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今朝の夢

夢の中で死んだ父が生きていた。
なぜだか、名古屋で単身赴任しているらしい。
家族で集まって話をしたりしていた。
母が父のために色んな物を送る手配をしたらしく、その金額が、ちょっと高過ぎるな、と父は言っていた。
毎日の食事なんかも入っていた。毎回宅配されるサービスのような、そうじゃない時もある、みたいなよく分からない曖昧な母の説明だった。
「親父は定年になったら帰って来るん?」
と聞いたが、母は何も言わなかった。

夢の中で死んだ父が生きている、というパターンは何度も何度も経験しているので、僕は半分理解していた。ここにいる父は本当はもういないのだと。一緒にいた兄もそう理解している様子だった。

いつもはそこで、悲しくて大泣きして終わりだったが、今回は違っていた。

僕は父と喋りたかった。父にさわりたい、甘えたいような気持ちだった。
冗談、というか、からかい半分みたいなニュアンスで、父に聞いた。
「親父、今何やってるん?」
親父は軽い感じで答えた。
「エンジニア」
「何作ってるん?」
「×××××××とか。指板握った事もある」
「指板?ギターの?修理屋さん?何でも屋みたいな?」
「そうそう。何でも扱ってる修理屋みたいなもんやな。」
「大きい会社なん?」
「おう、大きい。残業1万時間くらいある。」
兄が口を挟んだ。
「ええなぁ、ちょっと分けてほしいな。」
父が小さく続けた。
「まあ調整する方法もあるんやけどな。」
いろいろ変な、不思議な会話だった。
でも話ができた。父の夢シリーズでは新しい展開だった。

話をしている父の顔は、僕の知ってる父の顔ではなかった。髭を生やしていて、少し細めだった。
でもなぜか、本当の父と話している、と感じていた。

場面は目まぐるしく変わっていった。

どこか広い空間で、向かいあった長椅子のような物に座って、友人達と話していた。
昼休憩か何かで、退屈な、間伸びした時間だった。僕は何か嫌なことを言われて、気分が悪くなって怒って席を立ち、戻ったら、教室だった。

中学校のクラスのような教室で、左端の後ろから2番目の席。長机に椅子が二つある。その左側が僕の席だ。
隣の席の男の子(しかし大人)が、
「今日は俺はこっちみたいやわ。」
とひとつ右の机に移動した。
「え?席変わったん?」
と聞くと、本来の彼の席を指差して
「親父が、そこの席が良いって言ってるような気がして。」
と優しく笑った。
僕はハッとした。
親父?誰の?とは思わず、
「親父、ここに座りに来てくれるんか。」
と納得した。
本当はもういない父が、そうしたがってる、とはっきり感じて、温かく、嬉しくなった。
そこまでのストーリーにオチがついて、なかなか面白い。そして合点がいった。父はもういないけど、いるのだ。
僕が父にふれようとしたら、父も僕にふれようとしてくれた。温かかった。

まあ全ては僕の夢の中で、だけど。

夢から覚めて、僕は声を上げて泣いた。

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