良いコピーを書く秘訣

昨年、糸井重里さんが出した『小さいことばを歌う場所』には、とても感銘を受けた。
それは、出版というモノの可能性を大きく前進させた勇気についてが大きかったが、もちろんその書物の内容も素晴らしかった。

毎週月曜日に自身が書いているコラムから、糸井さん本人ではなく、彼の事務所に所属するひとりの編集者が独断で心に残るテキストを選び、それを、コラム全文ではなく、コラムの中の部分から抜粋して一冊の書物に編集したものである。

出来上がったそれは、かなり『詩集』の趣が漂うすてきな一冊となっている。
しかし、詩集ではない。読めばわかるが、詩集の存在とはまったくことなるコトバが漂っている。
装幀もいい雰囲気で、本文はテキストによって書体や組版を変える自由気ままなデザインだが、これがとてもまとまりがあって、グラフィックデザインとしても素晴らしい内容だ。

その第2弾が出た。タイトルは『思い出したら、思い出になった』。
主旨はまったく同じである。

この2冊目は、タイトルからもわかるが、内容がどことなく『過去』を思考している。
装幀の色もグリーンを基調としていて、前回のブルーとうって変わって地味である。 なんとなく後ろ向きな雰囲気すら感じる2冊目だが、内容は後ろ向きではなく、むしろ前向きだ。

この2冊目を読んで、とても大切なことが多く書かれてあることに気が付いた。
それは、糸井さんの広告論である。
彼はコピーライターとして天才的ともいえるズバ抜けた腕を持っているが、彼が広告を考えるうえでの発想法が、この本には書かれている。
『論』や『方法』というほどのものではないが、つまり、なんとなくそういうことが書かれている、ということ。

これまでのコラムでも、折に触れてそういう『広告発想手法』みたいな文章があったが、糸井さんは何を考えて広告をプランニングしていくか、コピーを考えるかということ、それがとても素晴らしいのである。

彼の手法を一言で言うと『原理原則から離れない』ということに尽きる。
それが、自分だけの原理原則ではなく、ターゲットについて、ということだ。
広告には必ず商品とそれを開発したメーカーと商品を届けたいターゲットがある。
彼は、例えば商品が婦人服であれば、ターゲットに対して、『そもそも女性ってなんだ?』ということろから入り、商品そのものについても『服って本来何をするものだ?』というところを思考し、そこから、決して離れない。

世の中の優れた広告は、よく考えるとみんなその手法で作られている。

良いコピーを書くためにしなければならないこと。
糸井重里さんが出した2冊の本、『小さいことばを歌う場所』と『思い出したら、思い出になった』を読むことが、かなりオススメだと、私は思う。

Nori
2008.09.15
www.hiratagraphics.com