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ファッションは、理論ではない。

世の中は三連休だったのですね。フリーでやってると曜日の感覚が薄くなり、人出が多いと「ああ、休みだったのか」とようやく気付きます。脈絡もなくスキー行きたい。80〜90年代の冬ソングだけ掛かるスキー場とか行きたい。広瀬香美のストロボのサビ「eternal love〜」がどうしても「It's turn around」にしか聞こえません。

 
今日はストレートに「ファッションは理論ではない」というお話です。というのは、もうあまりになんとか診断だとかなんたらカラーだとか、そういうのが多すぎるもんで。一概に否定するものではないですが、ビジネスが絡んできて玉石混交になっていることは間違いありません。

 
バイヤーや販売員、スタイリストを経験した現場の人間からすると色々余計なことを言ってしまいそうなのでいきなり決定的な話をしてしまいますが、最大の理由は「そもそも洋服が理論で作られていない」からです。

 
ハイブランドのデザイナーがなんとか診断を元にして洋服作ってますか?そういうの気にしてると思いますか?

 
ひとつの証左として、ディオール時代のラフシモンズを追ったドキュメンタリー映画「ディオールと私」の中で、デザイナーがどうやってコレクションを作り上げていくのかが描かれています。ちなみに彼は工業大学卒で、正規のファッション教育を受けていないことでも有名。

その中でラフは、一枚の絵を皆に見せ「これが表現できるような生地を探して欲しい」とオーダーします。それは彼のインスピレーションであり難儀な注文にスタッフが東奔西走するのですが、どのブランドのコレクションインタビューを読んでも、素敵だと感じるメゾンは皆デザイナーのインスピレーションを具現化することだけに命を掛けています。それがブランドの個性であり、生命線になっているから。

 
ゆえに、ユーザーもそれに応えて、自分が好きだ・着てみたいと思うブランドやアイテムを自由に選ぶのが正しい。ファッションは自由だからこそ楽しいんです。そこに理論が立ち入る余地などない。「好き」が先にあって、より似合うものを選ぶのは次のステップです。

 
例えば「この絵のどこがどう良いのか」を解説されてもそれで買う気にはなりませんよね。どう言われても良いものは良いし、好きなものは好き。それより作者のプロフィールや想いを聞けた方が興味が湧くでしょう。

 
もうひとつそもそもの話をすると、本来スタイリストや販売員の仕事で大事なことは「可能性を広げてみせる」ことであって「選択肢を狭める」ことではありません。でも「この色この形以外は着ません・着れません!」という人が量産されている現状は、教えてる側に問題があるとしか思えないんですよね。順番が逆。

 
これは、本来受講者のための理論であるはずが教えを広めるための体系化になってしまっていることが原因でもあるでしょう。分かりやすくするために消去法で選択肢を消す。センスは教えられないからマニュアル化する。いや教えるなら自分のセンスに理解のある人だけ弟子に取れば良いじゃない。

 
あと本題から逸れますがこれだけは言っておきたい。
教える側の勉強不足もかなり大きい。ブランドもロクに知らない、背景も分からないでどうやって勧めてるのか理解に苦しみます。ブランドオタクであれば良いわけじゃないけど、最低限インポート主体のセレクトショップに並んでるブランドくらいは補足情報を言えるくらいにしとかないと。最近はお客さんの方が詳しいこともザラだし、そこで足元見られちゃうよ?

 
話を戻して。
もうひとつの理由は「ファッションは気分」だからです。

 
ある朝起きてみると、今日は無性に黒を着て出かけたい気分だった。急に黒髪をアッシュに染めたくなった。それは理屈じゃなくて気分でしょう。理論で対応することは不可能です。

 
「ファッションは時代を映す鏡」と言いますが、実際イケイケの時代にはタイトミニが流行ったり、オーガニックで自然な暮らしに注目が集まれば森ガールが流行ったり、時代の気分と連動しているのがファッションです。

 
だから個人レベルでも、その時の気分で洋服を選ぶのが正しい。
今日はなんかハイテンションだから赤!人に会いたくないから黒、、気持ちに正直でいいんです。一度決められたものを守って選んでいくと、どんどん窮屈になっていく…実際そういう話は僕が聞くだけでも相当増えてきています。

 
要は、その時の自分が似合うと思えるもの、着ていて満足を感じられるものを選べればいい。それには理論じゃなく経験が必要ってことです。色んなものを見て、着て、今の自分にはどんなレベルのものが合うのかを知る。そこの軸が決まれば後は好きに選んでも大丈夫です。自然と似合わないものは選ばなくなる。

 
どんなジャンルでも、完璧な理論というものは存在しません。ある程度当てはめられても必ずどこかで齟齬が出てくる。それならば、自分で判断できる経験とセンスを磨いた方が後々役に立つはずです。理論より実践が大事なのは、ファッションについても変わりはありません。

 
最後にもうひとつ言いたいのは、ファッションの原動力は「パッション」「エモーション」だということ。いかにサイズがぴったりだろうと理論が完璧だろうと、着る人と服にその2つがなければ素敵に見えないし、何よりワクワクしません。本来ファッションはデザイナーの情熱から生まれるものなのですから。

 
僕の役目は、洋服が生まれる現場の熱をその「温度」を落とすことなくエンドユーザーに伝えるのこと。それは理屈では伝えられないから、これからも時折無駄に熱く発信していきたいと思っています。

 
エブリバディパッション。
このフレーズをまだ覚えている人がいるか、本当にこの締めで良かったのか、一抹の不安を感じながらPCを閉じます。

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