界とは比べ物にならないほど巨大なものとなっている。端末費、通信費、アプリ課金費などは当然のこと、スマートフォン広告市場という狭い分野に絞っても、その市場規模は5000億円と言われ、マジック市場よりもはるかに大きい。

 このように、スマートフォン業界が歴史は浅くとも先進業界であるのに対し、マジックは歴史こそ長いが、限られた者のみが習得し、限られた者のみが鑑賞できる伝統芸能としての要素が強く、一般人から見ればマジック業界は後進業界であると言えるだろう。
 マジック業界が、歴史があっても後進業界である理由は、ひとえにマジックの方法論の秘匿性にあるだろう。マジックがエンターテイメントとして成り立つためには、タネを知られるわけにはいかず、業界を大きくしたいがタネを広めたくない、という二律背反の要求に対して、なかなか正解が出せずに来たというのが、この現代という時代であるように思われる。

 と、掻い摘んで説明すると、このような歴史がマジック業界にはあるわけだが、周知のとおり、現代という時代は、とても変化の速い時代であり、その変化の波はマジック業界にも押し寄せていると言ってよいだろう。それこそスマートフォンの発展に牽引される部分もあり、あらゆる情報は誰の手にも届くようになったので、今まで秘匿とされていたマジックの秘密も、あらゆる人々の手に届く日も遠くはない。
 今という時代は、かつてないほどの速度で、マジック業界が変化している時代でもあるのである。
 ここでは、今後おそらく大きく成長するであろうマジック業界において、マジシャンはどのように考え、どのようにして立場を確保し、どのようにして顧客に求められ、どのようにして成功すべきなのか、そのチャンスの掴み方を考えてみることにする。


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