金魚と多様性

 子供たちと近所の金魚すくいのできるカフェに遊びに行き、久しぶりに金魚すくいをした。夫はUFOキャッチャーなどある一定の角度から一気に救うゲームがとても得意で、「とれないとれない〜」と網を早々に破いた長男を横目に、目をつけていた黒い出目金を早々にとってくれた。
 小さな桶の中でぷかぷか浮かぶ出目金を眺めていたら、これもご縁だ、我が家に引き取りたいなという気持ちが芽生え、家で飼いたいなと思った。ありがたいことに最新式の水槽から伝統的技法で作られた金魚鉢まで様々な道具も揃っていて、お店の方がいろいろ相談に乗ってくれる。
 「せっかく飼うのだから、1匹じゃかわいそうだから、他の子(金魚)も連れて帰ろう。もう1匹は違う色の別の種にしようか」と話していたら、お店の人から「金魚は同じ種類同士でないと過ごしにくい生き物なんです」と言われる。目をつけた小さくて丸っこい可愛い形のピンポンパールなんかどうかな?と考えたけれどデリケートで水温調整がとても大変だそう。出目金と一緒に飼うのは難しいらしい。最適な水温や餌の種類等々、同じ鉢の中でずっと過ごす仲間は同一種の方がよいとのことだ。会社や様々な組織で多様性を尊重しようということばかり話していたので、少し新鮮だった。
 水族館で様々な種類の魚が一緒に快適そうに泳いでいるのは奇跡的なことかもしれない。それぞれの特徴を熟知した上で私が小さな時に、金魚の水槽にザリガニを入れて、あとは悲惨な結果になったことがあった。多様性は大事だけれど、多様性を実現できる時とそうでない時は自然環境の中でもあるのかもしれない。ただし、多様性を実現できた場合にはこれまでなし得なかったような強さや柔軟さ、新しい交配が生まれるのかもしれない、とそんなことを考えた。
 悩んだ挙句、出目金さんとはさようならをして、もっと金魚のことを勉強してから出直そう、ということにした。出目金さん、ご縁をありがとう。よい勉強をさせていただきました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?