見出し画像

「好きを表現できますか?」実践編その2 あふれる想いを整理してみましょう

実作、いただきました! ありがとうございます。Twitterを拝見してると、ご自分で「月曜日に出す」と締切を決めて、ちゃんと出してこられました。爪の垢、煎じて飲みたい。

らぐさんの「好き」の表現

 らぐさんは、工藤さんのライムラインにいらして、いつも熱い熱いヴァン(「うたの☆プリンスさまっ♪」桐生院ヴァン。らぐさんの記事参照)への愛を語っています。
 愛が深すぎてびっくりするよう事件(?)も起こされますが、それこそ「愛故に…」(うた☆プリに出てくる名文句。というか、作品内では過去のヒット曲タイトル)なので、頬笑ましく見ています。

 工藤さんからのオーダーは「A判定出せるくらいに鍛える」。

 私は、いっぱい書いてくる人には弱いんです。書く熱量ってすごいと思うから。この分量だけでもBは出しちゃうなあ。

 とはいえ、もともとの前提がA4版1~3枚相当なので、規定内にまとめる方向で考えてみましょうか。

いいところがたくさんありました

 全体的に、例示もあり、考察もあり、自己分析もあり、で、よくできていたと思います。(というような口調でやりますけど、偉そうで申し訳ない)

 ただ、とっちらかった印象は否めない。特に後半。
 自分だけナニカに陶酔していて受け取り手に伝わっていないところもある。

いつものように逐一やります(大綱)

 大綱と細目、どちらからやろうか悩みました。

 細かな注意はあとからにして、まずは全体構成の話をします。
 よろしければ、細目を読んだ後、また戻ってきてください。

他人の目で全体を書き出す

 私はらぐさん本人ではありませんので、代わりにそのまま書き出しますね。まとめを作るのも勉強なので、ほんとはご自分でチャレンジ!です。

画像3

 これは、scapple という、私にしては珍しい有料ソフトです。
 構造を入れ替えたり関係図を書くときに使います。

 ざっと羅列してみました。
 妙なはしょりかたをしている部分もあるかと思いますが、勘弁してください。

 どうでしょうか。一気に読むと、

・あ、ここで話題が変わってる
・あれ、これってさっきの繰り返し?
・ここはほんとにつながってるのかな

 など、感じるかと思います。

内容を軽くまとめる

画像4

 話題ごとに、ちょっと段差をつけてみました。まだ何も触っていません。
 これだけで、構成がうまい具合に可視化されます。

 どうでしょうか。後半、上の階層(クリスマスカードのエピソード、のようなタイトルめいたもの)ばかりが並んで、段差が少なくなってるのが判るでしょうか。

 それだけ内容を深く掘り下げない(サブの階層をほとんど伴わないまま)羅列している、ということです。

 ただ、短いレポートでは、分量の問題ですべてを掘り下げることはできません。その時に重要なのが、

・短い効果的な、説明や感情表現
羅列であっても、前後のつながりは必要

 ということです。

 らぐさんの場合は、熱い想い、というのが通奏低音のように存在しているので、そんなにブツブツ切れた感じはしませんでした。

問題点を洗い出す

画像5

 花丸、たくさんついてますね!
 よかった点です。

思いっきり愛したい欲求(が自分にはある)
アイドルにはファンが必要
片思い(の行動)を全部やってる

 という考察、

今までのうまくいかなかったのも、現在彼に会えている自分を形成するためだったと思えばまあいい
(自己実現のために)いろいろチャレンジしたくなる

 という、前向きな感情や未来を思わせる言葉(好きになってよかったこと)が書けています。

 ただ、もっと整理はできるし、A判定以上のS判定のためには修整してほしいところもあります。

陶酔しない

 らぐさんの、いいところでもあり、悪いところでもある自己陶酔。私は嫌いではありません。むしろそこまで思い込めるのが羨ましいです。

 けれどもこれは一応レポートのはずであり、そこでいきなり「あなた」という二人称を使うべきではない
 まるで、自分の不幸不運をかこつ昭和歌謡のようでした。

 ♪ たとーえー、わたーしが、あなたを、わすれてえぇぇも~(いま作りました)

 みたいな。

 ここはぐっとこらえて、「彼(ヴァン)を仮に忘れるようなことがあったとしても~」くらいの表現で、距離を保ちましょう。

構成を気にする

 話の順番は大切です。

 いまは高校生は論説文を必ず習うことになっていて、

・頭括型(とうかつがた)……最初に結論、あとから事例
・尾括型(びかつがた)……まず事例、最後に結論
・双括型(そうかつがた)……最初に結論、そのあと事例説明、さいごにまとめとしての結論をもう一度

 てな構造を勉強するわけです。大変だね。私の時にはなかったね。

 私のレポートはこんなにガッチガチの構造は必要ありません。
 ですが、結論と説明の関連性ははっきりしておいたほうが判りやすいです。

 これはレポート全体のことでもあり、ひとつひとつの説明

・私は○○が好き、なぜなら~(頭括型)
・こんなことがあって、だから私は○○が好き(尾括型) 

 の係り受け、因果関係、論の張り方、でも使えます。

 エピソードばっかりあっても何が言いたいのか判らないし、結論ばっかりあってもちっとも具体的に判らない、ということですね。

 試しに、スガが個人的に大事だと思ったところをブルー、ネガティブ感情やちょっと判らないところを黄色、にした図も貼っておきますね。

画像8

構成例

 これまたいつものように、私だったらシリーズ。

画像5

 ずいぶん少なくなっています。
 私が個人的にキモだな、と思ったところのみ抜き出しました。らぐさんはもっと書きたいことがあると思いますので、骨組みだと思ってください。

 今回受けとめたのは「ヴァンはアイドルだから、自分が思いっきり恋してもいい」という感情でした。なので、アイドルだから、に着目してまとめたのが2段落目です。
「アイドルだからくくり」で、他の場所からも情報を移動しているのがお判りかと思います。

 ばっちりまとめて強さを出す。
 書きたいことは何回も書いてしまうのが人のサガっちゅーもんですが、ばらけると力がなくなります。繰り返しがくどく見えます。
 大事なことは、充分に固めてガッと出しましょう。

いつものように逐一やります(細目)

 あー、あー、これもいつものことですが、スガの個人的なアドバイスなので、絶対に従わないといけないわけではありません。一意見として耳に入れておいていただけると幸いです。
 出だしはよかった。定形、定石、オーソドックス。okですね。

画像6

 ただ、ピンクのマーカーが浮いています。どんなふうにスバラシイの? どんなふうに心を掴まれたの? 事細かに書くとさらに紙幅の問題が出てきますので、一言でも「どうよかったか」が判る語句があればと思いました。

画像2

 青天の霹靂というのは、青い空からいきなり雹が降ってくるようなものですから、ガチョーン(古い)というショックを受けたはずです。それが伝わりませんでした。惜しい。
 特に「追い続けて」「いっぱいになってしまい」という継続や現在完了の言葉の後ろだと、突然感がそこなわれていますね。

 ピンクのマーカーの部分は、判りません。残念。ただし、離れた場所にヴァンがエンジェルを大事にしているエピソードが後から書いてあるので、構成を立て直すときに情報を移動してまとめれば、わかるってわかんないよ感はなくなると思います。

画像7

 ピンクの文字で書いたように、「一番欲しい言葉」の直後に、例として「ファンレターを出せば~」などが来るといいということですね。具体例は離さないようにしましょう。

画像9

 これ、いいエピソードだと思います。
 感じ方も共感できます。小さい子供みたいに、という比喩でヴァンの人となりが判って、ほんと、好きな段落です。
 こどもっぽい、という着目点も素晴らしい。

 惜しいのは、ほんとに細かいことですみませんが、語順でした。
「小さな子供みたいに無条件に」の主語が、一瞬判らなかった。直前の主語が、「感じた」のはらぐさん(私)、ですからね。

画像10

 ここは問題ないですね。
 好きになったらいいことがある!という立派な例です。
 枚数制限がある場合に、どう残すか、どうまとめるかが難しいと思いますが。

画像11

 後半、進むにつれてつながりがめちゃくちゃになってきてます。

「嫉妬に苦しんだ」「けれど、それもよし」、の接続をきちんとしておかないと、意味不明になります。

「生きてるって感じ」も、嫉妬に苦しんだ → 生きてる と読ませないために、安全策として、次の段落と入れ替え、尾括型にするほうがいいかもです。

 あと、最後。昭和歌謡のところ。
「あなたを忘れる明日」が理解不能でした。忘れる忘れないは自分の気持ちひとつなので、ウシロアタマをバールのようなものでどつかれるようなことがないかぎり、こんな運命論で片付けてはいけない。
 愛情、いずれなくなるかもしれないよーん。
 そんなふうに感じてしまいます。

画像12

 好きになってもいい(許諾・自己肯定)が可能な相手に、片思いしている女性がするような行動をすべてやっちゃう、というのは、愛の深さを感じました。そして、楽しそうだ! 充分に共感できるところです。

 でもまた、最後は昭和歌謡になっちゃう。どうしてでしょうね。

 恋する資格がない、と思い込んでいる原因がどこにもありません
 上っ面だけの「わたしぃ、不幸なオンナなんでーすうぅぅぅ」に見える。

 結びも「いつかまたね」は、お手紙としてはいいでしょうが、何も伝わってきませんでした。
 今は? 今はどうしてるの? いつかまた、みんなと一緒に応援するだろうけど、今は応援できないの? と。

 本当は判ってます。この社会事情、「みんなと一緒」でないことを言いたいんですよね。
 でも、残念ながら、つながりが足りないせいで伝わってきませんでした。

「好き」の話をしているはずなので、最後の焦点が「みんな」であるわけがない、と思っちゃうんです。

改稿も受け付けます

 長文のにお付き合いいただいて、ありがとうございました。

 今回は厳しかったと思います。
 細かいことまで言い過ぎてます。
 でも、目標はA判定。私はひそかに、S判定のお手本にできるくらいにはなってほしいと願っています。

 細目はともかく、構成の大綱だけでも、直してみてください。

 強制はしませんよー。
 だって、「好き」を書くのが苦しかったら、もったいないじゃないですか!
 楽しく書けるようなら、次の原稿もまってますね。


みなさまのお心次第で、この活動を続けられます。積極的なサポートをよろしくお願いします。