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Hello Spring

こんにちは。在京都20年あまり。建築の設計をしています吉田裕枝です。
設計の仕事の他、デザイン的視点からの「文化的」景観ガイドもライフワークにしています。

状況が状況な今、お気に入りの隠れ私的京都をピックアップし、ブラタモリ的に「地形」と「くらし」の関わりを掘り下げるという、インスタグラムの書くガイドを実施中。

ことの始まりはこちら↓

124年ぶり2月2日にあたった、記念すべき2021年の節分

そこに乗っかりまして、新年の目標「つべこべ言わず行動する」を有言実行するべく、京都「文化的」景観案内のnote日本語バージョンにチャレンジしてみようと思います。

栄えある第一回は、京都で節分といえば→吉田神社コースをご案内。いざ/


私吉田と吉田神社は何の関係もございません

京都市の北東部の吉田山に鎮座する吉田神社。

山とはいえ、標高105mばかりの、ほぼ「丘」。
地震による地形変化で、平坦地の真ん中に突然、ぽこっと突き出た独立丘は地形図で見るとその姿、歴然。

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地震のたび、にょきっと隆起する丘は、さぞや神がかってみえたはず。

そう、別名、神楽岡=神が集う丘

神職を勤めていた卜部氏(うらべうじ)が吉田に姓を変え、室町時代に、御所から見て鬼門にあたる吉田山を拠点に、「吉田神道」という神道を始めたことから、大小さまざまのお社が密集するエリア。

京都大学の向こう側のここは、節分でない時期でも観光客も少なめの、お散歩にもってこいのオススメエリアです。

話戻って。

今や全国津々浦々で一般的な節分祭ですが、そもそもは平安時代の鬼払い行事「追儺(ついな)」が起源だそう。陰陽師が、厄や災難を払い清めていた宮中行事を、「吉田神道」の創始者である吉田兼俱が、1484年に節分詣の形にしたのが、全国の節分祭の始まりだとか。>*諸説あります

例年は、参道にびっしりと立ち並ぶ露天商の呼び声、山伏が吹くホラ貝のぱおーん、着ぐるみの鬼のうぉー!で賑やかなこのお祭りも、今年は人混みもまばらで、ひそやかに・・それでも、あぁやっぱり春!という春の寿ぎは、確かに感じられました。

今回、聖護院(しょうごいん)というエリアを起点に、吉田山麓の小さなお社を巡りながら、吉田山にプチ登山の後、吉田神社の節分祭まで、京都市東部を北に歩きます/

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スタートは交通の神様「須賀神社」から。
この謎の覆面姿の男性達は、懸想文売り(けそうぶみうり)。
字のかけない庶民の変わりにラブレターの代筆をしてくれる人たち。
・・・ただし、有料!
貧窮した江戸時代の貴族が思いついたアルバイトだったとか。
令和の今も、節分祭でラブレター売ってます。


実は一年に4回もあった大晦日の節分

「季節」を「分ける」で「節分」。もともとは、季節の分かれ目、立春・立夏・立秋・立冬の前日(大晦日)全てが節分でした。でも現在の節分は年に1回。古代中国にルーツのある二十四節気では、1年が春にスタートするため、一番大事な立春の大晦日が節分として残ったそうです。

・・で、二十四節気って、旧暦とどう違うの?

二十四節気は、太陽の運行に基づいた暦。一方、旧暦は、月の運行に基づいた暦。よって、月の満ち欠けの周期で1ヶ月の決まる旧暦の12ヶ月は、およそ354日。太陽暦との1年と比べると、約11日も短いので、約3年に一度、うるう月を入れて13ヶ月として、調整していたそうです。

月の満ち欠けを基準にした旧暦は、夜の明るさを月明かりに頼っていた時代、潮の満ち引きが海上交通に欠かせなかった時代には、重宝したそう。

しかし時を経て、農耕をなりわいとする人が増えるにつれて、種まきや収穫の時期を知るには、・・旧暦、ずれ大きくない?という疑問があり。そこで、1年を24等分する二十四節気が使われるようになったそうです。

なるほど。私、てっきり節分≒旧暦のお正月かと思っていましたが、2021年の旧正月は2月12日。確かに、かなり違います。


鬼の正体から考える祭の意味

さて、節分の主役といえば鬼。・・はて、鬼ってなんなんでしょ?

「追儺」で追い払われた鬼は、疫鬼。鬼は疫病をもたらす存在、疫病や病気をイメージにしたものでした。

昨年夏、京都では58年ぶりに祇園祭も中止となりましたが、祇園祭も元はといえば、疫病退散のため始まったお祭り。こちらも平安時代869年に起源のある、ふっるーいお祭りで、過去の中止理由は、応仁の乱、本能寺の変、明治のコレラ、太平洋戦争!と、どれも歴史の教科書に出てくる、そうそうたる一大事。中止は、異例中の異例です。

残念ながら、今年の吉田神社の節分祭も、メインの行事の大半がキャンセルになりました。由来を考えるとなんだか複雑です・・

現在でも、季節の変わり目は体調を崩しやすいって言います。
だからこそ、立春の大晦日である節分に、鬼を払う習慣が生まれたとのこと。

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ときに、うちの子の園、毎年鬼が来ます。
なまはげ並に本格的な作り込みと迫力の動きで、号泣の園児続出。
だから、小さい頃は嫌いな行事ワースト1に輝いていた節分でしたが、いつしか下の子を守る立場になりました。もう怖くないんですって。
鬼のイラストにむせび泣く少女。そんな時期もあったかな、とキュンとする光景でした。子どもの成長って、あっという間です。


六角形の隠れスーパーパワースポット・大元宮


さて、六角形の隠れスーパーパワースポット・大元宮に到着です。

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普段は非公開のここ、正式名称は「斎場所大元宮(さいじょうしょだいげんぐう)」。神道に、密教や道教を取り入れた吉田神道は、この大元宮を起点にひらかれました。遡ること神武天皇の頃(縄文時代の末期、紀元前660年頃に日本をつくったと言われる初代天皇で、ほぼ想像上の人物。)、全国諸社の起源だとのこと。

八角形の大元宮には、周りの壁との間、前にも横にも後ろにも。
とにかくびっしりと、至るところにお祈りポイントがあります。

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この独特の原始的な雰囲気はなんと表現したらいいのか。
・・チベットっぽい?(行ったことないんですけど)

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鳥居の前で、靴発見。靴を脱いで参拝する人がいたのには、ビックリ。
正真正銘の、スーパーパワースポットです。

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世界でなぜか共通するお豆の神話

さらに先に進むと、お社が分岐していきます。
こちらお菓子の神様「菓祖神社」。

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小さくても山は山。
麓からかなりの段数あがる吉田神社に到着しました。お疲れさまです/

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・・では改めまして質問です。

鬼を払うのに、どうしてお豆をまくのでしょうか?

うすうす感じていた疑問を改めて子どもに聞かれると、思わず口をもごもごしてしまうことってありますよね。

ときに私、最近子どもの影響で、神話にはまっております。
深読みするとディープな世界。大人の深読みのお供にピッタリなこの本に、素朴な疑問へのヒントがありました。その名も「豆の神話学」。

人間は長いこと、人生や世界の本質をとらえるのに、感覚の論理と呼ぶべき具体的なものの論理を使うことを好んできました。

民話にはよく「ずるがしこい狐」が出てきますが、たしかに、狐の生態を見ていると、犬よりもはるかに狡猾でスマートなところがあります。こういう動物こそ、神話的思考の「大好物」なのです。

神話の思考は狐のような動物を大活躍させて、現実では結びつかないものを結びつけてみせたり、とてもおこりそうもない出来事を引き起こして、それによってふだんは表面にあらわれてこない世界のもうひとつの顔を、あらわにして見せようとします。

ー中沢新一「人類最古の哲学 カイエ・ソバージュ(1)

春の訪れと密接な関係のある節分。

実はこの時期には、アメリカ大陸でもユーラシア大陸でも、死者に関わりのある祭りがおこなわれていたそうです。そのときに登場するのが「お豆」。
豆は、鬼=死者の世界とコミュニケーションするための道具だったらしいんです。

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アメリカ・インディアンも、死者の儀礼に豆をまくそうです。ディズニー映画「Remember me」で知られるようになった、メキシコ死者の日(Día de Muertos)は、元々トウモロコシや豆など農作物が収穫される8月に行われていた先住民の祭り。今でも米やトウモロコシ、お豆などで絵を描くそう。

日本でも、お彼岸と同様、立春の大晦日に行われる節分行事は、元々は死者の儀礼でした。

だから、鬼=疫病を追い払うといっても、鬼を禁忌し、遠ざけるのではなく、そもそもは生と死の世界を媒介するお豆の力を借りて、コミュニケーションする行事だったんですね。

そこで、彼岸と此岸をつなぐアイテムであるお豆を撒く。だから節分では、大豆以外にも小豆など、お豆全般をよく食べることに。

お豆の役割に踏み込んでみると、節分の見え方がちょっと変わってきます。

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・・大人な深掘りは中沢新一先生にお任せして(←おい
吉田神社に来たことですし、御利益のある福豆を買いましょう。
おめでたい炒り豆(約20個入り)は、一袋300円也。
なんと「厄よけ福当たり」懸賞抽選券付き!

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今年はどこもかしこもビニールで囲われていましたが、晴れ着のお姉さんが、にこやかに販売していました。うーん、春!

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懸賞品はこちら。じゃーん。300円のお豆で車をゲットも、夢じゃない!?

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春はほら、すぐそこに

なぜか八つ橋屋さんが多い聖護院界隈。例年、店前でお餅をついて、サービスのおぜんざいが振る舞われるのですが、今年はそれがなく。・・残念!

それでも小正月(1月15日あたり)には欠かせない餅花が飾られ、春の雰囲気いっぱいでした。小正月で小豆粥を食べる風習も、一年の邪気を払う目的があるとか。邪気を払うといっても、お豆さんによる「握手」なんですね。

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春はすぐそこ。Spring is just around the corner.
まだまだ底冷えする日もありますが、日一日と日が長くなり、春の気配も。
みなさんそれぞれに、素敵な春の訪れがありますよう*****

お祭りは、伝統や習慣が色濃く残る生きた遺産。
これからも、地元ならではのフットワークの軽さを活かして、京都のユニークな「文化的」景観をご紹介していけたら、と思います。

このマイ京都案内は、1ヶ月に一度目標で更新予定。マガジンにします。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました/

今回の英語での元記事はこちら↓Instagram: @cultural_landscapes_kyoto

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今年は週一アップ目標でnote書きます!(←宣言してしまった

私の仕事のテーマは、
くらしの半径3m→循環をリデザイン→新しいカルチャーの場の建築。

そしてマイキーワードは、母x本(マンガ)

noteでは仕事についても書きたいのですが、キーワードにのっとって、生活者としての視点から、書いていこうと思います。
今回の私的京都案内の他にも、今後予定している内容の一覧(仮

①noteを中心に企画に参加した感想など
むふふ。直近でもいろいろあります。今、書きたいことが「積ん書」・・!

とっておきの子どもの本ガイド
こんなサークルに参加してます。きいすさん主催の『読書KIDS親の会』。
SNSで困っている人は、本を読んで、感想を書こう!おー!

③↑のテーマから、私のデザインの仕事や自力企画について。
現在、本の力を借りた自力学童を妄想中。
目下、ポスタープロジェクト「窓1.8mギャラリー」を近日実施予定。

くわしくはこちら↓

④半径3mでリアルにつながっている人の素敵な活動をご紹介
新しいカルチャーを試行錯誤する素敵な方々をご紹介したいです。

Coming up (maybe) soon!

Instagram(事務所):@3__lab.architects

最後まで読んでいただきありがとうございます。心から感謝します!