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今日も誰かの緊急事態。そして「家は健康にいい」。稲葉剛さんインタビュー②

新型コロナウイルスの影響で生活や経済の危機が日増しに深刻化する中、これまで長年路上生活者や生活困窮者の支援に携わられ、今まさに現場の支援や政策提言に奔走されている稲葉剛さんからお話を伺うことができました。

こちらの記事は後編ですが、後編単独でも読める内容になっています。前後編どちらから読んでいただいたても大丈夫ですので、ぜひ合わせてお読みください。

前編記事:「危機に弱い社会」を作ってきた。新型コロナと新自由主義の帰結。稲葉剛さんインタビュー①

後編ではネットカフェの休業による住まいの喪失などにもつながる「住まいの貧困」「路上生活一歩手前という状況の広がり」「貧困と健康の結びつき」といったテーマについて伺っています。この下にある目次をぜひご覧ください。

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稲葉さんは一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事、立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科客員教授、住まいの貧困に取り組むネットワーク世話人、認定NPO法人ビッグイシュー基金共同代表などを務められています。プロフィールの詳細はこちら

なお、インタビューの内容は4月9日の14時ごろにリモートでお話した時点のものとなります。

福祉の視点がない日本の住宅政策

――現在の状況の中で、家賃滞納による追い出しやネットカフェの休業という形で「住まいの貧困」が可視化され始めているのかと思います。そもそも家賃は生活費の中でも相当の割合を占めますよね。

ヨーロッパでは「福祉は住宅に始まり住宅に終わる」、人々が安心して住み続けられるということを基本においた福祉政策というのが発展してきたわけですが、それとは逆に、戦後の日本では福祉政策と住宅政策がバラバラに展開されてきました。日本の場合は、福祉政策は厚生労働省、住宅政策は国土交通省なんですね。

戦後の日本の住宅政策は、ある意味、土建国家を支えるための政策でした。作る側の住宅政策というのが行われてきていて、中間層になるべく持ち家を持ってもらう。不況になれば、住宅ローン減税をやって、どんどん家を作ってもらって、景気対策としての住宅政策をやっていく。

そこには福祉的な視点が欠けていて、民間の賃貸に暮らしている人たちに家賃を補助するという制度はずっと生活保護しかなかった。そこに住居確保給付金が加わって、今回ようやく対象も拡大して、少しずつ動き出し始めてはいるんですけれど、住宅政策と福祉政策を融合していくという居住福祉的な発想が必要です。(*住居確保給付金の詳細についてはインタビュー前編を参照)

#StayAtHome ということが言われていますけど、そもそもホームがない人たち、あるいはホームを失おうとしている人たちをどう支えるのかということをコロナ対策の一つの軸としていくべきだと考えています。

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緊急事態宣言の発出後に池袋で行われたNPO法人TENOHASHIのお弁当配布・相談会(写真提供:稲葉剛さん)

――福祉政策と住宅政策がうまくリンクしている国というのはどんな感じなんでしょうか。

国によって色々違うんですが、公的な性格を持っている住宅が多いですね。行政が直接作っている公営住宅もありますし、ドイツなどでは公的機関が融資をしたり補助金を出して市民セクターに住宅をつくってもらう社会住宅というような取り組みもあります。

そういう公的な性格を持った住宅というのが、ヨーロッパの福祉国家と言われているところだと大体2割くらいはあります。公的住宅というのは当然家賃が低いので、民間の賃貸住宅の市場家賃を押し下げる効果もある。

日本の場合は、公営住宅とかUR住宅とかを全部ひっくるめても全体の7%くらいしかありません。だから、私がずっと言ってきたのは、公的住宅がセーフティネットにすらなってないということです。

特に東京の都営住宅なんかは当たった人がラッキーというだけの蜘蛛の糸状態ですよね。糸でしかなくて網になってないという状態です。

だから民間の賃貸住宅市場への影響というのもほとんどない。民間の賃貸住宅市場はある意味野放しで、高齢者や障害者、外国人、LGBTなど、社会的に弱いの立場の人たちに対する入居差別が蔓延しています。家賃の面でも全然コントロールされていません。

戦後の日本社会の中ではそういう民間の賃貸に暮らすのは若い頃の話だと。若い頃は4畳半の部屋で苦労しても、そのうち年をとるにつれて、特に正社員として会社に入って安定した給料を得られれば、終身雇用・年功序列ですから、そこで住宅ローンを組んで、マイホームを確保して、住宅ローンを払い続けて、35年ローンとかを払い続けて、定年になる頃に払い終える、めでたしめでたしと。

よく「居住の階段」とか言われますが、日本型雇用システムと一体となった日本型の「住宅すごろく」というのがあった。けれど、それはとっくに壊れていて、にも関わらず政策の転換が行われてこなかったというのがここ20年くらいの状況です。

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稲葉さんのおすすめ本その2。早川和男『居住福祉』では住宅政策に福祉の視点を取り入れることの重要性が説かれている。「福祉は住宅に始まり住宅に終わる」。(おすすめ本その1は前編記事で紹介しています)

今日も誰かの緊急事態

――雇用のシステムが変わっている中で住宅のシステムは大きく変わっていない。日本では雇用の不安定化が住まいの貧困に結びつく構図がありそうですね。

そうですね。リーマンショックのときには派遣労働者など非正規労働者の問題がクローズアップされました。

けれども、ここ数年は、雇用されていない、雇用という形を取らない働き方が広がっています。去年ケン・ローチの『家族を想うとき』という映画が公開されて、それに関するインタビューを受けたりもしました。

*私も『家族を想うとき』に文章を寄せました。「不自由な自営業者」たちが追い込まれる貧困の泥沼 

政府も「多様な働き方」ということで、経済産業省が音頭をとってですね、広げてきたというところがあって。

形式上は個人請負だったりとか、フリーランスだったり、自営業だったり、そういう働き方が広がってきているわけですよね。そういう人たちが今回非常に大きな打撃を受けているんですが、その人たちに対しての保障がほとんどない。

もちろん雇用関係で働いている人たちでもあまり保障を得られていないんですが、それ以上にフリーとか自営業で働いている人たちは「自己責任論だからしょうがない」と言われがちで、ご自身もそれを内面化している場合もあります。ですから、今回の危機とか収入減に対してもなかなか当事者の間から声が出にくいというのはありますね。

――問題があってもなかなか可視化されづらいということですね。稲葉さんが様々な領域の団体と組んで緊急の宿泊費を支援する「東京アンブレラ基金」を昨年立ち上げられたのにも、問題を可視化するという意図があったのではと思います。そのときに私も「今日も誰かの緊急事態」という言葉を一緒に考えさせていただいたのですが、まさかこんな形で「緊急事態宣言」ということになるとは思ってもいなかったですね。

本当にそうですね。東京という街の中でも、日々住まいを失っている人がいて、従来の路上生活者は中高年の男性が中心だったんだけれども、近年ではやっぱり若年層とか、女性も含めてですね、外国人の方、LGBTの方、様々な人たちが実質的なホームレス状態にあります。

路上生活にまではなっていない場合でも、「ここは自分の家ですよ」と言える安定した住まいを失った状態にある人がたくさんいる。けれども、そういう人たちが置かれている状況というのはなかなかわかってもらえない。それで、「今日も誰かの緊急事態」という言葉を使ってきたわけですが、今回は「みんなの緊急事態」になってしまった。

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「路上の一歩手前」の人が大勢いる社会

私が90年代にホームレスの方の支援を始めた頃というのは、図書館に行ってホームレス関係の本を探そうと思っても「社会問題」の棚に無かったんですよね。「社会病理」っていう棚にあるんです。「実録ヤクザ抗争」みたいな本の隣にホームレス問題の本がある。そこに寄せ場とか山谷とか釜ヶ崎の本も置かれていたりするんですけど、社会病理という見方だったんですね。

要するに、社会のいわゆるマジョリティだと自己認識している人たちからすると、「あの人たちの問題」、「一部の人たちの問題」という見方がずっとあって、それをいまだに引きずっているところもある。現在は多くの人が住まいを失う危機にあるわけですが、この問題を「自分たちの問題」として考えることが必要だよと思います。

――これまではギリギリのところでなんとか住まいを確保し続けられていた人たちが、今まさに屋根を失いそうになっているという状況ですよね。

そうですね。特に今回のネットカフェの休業に伴う問題というのはそういう意味合いが強いです。

いわゆる「ネットカフェ難民」という言葉は2007年に「ネットカフェ難民」というテレビシリーズがヒットしたのをきっかけに知られるようになりました。実際に相談現場にネットカフェで暮らしている人がいらしたのは2003年か4年ごろなのでもう10数年間、社会の中にある問題です。ただ「難民」という言葉自体がどうなのかという疑問はあるんですが。

この10年間で言うと、路上の人は減っています。生活保護の申請のサポートの活動が広がって、生活保護を申請して路上から抜け出す人が増えたので、路上の人の数というのは全国的に見ても、東京都内でもピーク時の5分の1くらいまで減っている。

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(写真提供:つくろい東京ファンド)

けれども、逆に、路上の一歩手前、ネットカフェとか24時間営業の飲食店などを転々としている人というのは、東京都の調査でも、2007年に2000人だったのが10年後の2017年には2倍の4000人になっています。若年層も多いのですが、その人たちに住宅支援が必要だというのはずっと訴えてきました。ですが、なかなか有効な対策というのが取られてこなかった。

これについては国会の委員会に呼ばれて話をしたこともありますけれど、やっぱり国会議員の中でも自己責任論が非常に強い。「若いんだから働きゃいいじゃないか」とか、「地方に行ってなんでもすればいいじゃないか」とか、そういうメンタリティの人が政治の世界でも一般社会でも非常に多くて、だから対策が進んで来なかった。そういう中で今回の危機が起こっています。

「見えない人々 invisible people」ということを新著『閉ざされた扉をこじ開ける』の中でも書きました。今はこの危機の中で私たちの社会が見ずに来た貧困の問題が噴出してきている状態です。

稲葉さんは新著の第1章を東京オリンピックに関わる問題から書き出しており、そこでは巨大な国家プロジェクトが様々な排除を伴って進んできた経緯が描写されている。今回のインタビューでも2014年に「つくろい東京ファンド」を立ち上げた理由について「このままだと東京オリンピックで路上からホームレスの人たちが一掃されるだけで終わってしまう」という危機感があったとお話されていた。

ただ、今回ネットカフェから追い出される人がいるという問題も一部報道はしてくれていますけれども、「みんなの緊急事態」の中で全体に余裕がないだけに、「貧困状態にある人たちの緊急事態」はあまり注目されていないなという気持ちもあります。

路上の人たちも結構大変で、私はビッグイシュー基金の共同代表もやっているんですけど、母体組織の有限会社ビッグイシュー日本が発行する雑誌、「ビッグイシュー日本版」の売り上げが落ちている。路上での販売は続けていますが、人通りが非常に少なくなってきているので、ビッグイシューで生計を立てている人たちが非常に苦しくなっています。

それで、ビッグイシューの3ヶ月間の定期購読ですね、事務所から直接買ってくれる人の家に郵送するということを始めています。この危機の間、3ヶ月間ビッグイシューを支えてください、その分の売り上げの半分以上は販売者に還元しますというキャンペーンです。同じような試みはイギリスなどでもやっているそうです。

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今回のキャンペーンでは、2000人が参加・購入することで、仕事ができない販売者に一人当たり4万6000円程度の現金給付を行うことを目標としている。家からでも買えるのでぜひ。(写真提供:ビッグイシュー日本)

集団施設に入れようとする生活保護行政の問題

――路上の一歩手前の人たちだけでなく、路上の人たちの生活にも打撃が出ているんですね。

4月3日に都内のホームレス支援団体の連名で東京都に申し入れをした内容の中には、緊急事態宣言でネットカフェが使えなくなってそこから出てくる人たちをどうするんだと、あるいは今後経済危機が進んで新たに住まいを失う人たちへの対策も必要だと、そういう内容が入っています。それと同時に、路上の人たちに関わることも言っているんですね。

生活保護は以前よりは使いやすくなりました。ただ、私たちもずっと問題にしてきたのですが、特に首都圏の福祉事務所では、ホームレス状態の人が生活保護を申請したときに民間の施設に入ることを事実上強制するということがあるんですね。自治体によっても差はあるんですが。

公的な施設が圧倒的に不足しているので行政も民間の宿泊所に頼っていて、「無料低額宿泊所」という制度があるんですが、そこに入れば生活保護をかけてあげるよという対応をしているところがある。

――無料低額宿泊所に入ることを生活保護の利用の条件にしているということですね。

まあ、事実上要件にしているんですね。本当はそういうことはしちゃいけないんですが。生活保護法の中では施設入所を強制してはいけない、「居宅保護の原則」というのがあって、要するに普通の住宅で保護を適用するという原則にはなっているんですが、それがあまり守られていなくて。

一旦まずは施設に入ってくださいと言われる。それで一旦入ると、数ヶ月から場合によっては数年間、そこで滞在をせざるを得なくなって、なかなかアパートには移してくれない。

アパートに移るためには敷金・礼金とか初期費用が必要なんですが、それを生活保護の仕組みの中で出すスキームはあります。でもなんだかんだ言ってなかなか出してくれないという問題がある。

民間の宿泊所も玉石混交で、ちゃんとしたところもあれば、いまだに都内でも20人部屋、大部屋に二段ベッドがずらーっと並んで20人が一緒に暮らしているというところもある。

そこでは昔から衛生問題が普段から発生していて。南京虫が大発生するとか皮膚病になる方がたくさんいるとか。それで保健所が指導に入るということがしょっちゅう行われているという問題があります。

しかも集団生活なのでやっぱり人間関係のトラブルも多くて、特に知的障害や精神障害をお持ちの方が施設になじめなかったり、いじめられたりして路上に戻ってくる。

その結果、施設と路上を何度も何度も往復することになる。30代でもう20回以上生活保護を受けましたという方にも何人かお会いしたことがあります。そういう人たちは、好きで野宿してるとか、社会生活から逃げてるとか言われるんですけど、そうじゃなくてシステムの側に問題があるということを私たちは言っています。

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(写真提供:つくろい東京ファンド)

そういう状況に対して、私たちはアパートの部屋を独自で自分たちで借り上げて、そこを一時的な宿泊施設として活用する。そこで最初からプライバシーの保たれた住宅を保障する「ハウジングファースト」という支援モデルを民間団体で集まって作ってきました。

――それは「個室」でということですよね。

はい個室です。今心配しているのは集団生活の施設というのがいまだにあって、そこでコロナウイルスの感染が広がるリスクがある。

すでに高齢者施設や障害者施設での集団感染が起こっていますが、ホームレスの人たちが入る相部屋の施設は居住環境がさらに悪い場合があって、密集度も高いので心配しています。

路上の人たちもそういう状況のことをよく知っているので、こないだも夜回りしていて高齢の路上生活の男性から言われましたけど、「生活保護は受けたいけどやっぱり10人部屋はおっかないから入りたくない、だから生活保護を受けられない」と。そういった相談を受けることもあります。

だから、これも元々言ってきたことではあるんですけど、今回の事態を受けて改めてホテルの借り上げとかも含めてですね、個室の安心できる場所を提供してほしいと要望しているところです。

――全市民に対して「家にいてほしい」とか、「ソーシャル・ディスタンスを」と言っている中で、当然それはやらないといけないことですよね。集団の施設ばかりで個室でのハウジングファーストを進めてこなかった生活保護行政のあり方自体が、今回の危機におけるリスクを高めているのではないかと。

貧困と健康は密接につながっている

――ウイルスは平等だとよく言うじゃないですか。けれど海外の報道などを見ていると新型コロナウイルスで亡くなった人には貧困層やマイノリティが多いとも言われている。もちろんウイルスの方では平等に選んでいるんでしょうが、被害の出方は元々の社会のあり方を反映する形で不平等に現れているのかなとも思います。

そうですね。実は私が90年代にホームレス支援の活動を始めて最初に直面した問題の一つに結核の問題というのがありました。結核は「貧困の病」とも言われていますが、寄せ場と言われる大阪の釜ヶ崎、西成区などで結核の罹患率が非常に高かった時期もありました。

私は主に新宿でホームレス支援をやっていましたが、新宿のホームレスの人の間でもかなり結核にかかっている人がいて、私たち支援者も注意をしていたんですね。

炊き出しの現場に保健所のレントゲン技師に来てもらって、保健所とのタイアップでレントゲン検診やってもらうとか、そういった取り組みをずっと重ねていて、その結果として結核の罹患を減らすことができました。

ただこういう話は偏見にもつながるのでずっと言えなかった。今は路上で結核の人を見かけることはほとんどなくなりましたが、90年代は夜回りでせきをしている人がいると結核を疑っていたんです。

つまり、貧困の問題と健康の問題というのはやはり密接につながっていて、それは体の病だけではなくて、精神的な病も含めてです。貧困であるがゆえにリスクが高い。

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(写真提供:つくろい東京ファンド)

「ハウジングファースト」のプロジェクトを一緒に進めている内科医の先生もよく言っているんですが、要するに「家というのは健康にいい」んだと。

安定した住まいがあるだけでも健康状態が改善される。血圧が非常に高かった人がアパートに入った途端に正常値になったりとかですね。メンタルの面でも今までうつっぽかった人が改善されたりというようなこともあったりします。

安定した住まいだったり、あるいはきちんと清潔を保てる環境だったり、医療のアクセスというのが全ての人に保障されている社会というのは、実は感染症も含めた様々な危機に対して強い社会なんじゃないかなということを改めて今考えています。

――稲葉さん、緊急の支援活動がある中でお話聞かせていただき本当にありがとうございました。

稲葉さんたちの活動を応援するには

緊急事態宣言が出され、元から生活の基盤が脆弱だった人ほどその影響を受けやすい状況が生まれています。稲葉さんの話にもあった通り、公的な制度の網からこぼれ落ちてしまう人はすでに多数現れており、これからもっと増えていく可能性があります。

こうした状況に対応するため、稲葉さんが緊急で行っている活動を応援されたい方は以下の2つの方法があります。ぜひご覧になってください。

① 「つくろい東京ファンド」による住まいを失った方のための個室シェルターの増設を寄付で応援する

② 東京都が休業を要請したネットカフェで寝泊りする人などを対象とした緊急の宿泊支援「東京アンブレラ基金」を寄付で応援する

稲葉剛さんのインタビュー前編はこちら。ぜひ合わせてお読みください。

この記事は今まさに進行している「新型コロナ危機をどう捉えるか」を考えるためのインタビューシリーズです。すでに公開している大西連さんのインタビューも合わせてお読みください。

インタビュー後記

一昨年2018年に稲葉さんから「東京アンブレラ基金」のアイデアを最初に伺いお話していたとき、今も使っていただいている「今日も誰かの緊急事態」という言葉が思い浮かびました。

多くの人が「日常」を送っている中でも、今晩寝泊りする場所を失っている人が毎日いる。でもその「誰かの緊急事態」を知っている人は現場の支援者以外にほとんどおらず、社会的にほぼ見えない状態になってしまっています。

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今回、国家による「緊急事態宣言」が発出され、稲葉さんもお話されていたように、「誰かの緊急事態」ではなく「みんなの緊急事態」とでもいうべき状況が現出しています。しかし、同時に思うのは、そして稲葉さんのお話からも読み取れるのは、「みんなの」とは言っても、やはりその影響は誰に対しても同じではないということです。

ネットカフェが休業して住まいを失った人、ワークフロムホームが成立しない業種において元々不安定だった雇用から切られてしまった人、そうした多くの人たちが、まさに今「住まいの喪失」という命に関わるクリティカルな出来事のすぐそばにいる状況があります。

だからこそ、形としては「みんなの緊急事態」ということがある中でも、それでもやはり「今日も誰かの緊急事態」という視点を忘れないことが大切です。

危機や緊急事態は数ヶ月前に始まったのではなく、元々あったのです。見えていなかっただけで。そして、それを見ようとして、見逃すまいとして、長きにわたって支援に走ってきた稲葉さんのような人たちも元々いたのです。そのことをぜひ知ってほしいと思います。

前後編のインタビューを読んでくださりありがとうございました。色々な仕事の合間を縫いつつ手弁当でやっておりますのでぜひ応援・サポート・シェアのほどよろしくお願いします。

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望月優大

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85年生。ライター。日本の移民文化・移民事情を伝えるウェブマガジン「ニッポン複雑紀行」編集長。著書『ふたつの日本「移民国家」の建前と現実』(講談社現代新書)。現代ビジネス、Newsweekなどに寄稿。株式会社コモンセンス代表として非営利団体等への支援にも携わっている。