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新型コロナ感染シミュレーションイタリア編 (1)見えてきた未曾有の危機

日本全国の感染者数シミュレーションの数式をイタリアのデータに適用しました。
https://www.worldometers.info/coronavirus/country/italy/
その結果、目を覆いたくなるような惨状が見えてきました。3月末からすでに感染拡大の連鎖が始まっています。既存ピークが公表陽性患者数12万人規模、新たに発生したピークが19万人規模です。その結果、シミュレーションでは、陽性患者数の増加は5月中旬まで続き、30万人を超え、死者数は7万人に迫ります。
さらに恐ろしいのは、死者数から推定した潜在的な感染者の数です。日本全国データのシミュレーションでは、陽性患者数の1.8倍(合わせて2.8倍)と推定されましたが、イタリアのデータでは、9.5倍(合わせて10.5倍)です。感染者の20%が発症すると報告されておりますため、この推定が意味するのは、公表陽性患者数の2倍程の人数が、発症し発熱や激しい咳の症状を持ちながら、病院にすら行けていないということです。4月7日現在、その数は24万人と推定されます。人口10万人あたり400人です。つまり、人工10万人の町に400の感染ホットスポットがある換算になります。これでは、どれだけ移動制限をかけても、感染ピークの連鎖(オーバーシュート)が起きて不思議ではありません。潜伏期間(感染から発症するまでの日数)平均を7日と仮定して、発症者のみが感染を広げるという仮定で、図中、潜在スプレッダー数として表しています。

日本に比べ、初動で検査を徹底的に実施したと言われるイタリアでどうしてこんなことが起きるのでしょう。幸いなことに、ピークの分散により、入院患者数の増加は抑えられています。しかし、長期戦で医療機関の疲弊が限界を超えると、壊滅的な医療崩壊が懸念されます。そして、さらに連鎖が発生すると、集団免疫が獲得されるまで、感染拡大が続くことになります。ここで、隔離処置が行われたダイヤモンドプリンセス号のデータを引用し、感染率20%で集団免疫が獲得され、致死率2%と仮定すると、今期中、イタリア全土での実感染者数は3000万人、死者数は62万人になります。

一般的に、獲得免疫をもとにした疫学的数理モデルでは、集団免疫獲得に必要な感染率は60%以上と推定されていますが、コロナウイルス自体は完全新規ではないことと、獲得免疫だけではなく自然免疫(innate imunity)を考慮すべきと考えて、20%としました。ある意味希望的観測を含めた数字ですが、3600人の濃厚接触者中711人が陽性確定し、11人が死亡したダイヤモンドプリンセス号のデータとは矛盾しません。

死者数60万人以上となると、第二次世界大戦の惨禍に匹敵し、中国、アジア系企業が襲撃される等、暴動が発生する危険すらあります。

杞憂に終わることを切に願うばかりですが、ここで使用したシミュレーションの数式は、中国発表の感染者数、死者数のデータにも当てはまります。いかに強硬な感染封じ込めを行っても、感染者数の分散は正規分布(ガウシアン曲線)になることを示しています。人為的な感染封じ込めで出来るのは、(そして最も重要な事ですが)感染拡大の連鎖を起こさないことと考えられます。

幸いと言うと語弊があるかもしれませんが、日本全国データ、東京都のデータ共に、現状では上記潜在スプレッダー数は低く抑えられています。緊急事態宣言は遅きに失した(欧州由来と考えられる感染ピークを防げなかった)感がありますが、今できることは、1ヶ月間の移動制限を遵守し、感染拡大の連鎖を断ち切ることだと思われます。

ちなみに、中国発表の感染者数、死者数のデータ(記事より参照)は、1月21日付近、ピーク左側が不自然に立ち上がり、死者数増加と感染者数増加が同時に起きています。これは、よく言われているように、検査法確定前の症例数が統計に含まれていないためですが、1月7日の週に起きていたと考えられる数千人規模の感染爆発がせめてWHOにでも正しく報告されていれば、SARS同様のエピデミックに終わり、今回の世界的な未曾有の危機には至らなかったと思われ、悔やまれてなりません。

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