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人とのコミュニケーションによってアウトプットが変わってくる

HIROBA TALK 
水野良樹×小杉幸一

2019.09.23

HIROBAのロゴやサイトのデザイン、音楽作品「YOU」「僕は君を問わない」のジャケットワークなどを担当してくださったアートディレクターの小杉幸一さん。

相手が伝えたいと思うことを形にしていく。
普段、デザインというアウトプットをされるなかで、どんなことを意識しているのか、お話を伺ってきました。

デザイナーというよりは翻訳家

水野 小杉さんには、HIROBAのロゴ、サイトのイメージを考えていただきました。そして、HIROBAの音楽作品「YOU」と「僕は君を問わない」のジャケットのアートワークも手がけていただき、ありがとうございました。

小杉 こちらこそ、ありがとうございます。

水野 最初は、僕が放牧した後に、個人サイトのデザインをしていただいて。
それが本当に素敵なデザインで。そこから、僕がHIROBAを始めるときも、デザインは小杉さんなんじゃないかと思って。

小杉 最初にお会いしたのは、2~3年前でしたね。

水野 はい。でも、長い感じになりましたね。

小杉 そうですね。初めて水野さんのサイトをつくらせてもらって、次にお会いしたのは、お互いの友人の結婚式でしたね。

水野 そうでしたね。

小杉 そのときに、僕は勝手に距離が縮まった感じがして。

水野 ははは(笑)。
小杉さんは、僕の個人サイトをデザインしていただくときの「どんなものにしたいですか?」というヒアリングがすごく滑らかというか、的確で。「色はどんなイメージですか」とか、「どういうことを表現したいですか」「それなら、水野という名前もあるし、文字の中で水がたゆたっているような、流れているような動きを付けてもいいかもしれないですね」と。

今、話し合っていることと、デザインのアウトプットまでの流れが、素人の僕が聞いてもわかりやすい。それはどうやって考えているのだろうと興味が湧いて。一言、僕がお願いしたことをその場でデザインに変換してくださる、それがとても心地よいヒアリングだったんですよ。

小杉 ああ、すごくうれしいです。

水野 だからこそ、いきものがかりの集牧のときもサイトイメージなどをお願いしました。HIROBAも、「僕は自分が考えていることをなるべくストレートにアウトプットしたい」ということで小杉さんにお願いしました。

小杉 ありがとうございます。

水野 相手から言われたことをデザインに落とし込むときは、どういうことを考えていますか?
小杉 基本的にはオリエンといって、まず、どういうものをつくりたいかを確認する場があります。その後に、コミュニケーションのキャッチボールがあって、お互いの意見を交わしていきます。

僕は、デザインで会話をすることのほうがスムーズに進むと思っています。最初のオリエンでいくつか約束した言葉から、なんとなく大まかにルールを決めて、どういうふうに構築していくかを考えます。

そこから先は、言葉ではなく、デザインを60〜70%の仕上がりで見てもらって、最終的にブラッシュアップする。もちろん、デザインのディテールは任せてほしいという思いもあります。でも、大きい舵をとるのは相手だという意識は強いので、その大きく捉えたところが、まず間違っていないかの確認作業がコミュニケーションの大事なポイントになります。

水野 最初のオリエンのときに、非常に論理的に話してくださると感じました。「そのリクエストから、このように転換できますよね」と、素人にもわかりやすく。それが言語じゃなくて、デザインで見てほしいということは、もうそこで言葉で表現することは終わっていて、それが色なのか、形なのか、という具体的なことなんですね。ただ、60〜70%とおっしゃったのが意外でした。ある程度、例えば90%くらいで見せたほうが、わかりやすいのかなと思ってしまいました。言語からデザインに変わるのは、どこの地点からなんでしょうか?

小杉 これはたぶん、水野さんが作詞や作曲をするときと一緒かもしれないですけど、僕はデザイナーというよりは翻訳家のイメージでいます。自分のなかで解釈して自分事にして、それを相手に伝えるというのは、まさに翻訳家というか。橋本美穂さんという「情熱大陸」でも密着された通訳者の方がいらして、僕が海外の方にプレゼンするときに来ていただいたことがあるんです。

注釈:橋本美穂。国際ビジネスの最前線での交渉から、時代を彩る話題の人物の外国人向け会見などで通訳を務める。圧倒的な技術と豊かな表現力が話題となり、2017年6月にTBS系列の人気ドキュメンタリー「情熱大陸」で紹介された。

水野 はい。

小杉 僕は、当日プレゼンするときに、そこに来るだけというイメージでいたんですよ。そうしたら、前日に来てくれて、「今までどんなプロセスで、どのようにこの資料をつくって、どんなことを伝えますか?」とヒアリングされたんです。当日は、僕らがプレゼンをして、それを通訳してくださるんですけど、質問されたことを、僕らを通さず答えたりもするんですよ。すでに自分事になっているんですよね。素晴らしいなと思いました。

水野 それは、すごいですね。

小杉 自分で解釈して、それを言語化したり、ベストな手段として伝えることがコミュニケーションだとすると、僕の場合はその思いや意思といったものを一度解釈して、それを色だったり、写真のトーンだったり、コピーだったり、デザインだったりに落とし込んでいるイメージなんです。だから、そこに言葉を入れると、説得みたいになっちゃう気がして。デザインを見てもらって、そこに相手の思いがきちんと反映されているかどうかを確認してもらうことが大切だと思います。

水野 そこでのリアクションでその後の道はどのくらい変わるものですか?「いいね、いいね」という場合もあれば、「うーん」という場合もあるじゃないですか。そこで方針転換はしますか?

小杉 それこそ、90%以上を見てもらうと、引き戻せなくなっちゃうんですよね(笑)。

水野 戻れる地点が必要なんですね。

小杉 そうです。軸足は定まっているけど、フレキシブルにどこにでも行けるよっていうスタンスですね。意固地になりすぎると、あまりいいものができなくなってしまうので、完成形の60〜70%のアウトプットのイメージで、あまり固めないことが、ミソですね。

水野 ということは、最後の30%くらいのディテールが、ほかの人に譲れないというか、小杉さんのカラーがいちばん出る部分ということですか?

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小杉 そこも、最近では両方あるのかなと思っています。職人的な目線も絶対に必要じゃないですか。最終的にデザインに落とし込む場面だと、最後の1ミリ、2ミリを移動して、これがいいって言える職人的な視点が必要で、個性が出るところだと思います。

僕の場合は、色というのが論理的に話せるひとつの武器だと思っています。むしろ、色こそがコミュニケーションをいちばん円滑にできるものというか。色が明快な作品が多いのは、そういう個性が出ている現れかもしれないですね。

水野 ほかのアートディレクターの方だと、それが色じゃない場合もあるんですか?

小杉 あると思います。コミュニケーションって人と人の関係だから、熱量があったほうがいいよねっていう人は、手書きのアウトプットが多かったりするんです。だから、手書きが好きなわけじゃなくて、手書きが自分のなかで伝わる一番の…。

水野 早いというか。

小杉 早い、機能するもの。

水野 機能するもの。それが小杉さんの場合は色なんですね。

小杉 色だったり、大衆性のあるカルチャーでいうと、アメリカンポップみたいなものが、みんなのものとして僕が広げていきたいものですね。狭いものよりは、みんなに伝えたい広いもの、というイメージです。

水野 HIROBAのロゴでいうと、あれはどういったところから…僕はどんなリクエストをしましたっけ?

小杉 よく覚えていますよ。「パソコンがあってよかった!」と思った(笑)。

水野 どういうことですか?(笑)

小杉 途中まで見てもらったときに、水野さんの顔が一瞬、曇ったんですよね。

水野 えー、本当ですか!?

小杉 ははは(笑)。

水野 そんな失礼な。

小杉 水野さんは「うーん」みたいな感じで。

水野 すみません…。

小杉 いやいや。そこで、僕が「こう思うんです!これがいいんです!」と言っても…やっぱりピンとくるかどうかって一番大切なことだと思うので。そのとき、慌ててパソコンを出して、バババーって作業して(笑)。

水野 な、なんて失礼なことを(笑)。

小杉 いやいや。むしろ、そういうのが顔に出たり、ちゃんと言葉に出してくれるほうがうれしいんですよね。リアクションでわかるので。ちょっとしたニュアンスを意外と見ているんですよ。

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水野 わかります(笑)。コミュニケーションにおける共感能力が高くて、ちょっとした空気の淀みにもすぐ気づく。だから、小杉さんは接していて心地よくて、論理的な部分はもちろんそうですけれども、一瞬、僕がロゴを見て「あ、違う」と思ったのか、自分の違和感を表情に出したこともすぐ、言葉に出る前に気づかれた。それは大事な能力ですよね。

小杉 そうですね。

水野 「こんなデザインはいかがですか?」と、見せていただいたときに違和感があっても、それを説明する言葉を持ってなかったりもすると思うんですよ。専門家じゃないから、デザインで説明する言語を持っていなくて、「何か違うんだよな…」っていう言い方になってしまいがちで。

でも、デザインの専門的なことだけではなくて、それって硬いイメージとか柔らかいイメージとか、直接的にデザインと関係ない、もうちょっとニュアンスの部分を探ろうとする言葉が会話のなかにあって、こちらが言語化できないことも、だぶん、落とし込んでくれているのかなって思いました。

小杉 うれしいです!逆に「これは青で、例えば、コバルトブルーです」みたいに具体的だと…。

水野 「このサイトの色味はこれね」って(笑)。それは面倒くさいですよね。

小杉 そうすると、翻訳家でいる必要がなくなってしまうんですよね。そのイメージがモワモワしているというか、漠然としているほうが、イメージどおりのもの以上に超えられる可能性があるのが楽しいところだなと思っています。例えば、「これはこうで、イラストはもっとこういう感じ」って言われると、逆にそれしかつくれなくなってしまうので、そこはちょっとフワッとした言葉のほうがいいんですよね。相手のイメージを超えたいっていう思いがあるので。

水野 だから、絶対に、対話なんですね。

小杉 対話ですね。

水野 僕のイメージがガチガチに決まっていて、それをただ形にしてもらうのは、完全な下請けというか(笑)。

小杉 そうなっちゃいますよね(笑)。

水野 何て言うんでしょう…言い方が失礼ですけど、それは対話になっていないですよね。でも、小杉さんの場合は対話になっていて、その対話のなかで、あるレベルではそれぞれが自己表現をしている。デザインの分野で自己表現をしていただきながら、さらに対話で出てきた答えに対して自己表現を重ねてくださって、形として生まれている気がして。

小杉 確かに。

水野 そこはすごく大事なんだなと。だから、こちらもリクエストするとき、いつも困るんですけど…例えば、にわか勉強でもいいからデザインの言語をなんとなく知っておいて、細部を指定したほうがいいのか。そうではなくて、ボールをひとつだけ渡して、あとは「これをどこかに飛ばしてください」ってお願いするのか(笑)。

小杉 ははは(笑)。

水野 でも、どちらでもない気がします。無責任になってはいけないですし。小杉さんは、対話するほうがやりやすいんですもんね?

小杉 そうですね。でも、もしかしたら、それも人と人の対話なので、その人によるかもしれないですね。水野さんって…失礼かもしれないですけど、いろんな人格を持てるというか(笑)。

水野 最近、二重人格だって言われる。

(一同爆笑)

小杉 「水」のようだとか、「どこにでも入りこんで姿を変えられるイメージ」があるので、ドーンとしたひとつの水野さんという人格だけではなく、常に自分の立ち位置を把握された上で、全部つくられているのかなと思うと…すごいですよね。

水野 いえいえ。

小杉 水野さんとの対話から、「今回は、こういう立ち位置だな」と読み解いて、そこからどういうデザインにしていったらいいか考えるのがすごく楽しいんですよね。

水野 だから、合うんでしょうね。僕もそうだから(笑)。

小杉 うれしいです。そこは最初にお会いしたときから感じていたことではありますね。

水野 いやぁ、僕もうれしいです。

小杉 「いきものがかりの水野はこう、今の水野はこう」ということをお話しされてましたよね。

水野 そうです、そうです。

小杉 常にポジションを考えて、コミュニケーションをしているのがすごいですよね。例えばヘビメタが好きな人格が出たら、それもたぶん、言語化してくれて、こちらも当てにいけるデザインをつくれるなと。そこは信頼というか、自信を持って任せてもらえる感じがすごくあります。

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人とのコミュニケーションによってアウトプットが変わってくる

水野 小杉さんのそういうコミュニケーションの取り方、視点、デザインを話し合っていく上での手法というのは、それは培っていくものですか?それとも、もともとご自身に備わっていた能力ですか?アートディレクションの世界に入っていこうとされたのは、なぜでしょう?

デザイン関係の仕事では、自己表現がしたい、自分の内面を形にしたいというタイプの人も多いような気がします。でも、そういう仕事ばかりでもないじゃないですか。自己表現だけではなく、基本的には受けた仕事に対してどう応えていくか。そういう姿勢はどの段階で身についていくんでしょう?

小杉 僕はそこが明快で、子どものころは、実は描きたいものがなかったんです。でも、人のリアクションを見るのが好きだったんですよね。手先が器用だったので、すごくリアルな絵を描くと美術の先生が褒めてくれて。

水野 なるほど。

小杉 ドラゴンボールの悟空を上手く描くと、同級生が喜ぶ。おばあちゃんの誕生日に、おばあちゃんをデフォルメした似顔絵を描くと喜ぶ。結局、自分が描きたいものはなかったけど、人のリアクションを見ることが好きだったんですよね。それを最大限にコントロールできるものが、たぶん、絵だったのかなと思って。

水野 おもしろいですね。そもそもコミュニケーションツールみたいなことなんですね。

小杉 そうですね。まさに。

水野 誰かを喜ばせるときに、歌を歌う人もいれば、絵を描く人もいる。小杉さんは絵で、しかも、その人に合わせて考えて描かれていた。

小杉 どうすれば喜んでくれるか。

水野 素敵だなぁ。

小杉 もしちょっとでも音楽の才能があったら、それを手法にしていたのかもしれませんね。

水野 それは、おもしろいですね。

小杉 美術の大学に入るときに、そういうものはデザインだって初めて概念がわかって。それで、進んでいったんですね。

水野 アートじゃなくてデザイン。

小杉 そうです、デザインであると。

水野 でも、話し合っていくのって技能が必要じゃないですか。それは社会人になってからですか?

小杉 アートディレクターは、出来上がったものだけが力量じゃなくて、それはたぶん、音楽のほうが純粋だと思うんですけど、その人の経験だったり、それを完成させるまでのプロセスのほうが重要じゃないですか。

例えば、ひとつのポスターをつくるにしても、そこで印刷会社の方も関わる。ポスターだと、プリンティングディレクターという方がいらっしゃって、その人とのコミュニケーションによってアウトプットが変わってくる可能性がある。

そういう話を師匠から聞いて、自分の行いのすべてがこの1枚になっていくっていう意識を植え付けられたんです。

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水野 なるほど。

小杉 電話のタイミングが悪い人といい人がいるじゃないですか(笑)。

水野 わかります(笑)。

小杉 忙しいなかで、誰かに電話しなきゃいけないタイミングを一日のうちのいつにしようかというのも、その人のセンスというか。そういうことも含めてのコミュニケーションで、全部を大切にしていかないといいものができないというのが、僕の師匠の教えで。

水野 いやぁ、おもしろいですね。コミュニケーションを経たストーリーの総和というか、最後にたどり着くまでに、全部影響を受けているんですね。創作物って一人の人がいて、ディレクションする人、つくる人がいて、その人の技術や意思だけがその結果に直結しているかのように思えるけど、そうじゃなくて、周りとの会話、空気感、全部のコミュニケーション、物語すべてが、最先端につながっている。

小杉 そうですね。ようやくそこで表面ができるような。さっきのプリンティングディレクターで例えると、僕からすると、印刷会社に頼むときはオリエンなんですよね。

水野 はい。

小杉 だいたい、デザイナーって詳しくなっちゃうんですよ。紙の種類とか。「紙はMr.B(ミスターB)、インクはスーパーブラックで、こういうふうにしたい」みたいな。そこを例えば、「今、Mr.Bとスーパーブラックで考えているけど、もっと荒々しくしたいんだ」と言ったら、プリンティングディレクターが、「それなら、晒竜王(さらしりゅうおう)という紙がありますよ」と。そこでコミュニケーションが生まれて、さらに良くなっていきますよね。まさにオリエンのように、「これ」と言わずにイメージを伝えてもらったほうが、いくらでも提案できる。だから、オリエンのようなコミュニケーションは、日常どこにでもあるんですよね、きっと。

水野 それは大事ですよね。HIROBAのコンセプトとして、そのまま使いたい(笑)。

(一同爆笑)

小杉 実際にHIROBAのコンセプトも、そこに通じるものがありますよね。HIROBAのコンセプトを聞いておもしろいなと思ったのが、今の時代、新しいことがいきなりできるのって無理じゃないですか。「デザインあ」っていう番組があるじゃないですか。あの「あ」って、最初聞いたとき、あいうえおの、あ行の一番最初の「あ」だと思っていたんですけど、デザインで何かと何かをくっ付けた新しい概念が出るときの、「あ」っていう発見でもあるんですよ。

注釈:「デザインあ」。NHK Eテレで放送中の番組。こどもたちの未来をハッピーにする「デザイン的思考」をはぐくむことをテーマに、身の回りにあるものを、斬新な映像手法と音楽で表現。子どもはもちろん、大人も楽しめる番組として人気を博している。

水野 あ!なるほど。あ、今言っちゃった(笑)。

小杉 言っちゃいますよね(笑)。例えば、このモチーフとコップを一緒にして、こういう新しいコップができるかもしれないっていう、その視点が意外と大切というか。だから、いきなりゼロから1のものは無理で、1をどうやって100に、さらに100以上にするとかということの組み合わせが重要な時代になると思います。HIROBAのコンセプトはまさにそうですし、そういう場なのかなって、最初に聞いたときに思いました。

水野 複合的な要素は大事ですよね。作品というものは、いろんな人とのコミュニケーションがあって、いろんな人が関わっていて、いろんな人の意思決定が入っていて、その空気感も含まれていて、複合的な要素で出来上がって…そこに、たまたま作者としているみたいなことも多くて。

HIROBAをソロプロジェクトと言わないという…すごくひねくれたことを言っているんですけど、ソロプロジェクトじゃないというのは、要は、複合的な産物がどんどん生まれていくということです。ある1人の人格が、あるひとつの作品と直結しているだけの関係性でアートが生まれるわけでもないだろうということが、ひとつの視点としてあるのかなと。

今の世の中、これが正義だとか、これが正しいとか、ひとつの答え、ひとつの軸だけで世の中を捉えようとするけど、実際は縦軸、横軸、いくつもの軸がある。デザインを考えるなかで大事にされていることを伺ったときに、自分とリンクする部分がたくさんありました。

小杉 水野さんを見ていると、そういう部分も共感するときがあります。

水野 共感していただけるから、僕も、同じように共感できるんでしょうね。

小杉 うれしいです。

水野 たぶん、小杉さんにお願いしたら、それこそ僕の想像を超えたものを見せてくれる。想像を超えているけど、求めていることと違うことではない。一緒に同じ方向を見て遠くまで行こうとしていて、自分ができない行き方や、行くことができないところまで連れて行ってくれる。

小杉 うわ、うれしい!

水野 そういうことを、あらためて感じました。

小杉 顔に出たりとか…「いやいや、ちょっと」っていうことがあるから、また考えられるというか、そこを軸足にして進めていける。そういうリアクションをしてくれるのは意思があるからですよね。何でもいいっていう方もいらっしゃるんですよ。ただ、好き嫌いで決めちゃうような。そこに意思があるから、言葉にできなくても何か出ちゃったりする。そういうところはデザイナーとしてキャッチしていかないと、いいものができないんじゃないかなと思っています。

水野 いやぁ、素晴らしいですね。ありがとうございました。

小杉 こちらこそ、ありがとうございました!

(おわり)

小杉幸一(こすぎ・こういち)
クリエイティブディレクター/アートディレクター。
武蔵野美術大学卒業後、博報堂に入社。
ブランディング、イベントのほか、空間、
テクノロジーを使った従来の型にはまらない
広告のアートディレクション、アパレルブランドとの
コラボレーションなど幅広く活躍。
小杉幸一Twitter

Photo/Manabu Numata
Text/Go Tatsuwa
Hair & Make/Yumiko Sano

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