グルテンフリーのデメリット(1/2)
こんにちは。
世の中には、特にネット上には、
グルテンフリーにはデメリットがある
グルテンフリーなど効果がないので、さっさとやめなさい
という意見があります。ネットだけでなく、グルテンフリーのデメリットに関する医学論文もいくつか出ています。そこで今回は、グルテンフリーのデメリットについて、科学的に検証したいと思います。
グルテンフリーのデメリットは何ですか?
ネットの記事を見たところ、次のようなものが、グルテンフリーのデメリットとして挙げられていました。
①グルテンフリー食品は糖質、脂質、食品添加物が多い
グルテンフリー食品は、グルテンの効能であるモチモチ感を補うために油脂を混ぜたり、糖質や添加物を加えたりなどの工夫がされているため、従来の食品より脂質、糖質、食品添加物が多い。
②グルテンフリー食品に変えることで、必要な栄養素が不足する
小麦には豊富な食物繊維、ビタミンB群、ミネラルが含まれ、とくに全粒粉はその栄養価が高い。食物繊維やミネラルは健康維持に欠かせない栄養素のため、摂取をやめると、体に必要な栄養が不足してしまう。
③グルテンフリーで体重が増加する
健康な人がグルテンフリーを取り入れると、ビタミンBや食物繊維が不足し、太る。
④グルテンフリーで2型糖尿病のリスクが増加する
2017年3月9日アメリカ心臓病協会に発表されたハーバード大学の研究報告によれば、グルテンの摂取量が低い人ほど、2型糖尿病にかかるリスクが高いことが判明した。これは体に必要な食物繊維や、ビタミン、ミネラルなどの栄養素の摂取が少ないからと考えられる。
⑤グルテンフリーで冠動脈疾患のリスクが増加する
健康な人が過度なグルテンフリーを実践してしまうと、必然的に全粒穀物を取る量が減るため、必要な栄養素(主に食物繊維)が足りなくなるなり、心臓や血管の病気になるリスクが高まる。
⑥グルテンフリーで腸内の健康状態を悪くしてしまう
⑦健康な人にはグルテンフリーは意味がない
グルテンフリーというのは、もともとグルテンが原因の自己免疫疾患であるセリアック病の人の治療食。健康な人が実践したとしても、腸内環境が改善されることはない。
⑧グルテンフリーは全ての人に効果があるとは限らない
グルテンフリーは腸内環境の改善をはじめ、体質改善やアレルギー症状の緩和などの効果があるといわれているが、このような健康効果は未だ医学的な証明がなく、全ての人に効果が出る確証はない。
グルテンフリー食品の問題点
グルテンフリー食品は、糖質、脂質、食品添加物が多く、グルテンフリー食品に置き換えると、食物繊維、ビタミンB群、ミネラルが不足する。これを聞いたら、グルテンフリーなんてやめようと思うかもしれません。でもちょっと待ってください。やめるのは、このブログを最後まで読んでからにしてください。
まず、海外で売られているグルテンフリー食品は、糖質、脂質が多く、食物繊維、ビタミン、ミネラルが少ないというのは事実のようです。イギリスで販売されているグルテンフリー食品679品目と、通常食品1045品目について、食品の栄養成分と価格を比較した研究では、次のような結果が得られています¹⁾。
・全体的に、多くのグルテンフリー食品が通常の食品よりも脂肪、糖質、塩分を多く含んでいたが、例外もあった。
・グルテンフリーパンと粉製品の多くが、脂肪と糖質を多く含んでいたのに対し、グルテンフリークラッカーは、一部が脂肪と糖質を多く含んでいた。
・グルテンフリー食品は、通常の食品よりも、塩分濃度が高い場合が多かった。
・グルテンフリー食品は、通常の食品よりも食物繊維とたんぱく質の含有量が少なかった。
・グルテンフリー食品は、通常の食品よりも、価格が1.6倍高かった。
また、パンとパスタについて、通常の商品とグルテンフリーの商品の栄養成分、成分含有量を比較したイギリスの研究では、次のような結果が報告されています²⁾。
・グルテンフリーパンは、脂肪と食物繊維が有意に高かった。
・すべてのグルテンフリー食品は、通常の食品よりもたんぱく質の量が少なかった。
・グルテンフリーパンの5%が、4つの必須強化栄養素(カルシウム、鉄、ナイアシン、チアミン)すべてが強化され、28%がカルシウムと鉄のみで強化されていた。
イギリスでは、白い小麦粉にカルシウム、鉄、チアミン(ビタミンB1)、ナイアシン(ニコチン酸とニコチンアミド、あわせてビタミンB3ともいう)を添加し、栄養を強化するよう法律で定められていますが³⁾、グルテンフリーの穀物粉はこれの対象外です。グルテンフリー食品は、穀物粉(トウモロコシや米など)から製造されているため、これらの微量栄養素が不足することになります。
イギリスでは最も一般的に消費される炭水化物源は白パンで、パスタの消費も増加していることから、これらをグルテンフリー食品に置き換えることで、微量栄養素が不足する可能性があります。
このほか、小麦の表皮や胚芽の部分には微量栄養素や食物繊維が多く含まれるため、アメリカでは小麦全体を粉にした全粒粉の消費を推奨しています⁴⁾。全粒粉で作ったパンやパスタを、グルテンフリー食品に置き換えると、結果として微量栄養素や食物繊維が不足することになります。
日本ではグルテンフリーで糖質、脂質、食品添加物を摂りすぎ、食物繊維、ビタミンB群、ミネラルが不足することはない
日本ではどうでしょうか。日本と海外では、食生活が異なるので、グルテンフリー生活をするときに、海外で市販されているグルテンフリー食品で置き換えるということは、まずないと思います。また、日本で手に入るグルテンフリー食品はまだまだ少ないのですが、わたしが知る限り、通常の食品に比べて糖質、脂質、食品添加物が多いということはないと思います。
一方、日本で消費される小麦には、微量栄養素は添加されていません。また、海外に比べて、全粒粉の小麦粉の使用も、それほど一般的ではありません。したがって、もともと消費している小麦に、微量栄養素や食物繊維が多く含まれるということはありません。
ですから、グルテンフリー食品は、糖質、脂質、食品添加物が多く、グルテンフリー食品に置き換えると、食物繊維、ビタミンB群、ミネラルが不足するというのは海外の話であって、これを日本にそのまま当てはめるのは無理があると考えます。日本には、もともとグルテンが含まれていない食品もたくさんあります。詳しくはウェブサイトを見てください。
いかがでしたか。
ちょっと長くなりましたが、最後までお読みいただき、ありがとうございました。
これ以外のデメリットについては、次回のブログで説明したいと思います。
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参考文献
1) L Fry et. al., An investigation into the nutritional composition and cost of gluten-free versus regular food products in the UK, J Hum Nutr Diet, 31 (1) 109-120 (2018)
2) Beatrice Allen et. al., The Availability and Nutritional Adequacy of Gluten-Free Bread and Pasta, Nutrients 10 (10) 1370 (2018)
3) Statutory Instrument 1998 No. 141, The Bread and Flour Regulations 1998
4) U.S. Department of Health and Human Services, U.S. Department of Agriculture. 2015–2020 Dietary Guidelines for Americans, 8th ed. (2015)
5) Dana M Lis et. al., Dietary Practices Adopted by Track-and-Field Athletes: Gluten-Free, Low FODMAP, Vegetarian, and Fasting, 29 (2) 236-245 (2019)
まとめ
・海外では小麦に微量栄養素を添加したり、微量栄養素や食物繊維が多い全粒粉の使用を推奨したりしているため、これをグルテンフリー食品で置き換えると、微量栄養素や食物繊維が不足することになる。
・海外のグルテンフリー食品は、小麦を使わずに似た味・食感のものを作るため、糖質、脂質、食品添加物が多く含まれることが多い。
・グルテンフリーで糖質、脂質、食品添加物を摂りすぎ、食物繊維、ビタミンB群、ミネラルが不足するというのは、海外での話。日本では当てはまらない。
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