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旅と建築探訪記

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#旅行記

【建築】空を見ながら故人を偲ぶセレモニーホールCrematorium Polderbos(OFFICE KGDVS)

【建築】空を見ながら故人を偲ぶセレモニーホールCrematorium Polderbos(OFFICE KGDVS)

ブリュッセルから北東へ120km、海辺の町オーステンデ。その郊外の干拓地の一画、かつてのレンガ工場の敷地にセレモニーホールがある。

そう、今回の建築探訪はセレモニーホール、つまり葬儀場だ。
以前も書いたが、近年は日本でも海外でも"建築家"がセレモニーホールを設計することは珍しくない。そして建築ファンは罰当たりにもそういった建築も訪れる。もちろん私もその一人。

しかし通常セレモニーホールは突然訪

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【建築】分かっていたのに感動してしまったユニティ教会(フランク・ロイド・ライト)

【建築】分かっていたのに感動してしまったユニティ教会(フランク・ロイド・ライト)

2014年3月、シカゴ郊外のオークパークを訪れた。フランク・ロイド・ライトの自邸スタジオや彼が設計した住宅が数多くある街だ。それら彼の建築を見て回っていた時、近くに代表作の一つであるユニティ教会があることを知った。
早速教会を訪れたが、残念ながらその日、教会のドアは閉ざされていた。

仕方ない。事前に調べていなかった自分が悪いのだ。私は素直にその場を離れた。「いつかまた必ず訪れるぞ!」と誓いながら

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【建築】早朝からテンションMAXな建築探訪はクリーブランド・アーケード

【建築】早朝からテンションMAXな建築探訪はクリーブランド・アーケード

その日、オハイオ州クリーブランドに着いたのは早朝6:30。

朝食も食べず(というかどのお店もまだオープンしておらず)、真っ直ぐ向かった先はダウンタウンにあるショッピングセンター。その名もThe Arcade。

生憎の雨模様で外観は映えない。しかしこの建築の見所は内部だ。

中に入ると圧巻の空間が出迎えてくれる!
朝7:00からテンションMAXである。

クリーブランドのこのアーケードは1890

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【建築】重なり合うガラスが独自の空間をつくるトレド美術館ガラス・パビリオン(SANAA)

【建築】重なり合うガラスが独自の空間をつくるトレド美術館ガラス・パビリオン(SANAA)

妹島和世さんと西沢立衛さんによる建築家ユニット SANAA。このnoteでも何度か記事を書いているように、私のお気に入りの建築家である。今回、久しぶりに海外のSANAA建築を訪れるチャンスがやってきた。しかもアメリカ合衆国のトレドという微妙に不便な場所にある。これは行くしかない!

オハイオ州第4の街トレドは1970年代までは全米屈指の工業都市として栄えていた。またThe Glass Cityとい

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【建築】拝啓、フランク・ゲーリー様

【建築】拝啓、フランク・ゲーリー様

拝啓、フランク・O・ゲーリー様

私が初めてあなたの建築に出会ってからもう15年が経ちました。
そうです。それは建築専門外の私が"建築"というものに興味を持つきっかけだったのです。

初めて見たゲーリーさんの建築はウォルト・ディズニー・コンサートホール。そのありえないウネウネの造形に衝撃を受けました。それ以来、他の誰にも真似できないその独特の造形に魅せられ、私はゲーリーさんの建築を巡礼してきました

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アルヴァロ・シザの建築を見に行ったらテレサ・テンのお墓参りをしてきた話

アルヴァロ・シザの建築を見に行ったらテレサ・テンのお墓参りをしてきた話

それは建築メディアで紹介されていたアルヴァロ・シザらの設計による霊廟の記事を読んだ時だった。

アルヴァロ・シザといえばポルトガルを代表する偉大な建築家である。彼の建築は実際に訪れた人たちからの評価も高いが、その多くは地元ポルトガルにあり、私もまだシザ建築は見たことがなかった。しかもこの建築メッチャ良さそうじゃん。
ヨシ、コレを見に台湾に建築探訪に行こう!

記事によれば、場所は新北市金山区とし

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【建築】飛べ!茶室(藤森照信)

【建築】飛べ!茶室(藤森照信)

諏訪大社、神長官守矢史料館を巡る旅の続き。

諏訪大社上社の神長官を代々務めていた守矢家の裏には長閑な畑が広がっている。

畑の中には史料館同様に奇妙な建物が点在している。いや、小屋という表現の方が合っているかもしれない。その外観を一目見れば、建築に詳しくない人でも、設計者は史料館と同じ藤森照信さんだということが分かる。

そう、この建物群こそ常識にとらわれない自由な藤森ワールドの真骨頂、空を飛び

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【建築】常識破りのデビュー作は神長官守矢史料館(藤森照信)

【建築】常識破りのデビュー作は神長官守矢史料館(藤森照信)

諏訪大社の下社秋宮、下社春宮、上社本宮、上社前宮の御柱を巡った旅の続き。

上社前宮と上社本宮との間には鎌倉街道の旧道が通っている。

数kmの短い遊歩道だが、山の中には「峯の湛」という樹齢約200年のイヌザクラの巨木もあって、散歩にはちょうど良い。

ところで諏訪大社では古代から明治時代初期まで御神体は大祝と呼ばれる現人神、つまり"人"だった。その下で実際に祭事を取り仕切っていたのは神長官をト

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【建築】"スペース"が謎を呼ぶアルス司祭教会(アルド・ファン・アイク)

【建築】"スペース"が謎を呼ぶアルス司祭教会(アルド・ファン・アイク)

心揺さぶられる建築って何だろう?
これまでの建築探訪を振り返ると、自分にとっては教会などの宗教施設に印象的な建物が多かったように思う。今風のスタイリッシュな建築も大好きだが、心落ち着く宗教施設らしい空間が自分の好みに合っているのかもしれない。

今回もそんな建築の紹介である。

人口55万人のオランダ第三の都市デン・ハーグ。

中心部にはキラキラの現代建築が集まるが、その郊外に小さな教会がある。

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【建築】"作品を展示すること"に追求したブレゲンツ美術館(ピーター・ズントー)

【建築】"作品を展示すること"に追求したブレゲンツ美術館(ピーター・ズントー)

"作品を展示すること"
そんなの美術館なら当たり前じゃんって思うよね、普通は。

オーストリア・フォアアールベルク州の街ブレゲンツ。ボーデン湖畔にある街だが、ウィーンやザルツブルクからは遠く、観光としては少々マイナーだ。

もし人々がこの街を訪れるとしたら、主な目的は二つのいずれかだろう。
ブレゲンツ音楽祭か? あるいはブレゲンツ美術館か? もちろん私は後者だ。

1997年オープンのブレゲンツ美

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【街】伊根の舟屋には"ニワ"がある

【街】伊根の舟屋には"ニワ"がある

東京と横浜を結ぶ国道15号。1日数万台の車が行き交うこの幹線道路を1本隔てたところに子安浜と呼ばれる現役の漁港がある。”舟屋”と漁船が並ぶ光景は、京浜工業地帯にありながら都会の中の忘れ去られた場所のようでもあり、近所に住んでいた私にはお気に入りの散歩コースでもあった。

そう、結構"舟屋"好きなのだ。

しかし舟屋といえばやはり伊根の舟屋が有名だろう。
以前から訪れたかった私は初夏のある日、車を走

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【建築】ルーヴル・ランスに似合う空(SANAA)

【建築】ルーヴル・ランスに似合う空(SANAA)

その日、滞在中のベルギー・ブリュッセルは雨だった。市内の美術館は一通り巡ったし雨の建築探訪は煩わしいし、どうしようか…。しかし近隣の天気予報を調べると、少し遠いが晴れている場所があった。しかも有名建築もある!

ヨシ、そこ行こう!

ベルギー国鉄からフランス国鉄に乗り継いでランス駅(Lens)で降りる。建築ファンであれば、ここが何処なのかお分かりになるだろう。

そう、あのルーヴル美術館の別館、ル

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【建築】水と光と影がつくるセレモニーホール Hofheide(RCRアルキテクタス)

【建築】水と光と影がつくるセレモニーホール Hofheide(RCRアルキテクタス)

人生の最後の場、家族や友人が集まり大切な人を偲ぶ場である葬礼。かつてはお寺や個人宅、現在はセレモニーホールで行われることが多い。
そのセレモニーホール、不特定の人が短時間利用するだけなので、装飾は控えめな建物が多い。実用的と言えるが、凡庸とも言える。

しかし近年は、日本でも海外でも建築家が設計した洗練されたデザインのセレモニーホールもある。伊東豊雄さん設計の「瞑想の森 市営斎場」は有名だ。

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【建築】美しい森に溶け込む自然公園のパビリオン(石上純也+STUDIO MAKS)

【建築】美しい森に溶け込む自然公園のパビリオン(石上純也+STUDIO MAKS)

建築家・石上純也。私のお気に入りの建築家の一人だ。しかし実はまだそれほど作品を見ていない。今までにKAIT広場、KAIT工房、木陰雲を訪れた程度である。その中でもKAIT広場はスゴかった。「技術に走り過ぎている」という批判もあるようだが、スゴいものはスゴイとしか言いようがなかった。

その石上さん設計のパビリオンがオランダの公園 Park Vijversburgにある。
「石上さん設計」と書いたが

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