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ハリウッドのCGは何が凄いのか

一昔前までは、ハリウッドに較べ邦画はイマイチと言わていた。昔からアニメは少し別格だったが、近年は実写も元気が良い。成功の一因はハリウッドに追従せず独自の価値観を貫いたことだろう。

これは勿論素晴らしいことなのだが、しかし多様性が花開く映像業界にあっても比較的一本化された価値観が存在するジャンルもある。例えばフォトリアルなCGがそれで、作品全体としては素晴らしくてもCGだけはハリウッドに及ばない、と評価される邦画は多いのではないかと思う。ではハリウッドのCGは何が凄いのか。

このテーマを網羅的に論じることはできないので、以下、一つの例から全体を望遠するような方法で書いてみようと思う。

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アカデミー賞を総ナメにした「フォレスト・ガンプ」という映画に、戦争で脚を失った軍人が登場する。このCGは迫真の出来栄えで当時話題になった。これは種を明かせば役者の膝から下を1コマづつ手作業で消しているだけで、別に何か天才的な方法を用いている訳ではない。天才的でない方法でやろうと思ったことが天才的なのだが、とにかくこれなら日本でも頑張れば真似できそうである。でも、それだけで終わらないのがハリウッドなのだ。

その軍人が尻もちをついた状態で、腕の力だけで体の向きを変える場面がある。投げ出された脚の膝から下は執念の手作業で消し込むのだが、彼らはその上で、もし膝から下があれば当たってしまう位置に家具を合成したのだ。この合成は技術的には難しくないが、これがあることで映像に魔法がかかる。この発想は一般的なCGの方法論の外側にあるが、それでもCGクリエイターにしか思いつけないものだ。それだけの人材がいる層の厚さと、その提案が演出側に通る柔軟性などが相まって最終的にアカデミー視覚効果賞を獲るクオリティになる。つまりハリウッドCGの凄さとはコピー可能な単一の方法論ではなく、もっと全体に染み渡った本質的な何かなのだ。

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ちなみにAfterEffectsという大定番のCGアプリがあるのだが、名前くらいは聞いたことのある方も多いかもしれない。これさえあえばとりあえず今風の映像になる便利なアプリで、アップデートを重ねるうちに機能もとんでもなく進化している。「フォレスト・ガンプ」の時代には一部のハリウッドスタジオにしかできなかったことの多くが、今ではAfterEffects上で可能になっているのだ。

今はこのアプリをハリウッドもYoutuberも使っているので、その部分での差別化は難しくなりつつある。勿論AfterEffectsが全てではないのだが、とにかく大勢としては誰でも軍人の脚を消せる時代になっていくのは間違いない。

しかしそれでも全てのCGが均質化することはなく、優れたクリエイターのCGは他にない輝きを放ち続けるだろう。その違いを生むのは結局のところ「軍人の脇の家具」なのだ。「軍人の脇の家具」は方法論として一般化できない。しかし逆に言えば、本当に創意工夫してそれぞれの作品に於ける「軍人の脇の家具」を見出すことができれば、ハリウッドに我々が肉薄することも不可能ではないと僕は考えている。


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