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【2020 J1 第15節】名古屋グランパスvs横浜F・マリノス マッチレビュー

1.はじめに

 いやぁ、スタメン発表だけでこんなにざわつくクラブが他にあるでしょうか。メンバーを見て布陣が全く予想できないチーム、それがマリノス!(たぶん違う)

 この新しい立ち位置の狙いって何だろう?それで培われる能力は?学べるものは?やはり、そういったことが気になります。ということで、ボスはなぜこの布陣にしたのか。これをメインテーマとして書いていきます。では、いってみましょう!

2.スタメン

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■名古屋グランパス

4-2-3-1の布陣
・前田直輝が抜けた穴にシャビエルを入れる
・阿部が復帰後初先発

■横浜F・マリノス

3-3-1-3の布陣
・實藤が久々の先発
・WGとSBは選手を入れ替えローテーション

3.ボスの狙いを考えてみる

■いつもの布陣と比較してみる

 ふたを開けてみるとビックリ。畠中、チアゴ、實藤がきれいに横に並んでるではないですか。そう、まさかの3バックだったのです。しかし混乱する必要はありません。実はこれ、いつも戦っている4-2-1-3を可変させたものなのです。

いつもとの違い

【POINT】
いつもの4-2-1-3から、ビルドアップにおける局面を1つ進めたものがベースになっている

 両サイドバックが内に絞り上がる。ボランチの片方が下りて3バック化。これと似た布陣なんですよ。試合での立ち振る舞いを見ても、松原と高野はいつものサイドバックと変わらなかったですし。

ヒートマップ比較

 ホーム札幌戦のヒートマップと比べても、そんなに変わらないですよね。そのため、本稿では彼ら2人のポジションを便宜的にサイドバックと述べていきます。

■この布陣のメリットとデメリット

 名古屋戦での3バック布陣。ポイントは、いつもの布陣において、ビルドアップの局面を1つ進めたものになることでしょう。これは言い換えると、攻撃に移る際の手間を1つスキップしていることになります。これを念頭に入れておいてください。

いつもとの違い2

 いつもと違う立ち位置や振る舞いを強く要求されるのは、サイドバックの2人でしょう。高い位置にいることで、相方であるウイングと近い位置にいるメリットがあります。しかし、本来守るべき場所から離れているデメリットも。

 また、3バックの両脇に関しては、中央にチアゴがいるため、外側へ思い切った動きがしやすくなります。これもいつもとは違う役割ですよね。これらのことから、ボスの狙いを図っていきましょう。

■主題はサイドバックの立ち位置矯正

 恐らく、主題は『サイドバックの立ち位置矯正』だったでしょう。特に川崎戦で目立ったのが、守田を経由し、空いたサイドバックに展開されること。ウイングの背後を取られた場合の、ヒントを与えたかったのではないでしょうか。

SBハイプレス

【POINT】
ウイングが相手センターバックに出た場合、相手サイドバックに対してはサイドバックが出ていく

 最初から高い位置に構えているため、相手サイドバックに対してアタックしやすいです。躊躇なく飛び出せるので、こちらのハイプレスに対して休憩させない。そんな立ち回りが可能。

 逆に展開された場合も同じ、反対側のサイドバックが前に出ます。このときのポイントは、先ほど飛び出したサイドバックが最終ラインに戻っていくことでしょう。そのままだと後ろがスカスカになってしまいますからね。

 スタート位置がサイドバックだと、ここまで素早く出ていけなかったでしょう。今回は事前に高い位置を取っているので、飛び出す判断がしやすくなる。自然と振舞った際、ボスの求めている行動になるよう仕向けているのだと思います。

 攻撃時においても狙いがあったのではないでしょうか。ビルドアップを1段階進めたところから開始できる。負荷を減らしたことで、新しいハイプレス回避を模索できるのではないか。これをしていると、元に戻したときにそのやり方までスムーズに移れるはず。そのためのトレーニングとも捉えられますよね。

 また、ウイングとの位置が近いので、相方の動きに後出しで対応できます。サイドバックの位置から上がると、ある程度先読みして動かなければなりませんが、それが不要に。今回のやり方で相方の癖を知り、元に戻したときでも、スッと上がれるようにする。こんな狙いもあったかもしれません。

■副産物はセンターバックの新しい引き出し

CB立ち位置

 3バックにしたことで、後方の選手にも新しい動きが見られました。両脇の2人は外側に大きなスペースがあるので、そこを使う動き。チアゴはビルドアップ時に前へ上がり、フォアリベロとしての立ち振る舞いを見せてくれました。

 それぞれ4バックでもできることです。今までにない考えをさせたことで、相手のハイプレスをかわすための引き出しを増やすことができたのではないでしょうか。

■まとめ

◇サイドバックの位置矯正
 ⇒ 主にハイプレス時の立ち回りを覚えさせたかった
 ⇒ ついでに相方のウイングの癖も覚えられたらよい
 ⇒ ハイプレス回避の引き出しを増やしたかった
◇センターバックの新しい振る舞い
 ⇒ ハイプレス回避の引き出しを増やしたかった

 まとめると、ボスの狙いはこのようなものになると思います。自分たちのハイプレスと、相手のハイプレス回避。この2つを改善したかったのではないでしょうか。

 恐らく、ハイプレス時にボランチが前に出ることには満足しているはず。そこにサイドバックも連動することで、相手に休む間を与えない攻撃的な守備をする。そのための勇気をこの場で培おうとしたのかもしれません。まぁ、個人の妄想なんですけど(笑)

4.名古屋の対応

 では、この新布陣に対し、名古屋はどうだったのでしょうか。見ていきましょう。

■迷いのあった立ち上がり

名古屋飲水タイム前守備

 試合開始当初は戸惑っていました。どう見たって相手は3バック。けれども、高野と松原は内に絞る動きが多い。この状況で名古屋の出した回答は、3バックに対し、サイドハーフが出ていくことでした。

 ボランチが見ているのは、主にマルコスと喜田。サイドハーフがセンターバックに飛び出せば、マリノスのサイドバックはフリーに。容赦なく縦パスを突き刺されていました。これは飲水タイムまで続きます。

■冷静に整えた飲水タイム後

名古屋飲水タイム後守備

 しかし、名古屋は飲水タイムでプレスを整えてきました。サイドハーフが前に出るのではなく、サイドバックにつくように。そして、センターバックへのバックパスをスイッチに、ハイプレスを仕掛けてきます。

 これはマリノス相手に事前に準備してきたものでしょう。本来の予定では4バックだったのが3バックだったので混乱。飲水タイムで話し合い、4バックと同様の立ち振る舞いに変えてきたのでしょう。

 事前に準備していたことなので、ある程度の共通意識がある。しかも、ピッチ内では阿部が陣頭指揮を執り、各選手へ指示。いくときといかないときをハッキリとした結果、質の高いハイプレスが完成。マリノスは最後までこれに苦しめられました。

■マリノスの泣き所を突いた得点

失点シーン

 最初に述べましたが、サイドバックが本来守る位置から遠いことがデメリットです。つまり、攻守の切り替え時に、それなりな距離を移動するということ。当然、それが間に合わなければ、状況が厳しくなります。

 失点シーンは、それぞれ守備から攻撃へ切り替わった時がきっかけでした。1点目は高野が、2点目は喜田が攻撃に転じようと、高い位置へ移動を試みます。いずれも、その最中に相手へボールが渡ってしまいました。そうなると、本来サイドバックが見るべき相手サイドハーフがフリーに。対応が後手になり、クロスを上げられてしまいました。

 仕組み上、ある程度は仕方ないです。しかし、奪われたときのことを考えた立ち位置を取ることも、ボスは期待していたのかもしれません。そう考えると、期待を裏切ったことになりますよね…これを糧にしてほしいです。

5.改めて大分戦を振り返ってみる

■名古屋の特徴と弱点

名古屋の特徴

・名古屋の両翼は内側へ進みがち
・名古屋のサイドハーフは内側の守備が未整理気味

 これまでの名古屋の特徴を見ると、上記のことが言えます。前進手段の多くが、金崎へおさめたあとサイドハーフへ展開すること。逆足の選手を置いていることもあり、彼らは内側へ進む傾向があります。

 守備においては、サイドハーフの立ち位置が明確でない場合が見受けられました。特に、相手サイドバックに内側を取られたとき。大外なら迷いなく飛び出せるのですが、そうでないと迷ってしまうようですね。

 それを踏まえてマリノスの布陣を見てみると、理にかなっているのではないでしょうか。中央へ進軍してくるのなら、3バックで埋めてしまえばいいです。内側を取るサイドバックが不得手なら、最初からその配置にしてしまう。

 ボスとしては、選手たちに直してほしいものがあるからこの布陣にしたかった。しかし、無理なものにすれば、ただ試合を捨てることになってしまう。それを避けるために、相手への対策を組み込む。選手たちに勉強の場を与えつつ、試合には勝ちにいく。そういった狙いが、名古屋戦では出ていたように思います。

 あれ?立ち位置と相手対策。どこかで聞いたことありますよね?そう、アウェイ大分戦です。これにも似たような考えができるのではないでしょうか。

■大分戦を振り返る

 ということで、大分戦を振り返ってみようではありませんか。

・両ウイングを内側に絞らせた
・大分が5バックならそれが有効だった

 前者がウイングへの勉強。後者が試合に勝ちにいく手段。そう考えると、この試合は納得いくんですよね。

 本来は内側でのプレーを好む大然とエリキ。まず彼らに、マリノスとしての内側での動きを覚えてもらおう。そして、それは大分に対して有効でもある。実戦を学びの場としたい、ボスらしい考えだと思いませんか?

 今季は過密日程ということもあるので、実戦で身につけさせることは今後も続くはずです。そしてボスは、出場させた選手がこの布陣で自然と振舞うと、自分が求めていることに気付けるはず。それを選手たちの頭で考えさせ、身につけさせることが大事。このように考えているのではないでしょうか。実際にピッチでプレーするのは選手たちですからね。

6.スタッツ

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■sofascore

■SPAIA

■トラッキングデータ

7.おわりに

 松原が試合後にこんなコメントをしていました。

(今日の3バックについて)間で受ける部分に関しては、従来の4バックでやっている時のサイドバックが中に入って行く動きと変わるわけではないので、アタックのときはそんなに違和感はありませんでした。
守備で5バック気味になるところで、切り替えの部分など、まだ慣れていない部分が出てしまいました。その点は、今日の経験を含めて今後の試合に生かしていきたいと考えています。

 うん、もう全部話してますよね(笑)何がダメかもわかった上で、今後に生かすとまで言っています。頼もしすぎる!

 サイドバックの矯正が目的といいましたが、それはこの2選手のみが対象ではなかったはず。本来なら小池とティーラトンにも同じことをしたかったでしょう。しかし、途中で扇原を投入したことからわかる通り、この3バックは實藤がいたからこそ成り立つものでした。そんな彼は負傷離脱。同じ役割をこなせるのは、恐らく松原だけでしょう。

 これを踏まえて、あなたなら次節、どのような布陣とメンバーで臨みますか?その考えがそのまま、あなただけのプレビューになります。セレッソ対策も含めると、ボスの思考に近付けるかもしれませんね。

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