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ベンチャー企業でのM&Aのはじめかた

これまで、資金調達の領域や、HR領域における記事を幾つか書いてきましたが、今回は、私のキャリアの中でも最も経験が長い、M&Aの領域に関して記事を書いてみたいと思います。これまで私は、

・国内大手投資銀行でのM&A経験(大和証券SMBC)
・国内ブティック会社でのM&A経験(フロンティア・マネジメント)
・HRコンサルティング会社でのM&A経験(Mercer Japan)
・外資投資銀行でのM&A経験(UBS証券)
・事業会社でのM&A経験(メドピア、オープンエイト)

と、比較的多様な立場でM&Aを経験してきました。こうした経験の中で、一括りにM&Aといっても、その対象や内容が変われば、進め方や留意すべき事項、体制など、大きく変わることを実感しており、こうした中で学んできたことを、振り返りも含めて、これからnoteに定期的にまとめていきたいと思います。

M&Aとは何か

Merger & Aqcuisition の略称で、合併・買収などを指し示す言葉です。現金を対価にする買収、株式を対価にする買収、一部取得、全部取得、上場会社の買収 / 非上場会社の買収など、様々なオプションがあります。

M&Aのステップ

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M&Aのプロセスは、それぞれの案件によって個別性が極めて高い為、上記はサンプルではありますが、最も一般的な流れは上記のとおりです。案件の紹介をされ、検討をスタートしてから、1~2ヶ月程度で初期的な条件を合意し、そこから、デュー・ディリジェンスと言われる詳細な案件検討に入って、1~2ヶ月で最終契約を締結する。1年以上かかるものも、2週間で終わるものもありますが、ある程度の規模のものであれば、3~4ヶ月程度が一般的だと思います。

M&Aのはじめかた

今回のタイトルでもありますが、ほとんどのベンチャー企業にとって、M&Aを検討するに当たり、まず止まるのが、この”M&Aのはじめかた”ではないかと思っています。つまり、いざM&Aがスタートしてしまえば、証券会社、M&Aアドバイザー、弁護士、会計士、税理士など専門職の方々にヒアリングできるので、わからないながらに色々質問しながらM&Aの推進ができますが、そもそもまずどうすればいいの?というのが大きな問いではないかと思っています。その為、まずこのはじめかたについて、整理をしてみたいと思います。

M&Aのターゲットリストを作成する

M&Aをはじめる際に、まず行うべきこと。これは、M&Aのターゲットリストを作成することだと考えています。

ターゲットリスト

例えば上記がターゲットリストのサンプルです。少しポイントを解説すると、

代表者 / 株主 = オーナー系なのか(創業者 or 創業者一族)、どこかの上場会社の子会社なのか、皆で持ち合っているかなどの確認
業績 = 業績が上昇傾向 / 下降傾向なのか、利益率の傾向、純資産、現預金、有利子負債などがどの程度あるか
提携先 = 既に業務提携、資本業務提携など結んでいる先があるか。ある場合、どの程度結びつきが強そうか
想定されるシナジー = 仮に我々のグループと一緒になったら、どんな売上増加、コスト削減シナジーが発揮できそうか
留意点 = 特定の取引先に依存していないか、リスクが高い別事業など行っていないか、従業員数が激減しているなどしていないか 

などを確認します。これらは、帝国データバンク(1社当たり数千円~2万円程度)、東京商工リサーチ、官報、日経テレコン、各社ホームページなどを見れば、ある程度情報が集まります。そもそもその領域のことがわからない場合、業界レポートを購入することなども有用かもしれません。例えば、FK-Mardsというサイトを使えば、富士経済系のレポートを、部分的に購入できたりするので、1冊数十万円のレポートを何冊も買うなどしなくても業界レポートが読めます。国立国会図書館で少し古いレポートを見ることも効果的です。

M&Aのコンタクト方法を整理する

大きく分けると、M&Aを実施するに当たってのコンタクト方法は、

・証券会社に頼む
・銀行に頼む
・M&Aアドバイザーに頼む
・M&A仲介サイトに登録する
・直接当該会社のホームページからコンタクトする

などの方法があります。これは、それぞれPros / Consがあります。

まず、証券会社は、主幹事先であればコンタクトがありますが、主幹事でなければ繋がりが薄い場合も多いですし、また、非上場企業に対するネットワークはあまり強くない場合が多いです。ただ、主幹事かつ繋がりが強ければ、強いネットワークがあります

銀行は、非上場会社であっても大体繋がりがあるので、コンタクトルートが広いです。また、その会社の経営者の方とまず確実に繋がりがあります。上述の帝国データバンク、東京商工リサーチなど見れば、取引銀行が載っていることも多いので、そこからメインバンクのチェックができます。ただ、一つの領域で複数の社数のコンタクトを行うことは難しい場合が多いです。

M&Aアドバイザーは、所謂M&A仲介を行っている会社(最大手は日本M&Aセンター)から、片側のM&Aコンサルを行っている会社まで、大小問わず非常にたくさんの会社があります。非上場であっても、彼ら自身が繋がりがあったり、似たような他社を知っていたりすることも多いです。その為、ターゲットリストを見せて、その会社 or 同領域の違う会社で、今M&Aが検討できる会社はないか、などの相談などすると、いつか同様の話が起こった時に、紹介してもらえることがあります信頼できる何社かと定期的にコンタクトを持つことは有用かと思います(どこがお勧めか知りたい場合は、個別に聞いてください 笑)

M&A仲介サイトは、ビズリーチサクシード、Tranbi、M&Aオンラインなど、ここ数年でだいぶ増えてきました。まだ私自身はこうした仲介サイトを通じてM&Aが成立したことはありませんが、少しずつこうしたサイトを通じてのM&Aも増えてくるのだと思います。また、例えば、M&Aクラウドのように、買い手側が、どのようなM&Aに関心があるか、打ち出すことができるサイトもあります。このようなサイトを通じて情報発信をすることで、証券会社やM&Aアドバイザーが直接コンタクトして頂けることもあります

最後に、直接、関心がある会社のホームページを通じてコンタクトをする、という方法もあり得ます。これは、とはいえ、文章の送り方、電話の仕方などに気を付けないと、業界内で変な噂がたったり、クレームに繋がることもあります。直接コンタクトを取る場合、買収というより、”お互いにシナジーがあると思うから、事業上の連携について幅広に議論させてもらえないか” といったような、緩い形でコンタクトを取る場合が多いと思いますが、こちらは、慣れているメンバーがいない限り、いきなり行うことはお勧めしません。

最後に

長くなってしまったので、今回は一度ここで止めます。M&Aについては、たくさんのポイントがあるので、今後も継続的に有用な情報を発信できればと思います。

毎度恐縮ですが、twitterも継続して行っています。是非、このような領域に関心がある方、フォローなど宜しくお願いします!

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