おぞましさと記憶

ふと気づけば、私は、家の近くのパン屋さんに置いてあるソファで横に寝転び、天井に設置されたチカチカと明るすぎる照明の周りを、本当に小さい小さい小鳥がくるくると回る、そんな、非現実的で、混沌とした様子を眺めていた。
そのままぼーっとしていると、カシャリと場面は変わり、行ったことも見たこともない居酒屋に移る。そこで酒を呑んでいた。全く知らない人と。
するとまた場面は変わり、大きいラウンドワンの横の、暗くてよく分からないビルの屋上に更によく分からない知らない人と一緒に会話をしていた。
相手の顔は真っ黒に塗りつぶされ、よく見えなかったが、きっと本当に知らない人だ。私はピンヒールを履き、黒い服を身に纏っていた。

そして何故だろうか、私はピンヒールを脱ぎ、その屋上から勢いよく飛び降りた。
するするする、と落下していき、地面に叩きつけられると、ゴツン、と鈍い音がした。
しかし、不思議と痛くない。身体も頭も痛くない。私はゆっくりと起き上がって、落下したすぐ横にあるマンホールを見つめた。しかし、そのマンホールはぐちゃぐちゃでブヨブヨでマンホールと認識するのに少しの時間がかかった。

カシャリ、カシャリと変わる場面は、私を困らせる。
次は狭くて小さく、小汚いまんだらけ(まんだらけと言えるのだろうか?)で働いていた。その時の私は、とても鮮やかな黄色のワンピースを着ていた。
そして店長らしき男性に「店の物全部売るまでは帰さない」と言われたが、その”私”には帰る場所なんて無い。何も無かった。
とにかく私はそのまんだらけの店内をなんとか空っぽにして、ふらふら、ぐらぐらとあてもなくその店をあとにしたのであった。




私の記憶はここまで。
まだまだ先はあったけれど、忘れてしまった。

私は2週間以上も昏睡状態でした。
何があったのかは、お察しください。

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