爪先立ち

昔見たアニメがいきなり頭の中で再生された。

普段僕はアニメやゲーム、テレビすら見ないけれどなぜかそれを見た記憶がある、作品の名前も忘れてしまったがあのアニメを見た時にとても怖いなと思ったシーンがある、それを思い出した。

空に落ちていく女の子の話だった、見たことある人も多分たくさんいるだろうからすぐピンと来た人も多いのではないだろうか?

地上に住む人の重力はその星にあり、地下に住む人の重力は空にある、地上に出れば当然のごとく空に真っ逆さまに落ちていってしまうのだ、これほど怖い事があるだろうか?いつもなんとなしに眺めている空、天井ではなく住むこの星よりもはるか彼方まで無限に広がっていると思われる世界に引っ張られて行く恐怖、宇宙にポンと放り出される恐怖を想像すると僕はどうしようもなく不安になってしまう、僕はこの不安を煽るような夢を見た事が過去にある、それはこんな夢だった

なんの前触れもなくいきな地面から足が離れ、最初の頃はなんとか爪先を地面にトントン着けて離れまいとしていたが、次第に自分の体を地面につけている事が難しくなりとうとう体は完全に浮き上がってしまった、地面に触れる事ができなくなってからはどんどん地面から離れて行き雲を超え辺りは暗くなってきた、スピードがどんどん上がっていくのが分かったがとても止められるものでもない事がよく分かった、空を見ると真っ黒、気温も下がってきた、そしていよいよスピードが増してきてあっという間に辺りは完全な闇に覆われた、体のバランスも取れないし上下左右の基準もなくなった、そのままどんどん落ちて行く、しかし心はなぜが覚悟を決めて行く末をにらんだ時、なにかの拍子にそれが逆行し始めた、地球に向かって落ち始めたのだ、この時、僕はあの真っ黒な空の向こうに何があったのか?を見る事ができないという無念を感じていた、そして地球が近づいて来た時落ちている事を思い出した、その時の恐怖や絶望感を抱えたまま、ハッ!!と目が覚めた時、僕は自分の部屋の天井を眺めていた。

僕は昔から地に足がつかない子だと思われていた、常に何かの世界に浸っていたし、そこから出てくることも入っていくことも自分ではコントロール出来なかった、自分が思った事をやるし、興味がなければやらない、やらなければならないことでもどうしても出来ないものは出来ない、社会的に見ればクソッタレ人間である、しかしそんな僕は爪先を地面になんとかトントンしながらここまで生きてきた、何年か前に一度地面を爪先で強く蹴り空に浮き上がってみたことがあるが結局はゆっくりとこの地面すれすれのところまで降りてきた、結局地面に両足の裏面が着き切ることも無いまま爪先でトントンと叩いている、ここで僕は思う事があるのだ。

僕はあの真っ黒な空の向こうまで行くという決意もなければ、地に足つけて生きていくという覚悟もつかない、どっちつかずの人間なのである、浮遊霊のようなもの

夢に見たとおり僕は空にほっぽり出された時とてつもない恐怖を感じながらもこの先に何があるのか?が気になって仕方がなかった、しかし地球の引力に引き戻された時僕は安堵と後悔の念を感じていた、これはとても'あれ'に似ている、そうまさしく、あれ!!である、お分かりか?

あれ、とはギャンブルである。

ギャンブル依存者になる人とは、一度は堕ちた自分が一発逆転、戦況をひっくり返すと信じている人らしい、つまり死にかけたところ九死に一生を得る、そんな感覚がギャンブルの魅力となって離さないらしいのである、あともう少し、あともう少し、そうすれば救われるかもしれない、という一歩一歩が止まらない

僕は自分の人生の中にそれに近いものを見出しているんだろうと思った

スリルを味わいたいだけなのでは無いだろうか?

こんな人間が真っ当に生きていけるわけはないのでは無いだろうか?

と思いながらも、その逆も考えているのである、全く地に足つかぬ思考、二つの引力に引っ張られながら右往左往。

ここで一つ問う

地面とおさらばしてあの空の向こうを見に行くか?

両足ペタンとつけて二度と浮き上がれなくなるか?

どちらを選ぶ?

これに答えが出せない内は地に足つかぬ浮遊物となんら変わらないのである。

しかしこんな両極端な質問を自分に課す事自体が既に逃げでもある、負けが込んだギャンブラーが最後に陥る答えのない二択、選ばず降りる事も出来ず、決め切ることもできずである、この時何を選択したとしても後悔するような気がする、けどもしかしたら?なんて考えている、もう終わりだそんなのは。

モヤモヤフワフワ、煙のような生き方

最近そんな自分に不信感が止まらない🤦‍♂️

コロナが来てから絵を描くペースがガクッと落ちて、なんの発想も浮かばなくなって、個展もできなくなって、モチベーションが下がって、ただバイトをして日銭を稼いで家賃を払う生活、未来がまさに真っ黒な空で、僕は今ここで爪先でトントンやっている

あの時の情熱を取り戻したい、自分の生きるための何かをもぎ取られたようなそんな喪失感、人に話しても伝わらない、だから孤独感も追加されてもなお、爪先でトントンしてる🤣笑

なんか面白くなってきたぞ👴


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