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【2019 J1 第29節】横浜F・マリノスvs湘南ベルマーレ きまぐれマッチプレビュー

1.はじめに

 前節、アウェイ磐田の地で勝利をおさめたマリノス。今節の相手は湘南ベルマーレになります。クラブが少し慌ただしくなり、その影響か2戦連続で大敗を喫しております。そういった相手との試合は得てして難しくなるもの。油断せず気を引き締めて臨みましょう。さて、そんな彼らはどのようなチームなのでしょうか。見ていきましょう。

 前半戦の振り返りはこちらになります。

2.予想スタメン

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■横浜F・マリノス

・仲川とエリキの位置は試合開始まで予想困難
・渓太の回復具合次第だが、万全のマテウスが先発だと予想
・右SBは最近の試合で活躍している松原が先発なのでは

■湘南ベルマーレ

金子大毅がイエロー累積警告で出場停止
・シャドーとボランチはここ最近組み合わせが変わっているので予想が難しい
・両WBと3バックは固定気味なのでこのメンバーだと予想

3.スタッツの比較

 まず、以下のスタッツに関しまして、それぞれリーグ戦1~28節までの平均値を比較してみました。

・得点
・失点
・ボール保持率
・シュート数
・パス数
・ロングボール数
・デュエル勝利数
・空中デュエル勝利数
・走行距離
・スプリント回数

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(データ集計元:sofascore

 黄緑が湘南ベルマーレ、青色が横浜F・マリノスになります。

 まず、ボール保持率とパス数を見ましょう。マリノスはこれらの値にて湘南を大きく上回っています。このことより、マリノスはボール保持型のチーム湘南はボール非保持型のチームとみなせるでしょう。試合はこちらがボールを主に保持し、相手がカウンターを狙うことになりそうです。

 次に、ロングボール数と空中デュエル勝利数に注目すると、双方とも湘南の方が高い数値を記録。ロングボールを前線に放り込み、空中戦で相手に勝っていることが伺えます。前線に山﨑というターゲットの他、野田も競り合いに強いため、このような状況になっているのでしょう。仙台戦、磐田戦に引き続き、またもやマリノスは空中戦を強いられる展開になりそうな予感…

 そして、湘南の大敗はいつもと何が違ったのかを見ていくため、下記スタッツにつきまして、1~26節、27節清水戦、28節川崎戦で比較してみました。

・ボール保持率
・シュート数
・パス数
・ロングボール数
・クロス数
・デュエル勝利数
・空中デュエル勝利数
・走行距離
・スプリント回数

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 黄緑の線が1~26節、オレンジ色が清水戦、水色が川崎戦になります。比べてみると、清水戦と川崎戦の共通事項として以下が挙げられます。

①パス数とロングボール数がリーグ平均より多い
②デュエル勝利数とスプリント回数がリーグ平均より低い

 ①については、普段よりボールを保持する機会が多かった、ということになると思います。非保持型のチームとしての強みを削がれたのかもしれません。湘南はボールを持ちすぎるとやりにくいのでしょう。

 ②は湘南スタイルと呼ばれるサッカーの結果に直結する数値だと思います。相手に走り勝ち、猛然と迫ってボールを奪う。そこからのカウンターでゴールを射抜く。デュエル勝利数は相手との1対1の成績。スプリント回数は攻守に渡り全力疾走した数。このような意味合いに捉えることができます。それが2試合連続で今までのリーグ平均を下回ったということは、相手からボールを奪うために素早く走ることができていないことになるでしょう。抽象的に言うと、戦うことができていないのだと思います。

 川崎戦は開始当初は相手にパス回しをさせず、長いボールを蹴らせるほど追い回すことができていましたが、最初の失点を機に消極的に。その後は寄せるスピードやマークの対応に迷いが見られました。これがクラブで巻き起こっている慌ただしいことに起因するかはわかりませんが、チームとして気持ちの立て直しができているかは大きなポイントの1つになりそうです。

4.湘南の4局面での狙い

 それでは、湘南の狙いをサッカーにおける4局面ごとに分けて見ていきましょう。

■ボール保持時

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・全体として3-4-3のような形になる
・3バックは横幅を広く保ちWBを押し上げる
・両WBは大外に張ることが多い
3トップはボールサイドに寄り、片側3レーンに入る

 湘南はボール保持時、まず3バックが横に広がり、両WBを高い位置に押し上げます。上がった両WBの基本位置は大外。逆サイドのWBも外寄りに位置し、サイドチェンジによる大きな展開を狙います。

 3トップはボールサイドに寄ることが特徴です。シャドーが大外、CFがハーフスペース、逆のシャドーが中央のレーンにいることが多く、全体として3レーン以内におさまる。前線ではサイドに人数をかけた攻撃が狙いの1つです。

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・前線を狙ったロングボールがCBから入る
・サイドから展開し、シャドーに届けてボールを前線に
・サイドから中央のボランチを経由して逆サイドのWBへ
・CBから対角のロングボールで逆サイドのWBへサイドチェンジ

 湘南のボール前進ルートはいくつかあります。まず、後方からのボールです。3バックから直接CFへの頭や、ディフェンスラインの裏を狙ったロングボールを展開することもあれば、サイドから展開し、上がったWBを経由してシャドーにボールを送ることも。また、野田はサイズもあるシャドーのため、相手SBと空中戦で競らせることもできる。SBで大柄な選手は珍しいので、この形でおさめてしまうことも多いです。

 また、逆サイドでアイソレーションしているWBへボールを展開することも。こちらもロングボールとショートパス、どちらの引き出しもあります。CBから対角のロングボールによって一気にサイドチェンジすることもあれば、中央にいるボランチを経由して逆まで繋ぐこともあります。

■ネガティブトランジション

 素早い切り替えから前にいる選手たちで即時奪取を狙う。先陣を切るのは3トップ。そこでコースを限定できるのなら両ボランチも前に出てパスコースを消して一気に奪い取ろうとします。

 両WBはすぐに撤退し、後方にいる3バックと合流して5人でのディフェンスラインを整える。明らかに取り囲めそうなとき以外は、このように撤退して5バックの形成を優先します。

■ボール非保持時

 湘南のボール非保持時は素早いネガティブトランジションからの前からプレスと、それがはまらなかった場合の撤退守備の2種類に分かれます。

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・前からプレス時は5-2-3のような形
・3トップが相手ディフェンスラインの選手を捕まえる
・両ボランチもパスコースが限定されているなら相手ボランチへつく
・後ろの5人は撤退気味なので前後分断気味になる
・WBはマーク相手が下がるとついていく傾向がある

 まずは前からプレスについて。まずは3トップがボールホルダーを中心に、相手ディフェンスラインの選手たちを捕まえます。このとき1つ隣のパスコースを消すようにつくことが特徴。後方にいるボランチはそれを踏まえ、パスコースが限定されて狙い所がハッキリしている場合、前に出て相手ボランチを捕まえにいきます。こうして前線5人で周辺のパスコースを消し、奪い取ってからカウンターを仕掛ける。これが狙いです。

 このとき後方の5人は5バックを形成して待ち構えます。前に出るのは両WBのマーク相手が下がったとき。相手の選手が下がるとWBがついていき、サイドの出口も封鎖します。しかし、積極的に前に出るわけではないため、前線の5人と距離は遠い状態が多い。間が大きく開くことにより、バイタルエリアが空いてしまいます。

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・撤退守備時は5-4-1の布陣
・後方に構える5-4のブロックはボールサイドへスライド
・最前線の山﨑は相手中盤においての横断を防ぐように守備

 次は撤退守備について見ていきます。布陣としては両シャドーを後方に下げた5-4-1の形。後ろにいる5-4のブロックを組んでる選手たちはボールサイドへスライド。この人数にも関わらず、逆サイド大外にいる選手は放すくらい横にコンパクトです。

 前線にいる山﨑はただカウンター残りをするだけでなく、きちんとプレスに向かいます。基本的には相手中盤で左右横断させないように戻る。そうすることによって後方がスライドする時間を作り出しています。CB間の横断は相手が素早く行えないため、ここを防ぐことは狙いとしてはない。これが他の選手だと攻め残りになりますが、山﨑がいるときは厄介です。

■ポジティブトランジション

 ボールを奪えそうになったタイミングで、全体が3-4-3の布陣を作ろうと前進を開始。相手より早い出足でカウンターを狙います。

5.マリノスボール非保持時の予想展開

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3トップは相手3バックを捕まえる
WBが浮くことになり、ボランチとSBのマーク先に迷いが生まれる
・逆サイドのWBは空くことになりアイソレーション

 マリノスのボール非保持時ですが、直近の3バックを相手にした広島戦を踏まえると、こちらの3トップは相手3バック目がけてプレスすることが予想されます。マルコスが戻って中盤を埋めるということもあまり見られないため、両WBが野放しになるでしょう。そこを含めたマークとして、ボランチとSBがどこにつけばいいか迷いが生まれることになります。どちらがWBを見るのか。WBを見た場合、もう片方には誰がつくのか。ここをどうするかは1つの注目ポイントになると思います。

 また、サイドに寄せる守備をするため、逆サイドにいるWBはフリーになります。このアイソレーションした湘南のWBがどう動くかも見たいところ。大外に張るのならサイドチェンジを待つことになりますし、中央に絞るのならボールサイドにオーバーロードして攻めようという意図が読み取れるかと思います。

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SBが前に出て相手WBに対応
後方は相手3トップと同数になる
・マークが外れた箇所にパスが出るとロングボールで一気にピンチにも

 先ほどのマークの迷いは、広島戦を参考にすると、SBが前に出て対応すると予想されます。相手WBをフリーにするのは怖いですしね。そうするとディフェンスラインがスライドし、相手3トップにピッタリとマーク。最後方で同数になるリスキーな守備になりそうです。こうなると怖いのはカバーがいないディフェンス陣の裏。3バックやボランチのマークを外してしまうとそこからロングボールが供給されてしまいます。単純な放り込みだったり、逆サイドのWB目掛けたサイドチェンジなど、手薄な後方が一気に危険に晒される。ハラハラするような展開はこの日も待っているのではないでしょうか。

6.マリノスボール保持時の予想展開

 恐らくこの時間が長くなるはず。マリノスがボールを保持しているときの展開を予想してみます。

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相手3トップは前から激しく来るはず
・WGが下がると相手WBがついてくる
噛み合わせ上マルコスが浮くので、これを誰が見るか迷う

 この試合でも湘南は前へ激しく寄せてくるはず。ボールホルダーへ山﨑が寄せることがプレス開始のスイッチ。近場のSBとCBをシャドーが捕まえ、ボランチへは後方に控える味方ボランチを前に出すでしょう。ただ、そうするとマルコスが浮くため、そこをビルドアップ時の逃げ道にすることができます。これを嫌って後方のCBが出てくればハーフスペースが空きますし、ボランチが下がるのなら相手の前プレ強度が下がる。どっちに転んでも基本的にお得です。

 また、パギを上げて後方に3バックを形成しても回避しやすいと思います。そうするとGKまで追ってくるかどうかを相手に迫れることが最大の旨味。前がかりな相手が更に出てくるため、後方との分断具合が肥大化。スカスカになった中盤へ1つ飛ばしたパスを送ることができれば、疑似カウンターを仕掛けることができるでしょう。そうすることができるように、最近不調だったパギのコンディションが上がっているかもこの試合のポイントです。

 最前線に関しては、WGが下がると相手WBがついてくることが予想されます。これを利用してわざと下がって大外を空けるもよし。そこへ留まり、相手をピン留めするもよし。敵を動かすために自分が動くか、敵を動かさないために自分が動かないのか。この選択も見どころです。

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・徹底守備時はWBがWGを捕まえ、シャドーがSBにつく
・扇原やマルコスがハーフスペースを狙うと相手HVを引っ張れる
逆サイドのWGはフリーになるはず
スライドした中盤4人の脇が空く
・山﨑は中盤の横断を防ぐように低い位置まで戻る

 相手を押し込んで撤退守備に移行させたとき、湘南にとっては埋めるべきスペースとマークにつくべき相手がハッキリするため、守りやすいかもしれません。こちらのWGにはWBを、SBにはシャドーをつけることによってマンツーマンで対応。ハーフスペースを狙おうにも、そこはHVが守ればよい。

 さらにマリノスは相手を押し込み続けることが予想されるため、5-4のブロックが左右に圧縮しているのに加え、縦にも圧縮することになります。まさにルヴァン杯決勝の再現ですね…なので押し込みすぎず、詰まったらボールを後ろに送って相手を縦に間延びさせることをするかどうかも試合の分岐点になるかと思います。押し込みすぎたら、いくら相手をドリブルで剥がそうとも、相手選手が次から次へくるので効果は薄いでしょう。

 相手が横にスライドするので、やはり狙い目は中盤4人の脇になります。そこをこちらのボランチやSBが突いていきたい。また、逆サイドのWGはフリーになるため、そこへのロングボールも効果的です。ただ、最近は仙台戦のように縦に急ぐこともあります。反対に磐田戦の後半のように、じっくり攻めれて左右に素早いパスを出すことによって相手を揺さぶることも。これがどちらになるか、また、扇原はサイドチェンジを狙うのか。横方向のスピードにも注目ですね。

7.おわりに

 色々見ていきましたが、押し込みすぎると詰まって攻め手に欠くことがわかります。できれば回避して、詰まったら縦横に相手を振り回して好きを伺いたい。そんなサッカーをしたいですが、恐らくそういったことはせず、ルヴァン杯決勝のように手詰まりになるのではないでしょうか…そう、晴れてる日なら

 この日は雨、しかも大雨が予想されています。そして会場は三ッ沢。ご存じの方も、そうでない方もいらっしゃるかと思いますが、大雨の三ッ沢は水たまりだらけ…下で丁寧に繋ぐことが困難となります。そうすると長いボールが多くなり、縦に早く、かつ大雑把な展開になりがち。湘南は元々ロングボールを入れることを厭わないため、相手にとっては有利な状況でしょう。ドリブルも難しいため、裏に抜けるスピードが大事。仲川やエリキの抜け出しに期待したいところです。

 毎節が山場ですが、今節もまた難しい試合になるでしょう。体制がハッキリしたことにより、湘南の選手たちもメンタルが落ち着いているかもしれません。また、雨は相手に利するでしょう。しかしその状況でも輝く選手たちがマリノスベンチには控えています。彼らの活躍に期待しつつ、私たちは満員の三ッ沢で最高の雰囲気を作り出しましょう!

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