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"Disruptors"と公共サービスのイノベーション

Disruptorsー反逆の戦略者ー読了。この本はWiredUKの編集長が世界を旅する中で発見したイノベーションの事例を有機的につなげながら、わかりやすくまとめており、非常に多くの示唆に富む本です。

筆者はアメリカ型のイノベーションに方程式があるかのような姿勢に違和感を感じており、それぞれのケースにおいて各国の文脈まで掘り下げてイノベーションの意義を語っています。

この手の本の多くが、企業のデジタル変革についてそつなくまとめて終わる中、この本の魅力となっている一つのポイントは、パブリックセクターのディスラプトと民間セクターのディスラプトが同列に並べていることです。

ペルーのコングロマリット、インターコープによる教育事業、米国デジタルサービス(USDS)からスピンオフした国防省デジタルサービス(DDS)による官僚制のハック、UAEのAI担当大臣任命、エストニアのe-Residencyなどの事例は、英国のGDSがパブリックセクターを変革したという経験から得られている視座であり、シリコンバレーにはない見方だと思います。

筆者はエストニアの章でGovernment as a Serviceについて、公共サービスをアプリを選ぶようにサブスクリプションする世界の可能性について述べています。ここは自分も非常に共感するところです。

行政のOS自体が古くなってきている。それは移動の自由によって市民が、どんな国でも生活できるようになったことと、インターネットを通じたバーチャルな領域が拡大している中で、我々の生活基盤を再定義しなければいけなくなっているということだと思います。

デジタルデータをベースとした社会システムは根本からデザインし直されなければならず、それができた際には国家や自治体の役割は今とは異なるはずだというのが「Next Generation Government」に繋がっていきます。

例えば、世界中でデジタルIDが標準化されれば、個人の国家間移転はもっと楽になり、1日で海外の新しい居住地のセットアップが完了するかもしれない。国が備えるべき行政手続が全て世界で標準化され、その手続システムも全ての国で同じオープンソースをベースとしたSaaSになったらそのコストは激減する。これらの変化は政府の課税のあり方を変え、政府が本当に注力すべき役割を変えるはずです。もっと言えば国民国家と呼んでいる行政単位自体が変容するかもしれません。

上記のような世界を夢だと言って済ませるのか、そのような世界が来ると信じてその先を考えるのかが、日本という国がさらにガラパゴス化していくかを分ける分岐点になりうるのではないかと考えています。


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