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詩たち

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#詩

詩「コーヒーと彼」

詩「コーヒーと彼」

20240308

とりとめのない話をしよう
いつの間にか時が過ぎてゆくような
笑いどころなんて捨ててしまおう
きっとそれが一番良い

カフェの席は居心地が良いから
彼は一人きりでいることを忘れて
語りかける 嘘も本当も
混ざり合って歪になった体験談

登場人物には着飾ってもらって
それぞれの事情は突拍子もなく
抱えている問題は山積みで
解決することなく突き進んでゆく

撃たれた頬の痛みを忘れよう

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詩「雨降りの朝」

詩「雨降りの朝」

20240308

夢から覚めて落ち込む脳内で
整理しようとするあれこれが
次第に消えていくのを待っている
それまでは布団の中でモゾモゾとする

荒唐無稽であればあるほど
それが示すものが不明で
あのパンは一体何だったのか?
溢れ出る疑問は抑えられない

もう会えない人々が出て来る夢は
何よりも苦しくて吐き気がする
真っ暗にした部屋の中
蛹に入ったままの幼虫になる

変われないところと変わったとこ

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詩「造花」

詩「造花」

20240202

誰もいない原宿の隅に
しおれた彼は一人
シャッター 落書き 竹下通り
表参道に思い入れはない

散歩の時に似合うコーヒー
代々木公園の前に
顔馴染みになったカラスたち
あの建物は変な形

飛び出した家は部屋一つ
狭苦しくて電気と水道は止まる
蠟燭の火で不味い飯を柏の時は何食う
短いようで長い不吉な日々

痛みに慣れてしまった
石の裏に棲み着いてしまった
その感覚から逃れることな

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詩「墜落者」

詩「墜落者」

20240205

岩陰で ハッチが開く 夜のこと
異星の彼は 深呼吸する
ボロボロの 脱出ポッド 乗り捨てて
彼は慌てて コンビニに行く

レジ袋 3円払う 余裕なく
彼は両手に 菓子を詰め込む
アパートの 階段の音 五月蝿くて
耳を塞いで 菓子が散らばる

ドアを開け 中に入ると 気配する
何も居ないが 彼にはわかる
下を見て 首が曲がって 上を見て
どちらも白い 壁が広がる

パキパキと 悲

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詩「言葉」

詩「言葉」

20240202

この言葉が誰かの元に届く頃には
俺の身体は小さな小さな粒となっているだろう
空中を漂い水中に溶け出し
あらゆるものと結合して生まれ変わり続ける

水と合わされば奇妙な味のコーラになるし
鉄と合わされば鋭い凶器になるし
何でも良い そこらにあるもの 例えば
ソファやベッドと合わされば寝心地が悪くなる

小さな粒となった言葉たちが自由にやって
誰かの生活に影響を与える時になるまで

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詩「至るアパート 二階 角部屋」

詩「至るアパート 二階 角部屋」

20240121

時間が止まる 何もない部屋の中
肉体の隅々まで巡らせてみる
感覚だけがある やがて溶けてゆく
それで良い 彼は包まれたような気分になる

歪んだギターの音で目を覚ました少年がいる
いつの頃だったか それは彼にとても似ている
十分に腐ってしまった果実を大事に抱える
頭を振るとカラカラの頭がマラカスになる

全てをかち割りたくなったので目隠しをする
何もない部屋で腕を振る音がする

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詩「チーズを探して」

詩「チーズを探して」

20240117

いとも容易くブルータスになれる
彼は裏切りを着飾って歩く
煙草の煙は鎧のように彼を包む
強い風を受けても飛ばされない

「大切な人がいた気がする
 もう二度と会わないだろう
 それで良かったと安心する
 大切なものなど必要ない」

彼を信じる者は救われない
彼を通り過ぎる者は歩き出す
情など何の足しにもならない
裏切りは時に優しさでもある

本当に裏切ったのだろうか?
彼がそう

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短歌集「gem」part1 /ポエトリーリーディング

Kindleで販売している自作の短歌集のポエトリーリーディングです。

色々なパターンで撮ってます。

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是非チェックしてください。

短編「poet」

短い映画を撮ってみてって言われて思いついたのは、カメラを自分に向けて設置して話すだけということで、思いついたことを話していたら詩人としての言葉を吐いていた。

別の話だけど、最近「詩人」とか「詩」という言葉で自分を縛ることさえも嫌になってきた。一つに括られるのも。
それでも、この動画のスタンスは変わらないので、僕はいつまでも誰か(読者)を待ち続けている。

詩「声」

詩「声」

聞いている
聞こえている
自分の中だけで
外側には聞こえない
誰にもわからない
それが安心する
だからこそ内側で育つ
汚れてゆく
彼が増殖する
俺はどこにいる
聞こえている
確かに聞こえている
声が重なってゆく
耳を塞いでも届いている
心が分離しそうになる
寂しさが雪のように降り積もる
それでも誰かに頼ることはなく
ただ声に振り回されている
聞こえている
嘘すらもよく聞こえている
返事が出来ない

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詩「アルミホイル」

詩「アルミホイル」

20240110

アルミホイルに包まれて
眠りに落ちる銀の夜
奥歯に染みる不快感
雑な電波は届かない

引っ掻くような音の先
彼を見つめる目が二つ
光を放ち映された
シルエットにはタコの足

愉快な歌で起こされて
スーツに着替え電車乗り
目的地には廃墟だけ
埃まみれの仕事する

帰りの駅は賑やかで
酒を一杯飲んだなら
機嫌が治り開けるドア
広がる闇は六畳間

悲しい色の壁紙に
ペンキを塗るのが楽

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