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小麦アレルギー、セリアック病、ノンセリアックグルテン過敏症はどう違うの(3/3)

小麦アレルギーの確認方法

IgE抗体検査(血液検査)

IgE抗体検査

即時型アレルギーは、アレルゲンとなるたんぱく質が体の中に入ると、それを排除するためにIgEという抗体が生産され、それが炎症性メディエーターを放出させることで、数分から数時間以内に、腹痛・下痢、じんましん・湿疹や、呼吸困難や意識障害の症状があらわれます。血液中の小麦に対するIgE抗体の量を調べることで、小麦アレルギーかどうか知ることができます。小麦を異物と認識する人は、小麦に対するIgE抗体の量が多いからです。ただ、小麦に対するIgE抗体の量が多いからといって、必ず小麦アレルギーというわけでではありません。

皮膚プリック検査

ブリックテスト

アレルギーの原因物質を皮膚から入れて、膨疹(皮膚の腫れ)ができるかどうか調べます。この方法は、食品以外の、ゴムや薬品などにも適用できます。検査は比較的簡単で、前腕の内側に原因物質と思われるもののエキスを垂らし、その上から専用の針で皮膚を刺して、エキスを皮膚の中に入れます。15分後に、現れた膨疹の径を測定することで、即時型アレルギーの有無を調べます。

食物経口負荷試験
小麦を実際に食べてみて、どのような症状が出るかを調べる検査です。最も信頼できる結果が出るといわれています。必ず専門医の指導のもとで行ってください。

セリアック病の確認方法

血清学的検査(血液検査)
血液中にセリアック病によく見られる3つの特異的抗体(通常はIgA抗体)があるかどうか、確認します。具体的には抗組織トランスグルタミナーゼ(tTG)抗体、筋内膜抗体(EMA)、脱アミド化グリアジンペプチド(DGP)抗体の3つを調べます。

遺伝子検査
血液中の白血球の型を調べます、赤血球に、A型、B型、AB型、O型といった血液型があるのと同様、白血球にも血液型があります。セリアック病の患者さんは、白血球抗原(HLA)に、必ずDQ2もしくはDQ8という型を持つことがわかっていますので、その有無を調べます。HLAの型は遺伝するので、セリアック病には遺伝性があります。一方、ノンセリアックグルテン過敏症(NCGS)はHLA抗原の型とは無関係なのて、この検査は、セリアック病と、NCGSの判別にも用いられます。

内視鏡検査
小型のカメラを備えた長いチューブを、口から小腸の上部まで入れて観察するとともに、十二指腸下降脚のから小さな組織サンプルを採取し(これを生検といいます)、細胞壁の絨毛が損傷していないか調べます。またカプセル内視鏡を口から入れて、消化管の内部を連続的に撮影する場合もあります。

内視鏡

ノンセリアックグルテン過敏症(NCGS)の確認方法

NCGSは、セリアック病や小麦アレルギーがない場合に、グルテンの摂取が胃腸および腸外の症状を誘発する状態として仮に定義されています ¹⁾。またNCGSにはいまのところ確定診断の基準がありません。医師によって、さまざまな検査が行われているようです。

ペプチド検査
小麦などに含まれるたんぱく質であるグルテンが分解されてできるペプチドの一つであるグリアドルフィンと、乳たんぱく質であるカゼインが分解されてできるペプチドの一つであるカソモルフィンの尿中の濃度測定することで、グルテン、カゼインの分解能力に問題がないか、また小腸細胞のバリア機能が低下していないか、現在現れている臨床症状が、グルテンやカゼインと関係があるか、について確認する検査です。

尿検査

IgG抗体検査(血液検査)
体内に侵入した異物に結合し、異物を除去するために働くのが抗体です。小麦アレルギーのような即時型アレルギー反応では、IgEという抗体が働きますが、NCGSのように、症状があらわれるまでに時間を要する遅延型アレルギー反応では、IgG抗体が働きます。したがって、ある特定の物質に対するIgG抗体が、血液中にどのくらいあるか調べることで、その物質を異物と認識しているかどうかの目安になるといわれています ²⁾。
一方で、IgG抗体は健康な人にも存在し、IgG抗体のレベルは食物の摂取量に比例するだけなので、米国、欧州のアレルギー学会や日本アレルギー学会では、診断的有用性はないといっています ³⁾。

いかがでしたか。少し専門的な内容になりましたが、自分の症状に合わせて、適切な検査を受けることが重要です。ウェブサイト You can グルテンフリーライフでも、わかりやすく解説していますので、ぜひご覧ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
次週は、こんな症状ありませんか? グルテンが関係しているかも!と題して、グルテンの害について解説します。ご興味のある方は、フォローしていただけるとうれしいです。

参考文献
1) Skodje GI, et.al., Fructan, Rather Than Gluten, Induces Symptoms in Patients With Self-Reported Non-Celiac Gluten Sensitivity, Gastroenterology, 154 (3) 529-539 (2018)
2) アンブロシア株式会社ホームページ
https://www.ambrosia-kk.com/about_allergy/foodallergy.html
3)〔学会見解〕血中食物抗原特異的IgG抗体検査に関する注意喚起、日本アレルギー学会HP
https://www.jsaweb.jp/modules/important/index.php?content_id=51

まとめ

小麦アレルギーの検査は、IgE抗体検査、皮膚プリック検査、食物経口負荷試験。

セリアック病の検査は、血清学的検査、遺伝子検査、内視鏡検査。

ノンセリアックグルテン過敏症の検査は、ペプチド検査、IgG抗体検査があるが、日本アレルギー学会などはIgG抗体検査の有用性を否定している。

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