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孫子の文章構成は小論文だった。

こんばんは。読書の秋ですね📚

 今日は、孫子の兵法の読み下し文を例にとり、その文書構成を読み解いて行きます。(高校生時代、漢文にちっとも興味が無かったのに、今こんな記事を書いてるなんて不思議です。)

基本は、現代の小論文と同じ構成

 現代の、いわゆる論説文や受験でよくある小論文と、構成は似ているようです。すなわち、以下のような順序で構成されています。

(主張)→(根拠)→(事例)→(結論)


 古今東西を問わず、このフレームワークなんですね。あらためて納得。

孫子の兵法「作戦篇」を例に解説


 孫子の兵法は13篇で構成されていますが、各篇はとても短い文章です。今回は2番目に現れる「作戦篇」を例にとり、上記のフレームワークを意識して解説します。

<私の超意訳>

(主張①)戦争をするには、多大なリソースを消費するから国を危うくする。
だから長期戦はダメだよ。

(根拠・事例①)長期戦になったら兵はだんだんやる気を失い、城責めしたら持久戦になってお金と食糧がいっぱい必要。
(結論①)長期戦が有利だったことは無い。だから、戦争の負の側面を知らない指導者は戦争によって利益を得ることはできないよ。
—-
(主張②)戦争の上手い将は、食糧を自国から求めず、敵からせしめるから、戦場の食糧に困らないんだ。
(根拠②)食糧を自国から持って来るには遠いところから運搬する必要があり、とっても大変。
(事例②)敵からせしめた食糧は、食糧の20倍の価値がある。
—-
(主張③)敵を殺すと怒りの感情が残るが、敵の財産を奪うと利益を得られる。
(根拠・事例③)戦車を奪ったものには褒章を与える。
(結論③)すると戦い戦利を得ることでますます強くなる。
—-
(全体の結論)
 戦いは勝べし。長期戦はダメ。戦を知る将であることこそ、民の命を救い、国家の存亡を握るのである。

 以上です。

 主張は3つありました。それぞれに概ねフレームワークどおりに論説され、最後の全体の結論が来ます。

 参考までに、書き下し文を以下に掲載します。各篇、非常に短い文章です。こんなにコンパクトな中に、色濃いエッセンスが詰め込まれているのですから、あらためて尊敬します。
(参照:https://sonshi-heihou.com/category/孫子全文書き下し/)

二章:作戦篇

孫子曰く、およそ兵を用うるの法は、馳車千駟、革車千乗、帯甲十万、千里にして糧を饋るときは、すなわち内外の費、賓客の用、膠漆の材、車甲の奉、日に千金を費して、しかるのちに十万の師挙がる。
その戦いを用なうや久しければすなわち兵を鈍らせ鋭を挫く。城を攻むればすなわち力屈き、久しく師を暴さばすなわち国用足たらず。それ兵を鈍からせ鋭を挫き、力を屈くし貨を殫くすときは、すなわち諸侯その弊に乗じて起こる。智者ありといえども、そのあとを善くすることあたわず。
ゆえに 兵は拙速を聞くも、未だ巧の久しきを睹ざるなり 。
それ兵久しくして国の利する者は、いまだこれあらざるなり。
ゆえにことごとく用兵の害を知らざる者は、すなわちことごとく用兵の利をも知ることあたわざるなり。


善く兵を用うる者は、役は再びは籍せず、糧は三たびは載せず。
用を国に取り、糧を敵による。
ゆえに軍食足るべきなり。
国の師に貧なるは、遠く輸せばなり。遠く輸さば百姓貧し。師に近き者は貴売すればなり。貴売すればすなわち百姓は財竭く。財竭くればすなわち丘役に急にして、力屈し財殫き、中原のうち、家に虚しく、百姓の費、十にその七を去る。公家の費、破車罷馬、甲冑矢弩、戟楯蔽櫓、丘牛大車、十にその六を去る。ゆえに智将は務めて敵に食む。敵の一鍾を食むは、わが二十鍾に当たり、きかん一石は、わが二十石に当たる。


敵を殺す者は怒りなり。 敵の利を取る者は貨なり 。
ゆえに車戦に車十乗已上を得れば、そのまず得たる者を賞し、しかしてその旌旗を更め、車は雑えてこれに乗らしめ、卒は善くしてこれを養わしむ。これを敵に勝ちて強を益すと謂う。

ゆえに兵は勝つことを貴ぶ。久しきを貴ばず。ゆえに兵を知るの将は、生民の司命、国家安危の主なり。孫子の文章構成

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