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【2003 J1 2ndステージ 第15節】きょうのなおき

1.はじめに

 2003年完全優勝を果たしたマリノス。そのうち優勝を決めた試合がDAZNにて配信。自分はこの試合をフルタイムで見ていないため、初見になります。ハイライトはたくさん見てきたんですけどね…

 さて、今回はいつも行っている試合全体について述べるものではありません。私が愛してやまない松田直樹についてのみ取り上げていきます。では、いってみましょう!

2.ディフェンスリーダーの風格

 松田直樹がどんな選手か、一言でいうと『マリノス守備陣を束ねる闘将』になるでしょう。試合中における彼の振る舞いを見ていきます。

■フィールドを整えるコーチングとジェスチャー

後方への指示1

直樹「グラウが中央でフリーだな…俺が出ていく!」
直樹「中澤!河合!後ろ締めといてくれよな」

 グラウがボールを持たっとき、前に出向く直樹。しかし、これだと中央にポッカリとスペースが…そこを埋めるため、手を内側に大きく振って味方に移動を促すジェスチャー。中央を締めるように要求します。

後方への指示2

中澤「松さんが絞れと言っている気がする…中へ行こう!」
河合「俺は出ていっちゃいけないんだな、了解」

 直樹の指示に応えた中澤が内側へ絞る。これによって、ボール方向にコンパクトな陣形ができました。守備時にフィールド全体をコントロールする姿。まさにディフェンスリーダーと言えるでしょう。

■失敗後に味方へすぐ要求

挟めず中央攻略される

1. グラウがボールを持った時、中澤と挟むため右へ動く
2. そうすると中央が空く
3. グラウは服部にボールを下げる。同時にジヴコヴィッチが中央へ走る
4. 服部を自由にさせないため直樹が前に出ていく
5. ジヴコヴィッチに背後を取られ中央でフリーになる
直樹「中澤、あそこは俺と一緒にグラウを挟み込んでボール奪うとこだったんだよ。次よろしくな」
中澤「松さんすみません。次から気を付けます<(_ _)>」

 この一連のプレーのあと、中澤に対して両手を内側に寄せるジェスチャーをしていました。これは『挟み込んで奪いたかった』という要求ではないでしょうか。うまくいかなかったあと、すぐに修正を要求する。ピッチ上でのこういった振る舞いからも、リーダーの風格を感じることができました。

3.闘志溢れる激しいプレー

背後からのタックル

直樹「うぉぉぉぉおお!出遅れたけど足の隙間からタックルすればいけるはず!!」

 名波にボールが入ったとき、出遅れたにも関わらず容赦ないタックルをお見舞いします。このような激しいプレーは彼の代名詞。躊躇いないところに男気を感じますねぇ…

 また、前半24分ごろには味方がファウルを取られたとき、審判に駆け寄っていく。後半46分には審判に激しく抗議してイエローカードをもらう。こういった光景も見慣れたもの。

 いいんです。イエローカードは調子のバロメーターなんです。「お、カードもらったな。今日も調子いいねー!」このくらいの気持ちでいつも見ていました。まぁインザーギのオフサイド数のようなものですよ(若者には通じない)

4.的確なカバーリング

 激しいプレーの多い直樹ですが、的確なカバーリングをこなすだけのインテリジェンスも備えています。晩年にボランチをしていたことからわかるように、実は頭のいい選手なのですよ…

カバーリング1

直樹「中澤が前に出たときに奪われたか。となると服部に抜け出されるのが危ないな…ここは俺がカバーに行くか」

 中澤がボールを奪って縦パス。攻めに転じようと前に出ますが、これを相手にカットされてしまいます。こうなると右サイド裏に大きなスペースが空きます。服部がそこへ入れる状況なので、直樹は外へカバーリング。危険なスペースを消していきます。

カバーリング2

直樹「前田が下がってボールを受ける。それに河合がついてくと…後ろポッカリ空くか。けど入り込む相手いないから、ここはカバーしなくていいや」

 今度は左サイド背後にスペースができています。しかし、ボールを持つ前田は後ろを向いている状態。他にフリーな相手もいません。この状況で外に出ると、中央を空けるというリスクを背負うだけになります。リスクを冒す割にリターンが少ない状況。このときの直樹はカバーリングに出ず、中央へ残ることを選択しました。

5.スタッツ

■各種スタッツ

・クリア:9
・ブロック:2
・インターセプト:5
・タックル:2
・地上デュエル:5(1勝)
・空中デュエル:2(1勝)
・ショートパス:12(12本成功)
・ロングボール:1(1本成功)
・クロス:1(0本成功)

 クリアとインターセプトの多さが、予測の鋭さを物語っています。また、この試合においてはほとんどロングボールを蹴っていませんでした。さらに、全てのショートパスを成功させていることも特徴的。

 地上デュエルに関しては、川口に3回ほどぶち抜かれたので負けが増えていました。特別足が速いわけではなかったですからね…

■ボール奪取位置

ボール奪取位置

 広範囲にわたってボールを奪っていることがわかります。これも彼のカバーセンスあってこそ。ペナルティエリア付近での奪取も多く、重要な場面で多く跳ね返していたこともわかります。

■パスソナー図

パスソナー

 右利きだからか、右側でのパスが多かったようです。最後方のポジションのため、前方への展開が多いことも特徴。中短のパスを使い分けていました。

 また、唯一の失敗はアーリークロスになります。右サイドバックに入ってから攻めにも顔を出していたようですね。

■パスを出した相手

パス図

パス出した相手

 一番多くパスを送ったのは久保という結果になりました。それにも関わらず、直樹が蹴ったロングボールは1本だけ。フィールドを見渡す能力と、パスセンスの高さが伺えます。後半83分にもドリブルで長い距離持ち上がったことからも、ボールスキルが低くないことがわかると思います。

 次に多かったのは那須。これはポジションの都合上で、すぐ前にいる彼に繋ぎのパスを出したからだと考えられます。

6.おわりに

 この試合を見ているとき、視線の中心は常に直樹でした。「あぁ、俺って直樹大好きなんだな…」そう感じたこの試合。だからこそ彼についてだけ書いてみました。彼が現役のとき、自分が書いていたら毎試合このスタイルでやっていたかもしれません(笑)そのくらい好きな選手です。

 堅守速攻、攻守はターン制。今のサッカーと真逆もいいところですが、これもマリノスの一部なのです。長年アイデンティティとしてこういったサッカーをしていたチームが、今は攻撃的なサッカーを志向している。どれだけの変革が必要だったか。その苦しさの一部が垣間見えるかと思います。昔を懐かしむ方も、全く知らない方も、多くの人に見ていただきたい試合だと感じました。

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