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ツクルバ社外取締役・福島良典さんに聞く、巨大な非効率市場を共に開拓する決意

2019年10月の定時株主総会で、ツクルバはLayerX CEOの福島良典さん、アトラエ取締役CFOの鈴木秀和さんのおふたりを社外取締役として迎え入れることが決まりました。

この就任を機に、両者にインタビューを実施。ツクルバとの出会いから、今後の抱負までを伺います。本記事では、上場前からエンジェルとして投資をし、ブロックチェーン領域でも関係性を築いてきた福島さんにお話を伺います。

福島良典
LayerX 代表取締役CEO
東京大学大学院工学系研究科修了。大学時代の専攻はコンピュータサイエンス、機械学習。12年大学院在学中に株式会社Gunosyを創業、代表取締役に就任し、創業よりおよそ2年半で東証マザーズに上場。後に東証一部に市場変更。18年にLayerXの代表取締役社長に就任。12年度IPA未踏スーパークリエータ認定。16年Forbes Asiaよりアジアを代表する「30歳未満」に選出。17年言語処理学会で論文賞受賞(共著)。2019年6月、日本ブロックチェーン協会(JBA)理事に就任。2019年10月株式会社ツクルバ社外取締役就任。

ツクルバと福島氏の出会い。本質主義の姿勢にひかれ、投資を決意

村上:今日はよろしくお願いします。福島さんとの出会いは、2016年の夏頃、共通の知人に紹介してもらったのがきっかけでしたね。会う前は、どのようなイメージでツクルバを捉えていましたか?

福島:きっちりトラクションも出ていて、事業で成果を残している、中身のある会社と聞いていました。加えて、個人的に、不動産領域で成長をしている点にも興味を持っていました。

当時、インターネット企業の多くはオンラインの世界に閉じている印象がありました。一方、僕はオンラインとオフラインを融合させ、さまざまな非効率を解消していくような事業が、今後伸びていくと考えていました。そのタイミングでツクルバを知ったので、ぜひ村上さんに会ってみたいと思ったんです。

村上:実際に紹介してもらってから、僕はもちろん、中村(ツクルバ代表取締役CCO中村真広)やツクルバのメンバーとも何度か顔を合わせましたよね。話をしてみて、どのような印象を持ちましたか?

福島:単なる馴れ合いではなくて、事業を伸ばし社会に貢献するにはどうすべきか、という本質に向き合う姿勢を感じられました。純粋に、いいメンバーが集まっているなと。投資を決めたのも、その姿勢に共感したのが大きかったです。

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村上:それは嬉しいです。本質に向き合う姿勢は、全社で大切にしている価値観なので。

福島:結局、会社は人がいて成り立っているんですよね。成功する会社は、生まれた瞬間に決まっていると僕は思うんです。経営陣やメンバーの持つ熱量とか、作っているプロダクトの魅力とか。その両方が、ツクルバにはあったと思っています。

なので、上場したのもある意味、当然の結果だと思っています。村上さんが言った通りの成長を描いている。目指している方向に間違いはないという確信にもつながりました。

村上:ありがとうございます。もちろん、細部では予想外だったことは数多くありました。ただ、攻めるべき市場、時代の流れなど、大きな流れと戦略に間違いはなかったからこそ、まずは上場までたどり着けたと思います。

唯一、社外取締役のオファーを受けたツクルバ

村上:社外取締役の打診をさせていただいたのは、上場後すぐでしたね。福島さんの持つ、「技術的な視点から未来を見据える力」と「上場企業の創業経営者としての知見」をぜひツクルバの経営にインストールしたいという思いからのお声がけをしました。

まず、ツクルバの経営には、意思決定する際の技術的な視点がまだまだ不足しています。重要性は高く、現状CTOが不在の中でその視点を補完いただくのは不可欠でした。

また、僕もチームも上場企業経営者としての経験はここから。そのあるべき姿を学ぶためにも、Gunosyで5年間その経験をされ、かつ創業から東証一部まで会社を育て、世代交代も経ている福島さんの知見は非常に貴重です。その力を貸して欲しいと考えました。

福島:僕自身、投資や、ブロックチェーン領域での協業など関係を深める中で、より関係を深めることで価値が生まれるんじゃないかと感じていました。そのタイミングで、社外取締役のオファーをいただいたので、引き受けさせていただきました。ありがたいことに、これまでも何社かから打診はいただいていたのですが、引き受けたのはツクルバだけです。

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村上:そうだったんですね。

福島:2018年7月にGunosyの代表を退いてから、何回かお話はありました。ただ、いまの僕にとって、何より大切なのは時間です。LayerXを伸ばすことに専念したいという想いを優先し、基本的にはお断りしてきたんです。

ですが、ツクルバであればLayerXとの事業的シナジーという意味でも、強みを活かしあえる。かつ、2年間の投資先として見てきたなかで、経営陣やメンバーへの信頼もあり、一緒に挑戦しようと思えたんです。

村上:互いに事業を通して実現したい夢がありますし、そこへのコミットがまず第一です。その中で、福島さんがツクルバにコミットする決意をしてくれたのは、とても嬉しいです。

社外取締役に求められるのは、リスクと向き合うことの後押し

村上:先日、無事株主総会で社外取締役の就任が決定しました。このタイミングでぜひ、福島さんが考える「あるべき社外取締役の姿」を聞いてみたいです。

社外取締役って、会社のガバナンスにおける“守り”の観点が求められがちだと思っています。でも僕は、社外取締役の役割はもっと違うところにあるのではと思っているんです。

福島:僕もその認識です。決して、単にリスクを回避し、守る存在ではない。ミッションに向けてはあえてリスクを取る必要もあり、むしろ「リスクをとらないことがリスク」になる。そうした正しい選択をサポートするのが、社外取締役が担うガバナンスではないでしょうか。

村上:攻め・守りではなく、会社の進むべき方向に対し適切なリスクの取り方をサポートすると。

福島:ソフトバンクの社外取締役を務める柳井さん(ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長の柳井正氏)は、まさにその姿を体現されていると思っています。特に、ソフトバンクがボーダフォンを買収した時の話は印象的でした。

買収の話が上がったとき、取締役会ではほとんどのメンバーが「リスクが高すぎる」と、反対をしていたそうです。でも唯一、柳井さんだけは「これは取るべきリスクだ」と賛成をした。

確かに当時の時代の流れをみると、モバイルインターネットが普及することは間違いなかった。情報産業で勝負をかけるのであれば、このチャンスを逃したら致命的な出遅れになると、柳井さんは判断したんです。常にミッションを見据え、適切なリスクを取る姿勢は見習いたいですね。

村上:「このリスクを取らない方が危険だ」と示してくれる人がそばにいるのは、心強いです。

福島:ベンチャーとして大きな成長を目指すのであれば、リスクと向き合うことは欠かかせません。リスクのない意思決定をして事業が成長するなら、ベンチャーなんて存在しない。

世の中には、大企業が得意な安定性のあるビジネス領域と、リスクを取らないと勝てない領域があります。ベンチャーとして取るべきリスクを取り、着実にミッションへと向かう決断を後押ししていきたいですね。

村上:ミッションを念頭に置いた判断は、今後ますます求められると感じています。特に、上場すると、自分たちのなすことが広く社会から評価を受ける。本当にミッションに向き合えているのかがより強く試されると思っています。

福島:目先の利益や私利私欲に走った瞬間、会社は淘汰されていきます。そういう事例は、僕自身幾度も目にしてきました。公共性・公益性の高い企業を目指すには、そうした経営判断の積み重ねは欠かせません。

技術者は今こそ不動産市場を"開拓"するべき

村上:福島さんとは、技術面でも力を合わせていくことになります。不動産領域は今まさにテクノロジーが入りはじめ、少しずつ変化が起こっていますが、技術者視点では、不動産領域のおもしろさってどこにありますか?

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福島:“開拓”の一言につきますよね。この10年でスマートフォンやIoTの普及を通し、あらゆる実空間のデータを集められるようになりました。このデータを活かし、実空間、不動産の領域でも、データのフィードバックを元にプロダクトを進歩させる「データネットワークエフェクト」が強まると考えています。

この流れが加速すると、実空間に限らずすべてのデータがネットワーク化され、オンラインとオフラインの境界もなくなっていく。その変化の途上に僕たちはいる。ここの開拓は非常にやりがいとおもしろさのある領域だと感じています。

村上:開拓者となる上で、この領域に挑む技術者にはどのような視点が求められると思いますか?

福島:“掛け算”の意識だと思いますね。僕の好きな考え方で、今いる業界の当たり前は、他の業界の当たり前とは限らない。今いる領域でのあたりまえを別領域にもっていくと、価値があると思われることは往々にして起こります。その意識で、他領域の知見を不動産にもどんどん入れて欲しいですね。

しかも、このかけ算は早くできる人の方が、価値がある。機械学習の領域を見て感じるのですが、優秀なエンジニアは若い人の方が多いんですよ。ですが、面白い仕事や社会を変えられるポジションにいるのは、先行者。結局いち早くリスクを取れた人なんです。

村上:不動産は、こんなに巨大な市場なのに、非効率が蔓延しているんです。情報の非対称性ゆえに事業者側には利益が出ていますが、ユーザーや消費者が損をする構図がいまだ続いている。なかなか変化が起きないからこそ、その分大きなチャンスも眠っていると感じています。

福島:そうですね。実際、セコイアキャピタルなど、グローバルトップのVCを見ると、不動産や金融の領域にしっかりと張っている。変化が起こるのはほぼ間違いありません。

5年単位では変わらないかもしれませんが、数十年、100年といった長いスパンで見ていくと必ず「昔はなぜあんなに非効率だったのか」と思う状況になる。その大きなうねりを、ツクルバとともに起こしていきたいですね。

Photo:Haruka Takahashi
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