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リーダーの人格教育

リーダーの人格育成は組織にとって大事です。管理職としてあまりにも訓練ができていない人が上司になると、よほどできた部下がいない限り職場全体のモチベーションは不必要に下がります。

別の記事で紹介しましたグライダー人間やブロイラー人間が十分な成長が無いままに責任者として職場に配属されると、もちろん本人が一番不幸ですが、実務の経験不足や昇進したという過剰な自信と自分の無知を隠そうとする見栄によってその職場だけでなく関係先の会社や組織にも大きな迷惑が掛かります。

まずそのような管理職の元で働くとその組織全体のモチベーションは急落します。転職後や新たな職場への移動時期は要注意です。その意味で人事部門の仕事は会社組織にとっても大きな役割です。

理外の理

松下幸之助さんの教えに『理外の理』という言葉がありました。理論的には1+1=2ですが、現実には必ずしもそうはなりません。1+1=10になったり、時にはマイナスになったりする場合もあります。それを知らずに理屈だけで考えて実行したのでは往々にして失敗してしまいます。

もっとも理外の理と言ってもそこにはより高度な理というか言わば自分が知らないだけの目に見えない摂理が働いているのでしょう。常に思考を働かせて、そういうものを掴む事が理外の理を知るという事です。

中国の戦国時代に趙奢という将軍がいました。ある時秦の軍隊が趙の一地方に侵攻し、そこを包囲したので、趙王は将軍たちに『あそこを救えるか』と尋ねたところ、皆『あの地方は道も遠く険阻な土地ですから難しいでしょう』と答えました。

道が遠く、険しい所だから救うのは難しいというのは誰でも考える事で、普通の理だと言えます。ところが、趙奢は『道が遠く険阻だから、そこで戦うのは2匹のネズミが穴の中で戦うようなもので、勇敢な方が勝つでしょう』と言いました。そこで王は趙奢を派遣し、趙奢は自分の言葉通り、秦軍を打ち破って、その地方を救いました。

彼の息子の趙括は頭もよく、兵法を勉強していました。ある日、親子で軍事を論じたところ、息子の論に父親の趙奢は反駁できませんでした。しかし彼は息子を褒めませんでした。妻がそのわけを聞くと、『戦というものは命がけのものだ。それを趙括は理屈だけで軽く考えている。もしあれが将軍になったら、この国を滅ぼす事になるだろう』と言ったそうです。

ところが彼が死んで数年の後、再び秦との戦が起こった時、趙括が将軍に任ぜられました。そして、自分の考えで今までの軍令を一切改めて戦った結果、数十万の大兵を失うという大失敗を喫し、趙の国運を大きく傾ける結果になってしまったと言います。

結局、学問もあり、理論的にものを見る人ほど、ともすればそれに捕らわれて、理外の理を軽視しがちです。学問も理論ももちろん大切ですが、リーダーはそれだけに捕らわれずより高い理外の理を掴むよう心したいものです。

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仕事の内容にほとんど関心はなく、『出張した時の報告書は帰社後、次の出社日の朝までに必ず提出する事』とそれだけを厳しく命令する上司。急ぎの為とりあえず口頭で報告しようとすると『業務日誌などの書き物で報告する事』と指示する上司。目視できる場所に居るのにわざわざメールで指示して部下にもメールでの返答を求める上司。

これらの技は仕事を理解していない事を隠して自分の上司に対して責任を取らなくていい状況を作り出したいという意図が見え隠れします。これはコミュニケーション能力不足と上司の勉強不足か人格不足。そこには明らかに人材の配置ミスが起こっています。このような例は特に歴史のある大企業には様々な所で発生しています。

責任者が責任を取らなくていい状況を造るのに自分と部下のエネルギーを浪費しているのですから『内向きになる』という大企業病特有の症状の典型です。そのような状況では組織として他社との競争に勝ち残るのは凄く難しいのではないでしょうか。

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