写真展『おもしろくなりたい』

 2022年10月4日~11日まで写真展を開催しました。ご来場下さった皆様ありがとうございました。

 写真展をやって、金井さんのことは知っている(平手のことは知らない)という方にたくさんお会いしました。ちゃんと写真家だと思われたりしましたがそんなことはなく、展示をするくらいだからそれなりにスキルがあると思われるかもですがそんなこともなく、極端なことを言えばお金と手間さえかければ写真展を開くことは誰でもできます(形にするまでが大変なのです)。だから、ただのアマチュアですと説明しています。いわゆるプロではありません。謙遜ではありません(プロとアマについても説明したいことはあるけど別の話なのでどこかで)。

 写真なんですが、公開された時から写った人のものになる…と思って自意識の主張をする意識とは真逆を進んでいたので、自分の名を冠した展示を他人を写した写真でやりたいという気持ちは少しもありませんでした。けど、アガツマさんっていう写真のお仕事をしている人に「平手は写真展とかやらんの?」って聞かれたことがあって、写真展をやるとしたらどんな案がいいかな〜と考えてみて唯一浮かんだ案に金井さんを誘ってみて、話に乗ってもらえなかったら写真展はやらなくていいやという感じで始めた企画でした。そんなわけで、いまだに金井さんを写した写真を「作品」と呼ぶのは(そんなこと言っていいんか…)と心配になったりしますが、それはともかく滅多にできない経験ができて楽しかったです。

 できるだけ自分の作品に解説をするのは避けたい反面、何か言わないと解られないすぎるかもしれないので、展示の奥の奥みたいな部分にあいさつ程度の文章を載せていました。それを載せます。
 

 おもしろくなるための第一歩は模倣だと考えています。

 金井球×平手ユウ写真展『おもしろくなりたい』にご来場頂きありがとうございます。これは企画や撮影をした平手ユウ個人のメモです。
 わたしには個性がありません。最近ヒロアカを読んでいるから個性の話をしたんじゃなくて前々からそう思っていて、何やっても自分の色というものがさっぱり分からないし無いと常々感じています。企画から上映までほとんど自分の手でやったお芝居を撮っても、最高にかわいい人が被写体になってくれる写真を撮っても。つまりどんなお膳立てがあっても自分の個性のなさが際立つのです(個性と魅力はイコールではありません。だから展示や作品自体は良いと胸を張って言います)。

 展示タイトルの「おもしろくなりたい」ですが、その感情は特別なものではなく、むしろ人間の三大欲求に一つ足して四大欲求とするなら「おもしろくなりたい」欲を足すべきで、とても普遍的で素直な感情だと考えています。
 最近は映像作品も撮って公開したこともあったんですが、制作チームなど組まず脚本から何まで自分で一から作るから悩みながら(こうしたらいいのかな~)とか考えるんですけど、実はそれらは良くも悪くも「これまで何かで見聞きしたもの」の集合体でした。演出とか、設定でつくった悩みも、人物の名前の由来も、今まで見てきた物事の蓄積を反映させて絞り出した最適解だったんです。意図して「見たことある」ものを再構築しようというコンセプトに立っていたわけではないです。自転車を急停止させるシーンを映像で撮るとして、遊びでAKIRAの金田がバイクを急停止させる例のあれっぽく演出する(でもAKIRAをリメイクしようということではない)みたいなそういうのに近い話かもしれません。アイデア一つ一つをまとめて形にして完成させることが難しいし、その結果がオリジナルかもしれないですけどね。おもしろくしようとすると結局影響されたものの模倣をしてしまっているのです。

なんで自分で発想できないんだろう!!!!!!

 影響の奴隷なんです。創作をやってみて初めて自覚した時にそう思って、なんか愕然としてしまいました。おもしろくなりたくって一生懸命になったのに、わたしのオリジナル作品を見た人が新鮮に何か感じてくれたとしても実は既に存在していたものの再構築だったのです。
 今回の写真展では、どこかで見たものを一部意識的に取り入れました。気軽に見て笑って楽しんでもらえることを目指した展示ですが、おもしろくなりたくて頑張っても影響の奴隷になってしまう、そんな生みの苦しみや作り手の悲哀が創作には普遍のことなのだろうという気持ちを抵抗ではなく歓迎を込めてテーマにしました……ということを展示の準備をすべて終えて振り返って初めて言葉にできました。
 いつか影響の鎖を引きちぎり、自分だけの個性が芽生えますように。

2022.10.4 平手ユウ

 撮影の合間に撮ったチェキをまとめた手帳を展示で置いていて、それの最後のページに置いていたものでした。展示の場でこれを読めたのは隅々まで見ようとしてくれた人だけです。そういう、分かりにくい読みにくい部分にこそ大切なものを置いちゃいたくなりますね。内容の割に、撮り手が込めたメッセージはかなり真剣なものでしたとさ。

お知らせですが、今度の土曜(これ書いてる日から数えたら明日です)にアフタートークイベントをやります。お暇なら来て。というか平手が裏に隠れないで表に出てくるなんて全然ないんだから来てください。

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