池永寛明|社会文化研究家

コロナ禍・ウクライナ紛争を契機に構造変革しつつある日本社会の過去・現在と未来を構造的・…

池永寛明|社会文化研究家

コロナ禍・ウクライナ紛争を契機に構造変革しつつある日本社会の過去・現在と未来を構造的・文化的に捉え、未来を展望・発信。AIと社会をつなぐデータビリティコンソーシアム事務局長・Well‐Being部会長、堺屋太一研究室主任研究員など。著書(「日本再起動」「上方生活文化堂」など)

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    日経COMEMOは、様々な分野から厳選した新しい時代のリーダーたちが、社会に思うこと、専門領域の知見などを投稿するサービスです。 【noteで投稿されている方へ】 #COMEMOがついた投稿を日々COMEMOスタッフが巡回し、COMEMOマガジンや日経電子版でご紹介させていただきます。「書けば、つながる」をスローガンに、より多くのビジネスパーソンが発信し、つながり、ビジネスシーンを活性化する世界を創っていきたいと思います。 https://bit.ly/2EbuxaF

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インバウンドの本当の意味―みんな一緒から、みんないろいろ時代に(上)

30万円のフランス料理、10万円のお寿司、1万円の海鮮丼があらわれる。それでも「安くて美味しい」と日本に来た海外の人が嬉々として食べる。コロナ5類移行の昨年5月から、世界からの観光客が一気に戻ってきた。全国の観光地に訪ねて、どこもかしこもが観光客であふれ、「オーバーツーリズム」と呼ばれる現象をひきおこして、コロナ禍での低迷から一気にV字回復しようとしている 1室1泊30万円、50万円のホテルも出てきた。誰が、そんな高い部屋で泊まるのだろうかという心配はいらなかった。すぐに予

    • なぜ東京のトイレはキレイなのか?―コンテクストのないところに、コンテンツは生まれない

      目に見えて日本の人口が減っている。街のなかで高齢者が多くなってきていることは実感していたが、子どもや若者がぐんと少なくなってきたと感じるようになった。飲食店や商店や工場や建設や交通・物流の現場では、人が集まらない。外国労働者が増えている。大阪のある区では、世界から60ヶ国の外国人が住んでおられるという。多国籍都市と言われていたオーストラリアのメルボルンで23ヶ国だと聴いたことがあったが、その数を大きく上回っている。すでは、日本は多国籍社会である 1 江戸時代の大奥があれだけ

      • 会社員という「職業」が消えるー(続)テレワークが戻るのは「元ワーク」か?

        テレワークをやめて会社に戻れというが、その戻ろうとするワークスタイルは、60年続けてきた「元ワーク」ではない。コロナ禍に入り4年経て、テレワークで仕事に支障が出ているから、コロナ禍前のように会社に集まって仕事をしようと会社はみんなに命じるが、そのワークスタイルは元のワークではない。これを読み違えたら、これからががらっと変わる 1 職業欄から、「会社員」が消えた かつて普通にあった職業欄の「会社員」という項目が減っている。会社に所属しているという意味で「会社員」と書いていた

        • テレワークが戻るのは元ワークか?

          出社スタイルに戻す企業が増えている。テレワークが元ワークに戻ろうとしているのか?戻るのは、元ワークなのだろうか?テレワークから戻っていこうとしているのは元ワークではなく、新しいワークではないか? 賃上げと人材育成、働き方改革、少子化対策、こども未来戦略を議論している人たちは、日本の就業観、ワークスタイルがどう変わりつつあるかが見えているのだろうか?変化の構図を読み解くキーワードはこの言葉  気持ち悪い 1「気持ち悪い」と思う人たち テレワークから出社ワークに戻ろうとし

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          右と左が反転するー鏡のなかのあなたの本

          「売れない、企画が通らない。手直しをしてください」と相談され、企業のお客さま向け提案書や企画書をみることが多い。しかし、こりゃあかんというモノが多い。なにが言いたいのか分からないモノは論外として、論点がないモノや構造化されていないモノやストーリーがないモノが多いが、それよりも根本的に提案書・企画が通らない「ノックアウトファクター」(それひとつで終わってしまう決定的不可能な要因)が存在している お客さまを観ていない 自分しか見ていない そんな提案書や企画書が多い。だから売れ

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          アートは街を変えられるか?ースペインで日本を感じる(下)

          ディズニーの白雪姫城のモデルは、スペインの古城。セゴビアには、900年前に建てられた世界遺産のアルカサル(王城)があり、古代ローマ時代に建設された水道橋は、2200年後の現在も使われている スペインのバスク地方を走っていると、瓦の屋根の家が多いことに気がつく。瓦は、アジア・イスラム文化の影響。瓦の発祥は定かではないが、古代ギリシア、中国、イスラムにあったという。どちらにしろ、アジアから世界に広がったものである スペインは、ギリシア、ローマ、キリスト、イスラム、アフリカの文

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          世界一の美食都市サンセバスチャンに学ぶースペインで日本を感じる(中)

          街は生き物である。街は、変わる。その街がそこに存在している風土、立地性という必然性がある。それらから、歴史、文化が醸成されていくが、その街の人々がありたい姿を願い、それを実現する戦略を描き、時を連続的に継続的に重ねることができたら、街は変えることができる。それを成し遂げたスペインのサンセバツチャンを訪ねた 1 美食都市サンセスバスチャンは、どうつくられたのか? 料理も変わる 世界の料理の中心は、70年代まではフランス料理だった。80年代にイタリア料理がブームになり、90年

          世界一の美食都市サンセバスチャンに学ぶースペインで日本を感じる(中)

          外国人マネーが飛んでいる。そのあと、どうなる、どうする?

          マネーが飛びかっている。日経平均株価はいよいよ史上最高値に迫るが、実態実感なき高株価だと多くの人は感じている。昨年5月のコロナ5類移行から、円安からも空前のインバウンドブームとなっているが、街の風景が変わった。これまで日本の定番だった観光地だけでなく、意外な場所が外国人観光客で賑わうようになっている。そしてラグジュアリーホテルや高級旅館は1泊10万円・20万円が普通となり、1泊50万円100万円のホテルも増えた。その価格は世界基準だという人もいるが、そもそも世界と日本の賃金レ

          外国人マネーが飛んでいる。そのあと、どうなる、どうする?

          酢が入っていない寿司―スペインで日本を感じる(上)

          表面的には、コロナ禍はなくなっていた。しかし見えないコロナ禍影響・変化が濃厚に刻まれていた。そんなスペインとフランスを歩いてきた。   「日本に勝る国はありませんよ」と、スペインのマドリードの空港に着いて不意に語ったベテラン添乗員の呟きから、旅が始まった。 1. スペインで、日本を感じる 海外に行くというということは、日本を見つめ直すことでもある。スペインを歩きながら、日本を感じた 日本はすごいな そう、感じる事柄も多い。しかしそれは日本が営々と何世代もかけて築きあげ

          酢が入っていない寿司―スペインで日本を感じる(上)

          また、東京一極集中に戻っている―まるでコロナ禍がなかったように(下)

          まるでコロナ禍がなかったように。コロナ5類以降に伴い、東京圏が転入超過に戻り、「東京一極」集中が、ふたたび強まる。この記事を読み進めるうえで、驚くコメントがでてくる―「国際経競争力を維持するため、東京圏の成長は重要だ」というが、それ、本当?東京一極集中で、この30年、日本の競争力は低下しつづけている。それだけが原因ではないが、東京一極集中に戻って、日本、いいの? 1 東京は、どうなっていく? なぜ東京だけ、人が増えつづけるのだろうか? なぜ東京だけに、人が集まりつづけるの

          また、東京一極集中に戻っている―まるでコロナ禍がなかったように(下)

          世界が日本を買っている?―まるでコロナ禍がなかったように(中)

          どないなってんねん?コロナ禍時代となって4年。まるでコロナ禍がなかったように、みんな、出社している。通勤・通学電車も、昔のように混雑するようになっている どないなってんねん? 2020年4月の緊急事態宣言から、23年5月のコロナ5類移行の3年間に大きな社会変化が進んだ。2024年1月、まるでコロナ禍がなかったかような都市の風景に戻り、オフィスが人の集まる場所に戻ろうとしている 1 世界が日本を買っている 日本平均株価が高騰している。バブル後34年ぶりに最高値を更新して

          世界が日本を買っている?―まるでコロナ禍がなかったように(中)

          まるでコロナ禍はなかったかのように(上)

          朝夕の電車は混んでいる。阪急百貨店の食品売り場は歩けないくらい混んでいる。レストラン街も混んでいる、1時間2時間の待ち時間待ちの人気店もある。京都の嵐山の渡月橋も混んでいる。御堂筋のオフイス街を歩いている人がいっぱいいる。マスクをされている人はまだまだおられるが、めっきり減った   まるでコロナ禍がなかったようにーコロナ禍前に街が戻りつつあるように、人が行動している。こどもが成長するなか、自分の弟や妹が生まれたとき、「抱っこ抱っこ」と赤ちゃんのような行動をとることを「赤ちゃん

          まるでコロナ禍はなかったかのように(上)

          あなたは、もう主役ではない

          日本は高齢者人口が多いから高齢社会と言われるが、高齢社会の課題はそこだけではない。真の日本の高齢社会の課題は、高齢者が社会の主役でありづけようとしていることではないか?そのことが日本にどんな影響を与えているのか? 1 40歳年上の人はどう見えますか? 「あなたは、現在、おいくつですか?」 今年、65歳になります。「とすると、40年前のあなたは25歳でしたよね。あなたは、日常的に25歳の人を見たり会ったりしますか?」 はい、25歳の若い人はお会いします。「40年後、あなたは

          あなたは、もう主役ではない

          リセットボタンを押すのは、あなた。

          既視感を覚える。その避難所の風景は28年前の1995年1月の阪神・淡路大震災の避難所を、12年前の2011年3月の東日本大震災の避難所と重なる。避難所の状況も、被災されて困っておられる事柄も、行方不明者の捜索に奮闘されている姿も、これまでの風景と酷似している。同じことが繰り返される。突然に発生した大きな地震だから、そうなる―果たしてそうなのだろうか? 1 なぜ同じことを繰り返してしまうのだろうか? 変わらなかったのではなく、変えなかったのではないか?変えることはできたのに

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          ショックドクトリンには気をつけて

          「天災は忘れた頃にやってくる」とよく言われるが、令和6年1月1日の 日本を、能登半島地震が襲った。大阪でこの地震に遭遇したが、27年前の阪神・淡路大震災以来の大きな揺れを感じた。2日3日が経過しても、能登では余震がつづいている。震度1以上が1日から4日16時段階で600回を超えている。地殻変動、各地で液状化。凄まじい。12年前に、同じく余震がつづく東日本大震災を東京で過ごした日々を思い出す   ショックドクトリンという言葉がある。社会に壊滅的な惨事がおこり、人々がショック状態

          ショックドクトリンには気をつけて

          日本から失われつつある、とても大切なことーどないなってねん(下)

          なにごとも観ようとしないと、なにも見えない これだけ現実の社会で人口構成・年代構成・家族構成が変わっていたら、街の風景が明らかに変わっていることが目に見えていたはずである。しかしある一定の幅の年代で構成されている役所や会社や工場、同じような世代で構成されている学校だけで過ごしていたら、真の街の風景は見えない。だから世の中を見間違ってしまう 1  見える変化と見えない変化 衝撃的なグラフ。未婚の人がこんなに増えている。増えていることは認識していたが、トレンドで見たら、凄まじ

          日本から失われつつある、とても大切なことーどないなってねん(下)