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20240823 直上花火

ある方から「ムロツヨシさんがかつて野外劇で花火を上げようと試みて、実際に見積もりをしてみたところあまりの予算に太刀打ちできず、結局垂れ幕で花火を表す、という形に落ち着いた」という話を聞いたことがあった。

▼舞台で消えものといえばまあ飲み物とか、食べ物とか、基本的にはそういうちょっとしたものを指すけれども、花火も確かに消えものである。そうして花火と演劇が奇跡的に邂逅を果たしている作品というのが、世の中にはある。

▼富山県の利賀村で毎年夏に開催されているSCOTサマーシーズンは今年で49回目を迎える。冗談抜きで世界各国から富山県の山奥のこの村を目指して多くの人達が訪れる。今現在も世界各国の若者たちが50人以上演劇を学びにやってきていて、かと思えば新潟市のダンスカンパニー、金森穣さん率いるNoismの方達や、東京で活躍している瀬戸山美咲さんらのプロダクションが利賀にいたりする(私もそのサマーシーズンの片隅に参加している)。

▼三週末に渡って開催されるこのサマーシーズンの、毎週土曜日の夜に上演されるのが『世界の果てからこんにちは』、通称“果てこん”と呼ばれる花火芝居である。花火芝居、とは文字通り花火withお芝居である。

▼かの磯崎新さんが設計した世界にも類を見ない野外劇場で舞台を観ていると、観客席で観ている自分の頭の真上に花火が上がる。あんまりああいう至近距離で花火を眺める機会というのも人生ではなかなかないような気がする。花火の破裂音がかつてないほど物理的に鳩尾にズシンと響いてくる。

▼劇場の周りには合掌造りの茅葺きの屋根の建物があったりするので、万が一にも燃えたりしないようにと本番日のお昼には消防車が来て大量の水を掛けたりしている。言うは易し行うは難し、一回の公演で何百発の花火が打ち上げられ、小劇場の公演がフルフルで数公演分行えるくらいの予算が必要だと、風の噂で聞いたことがある。普通ならできないはずのことが、わけのわからないスケールで現にここではできている、変な場所である。花火芝居なんて観られるのは世界でもここだけなので、観たことがない人はぜひ一度足を運んで観てもらえたらな、と思う。今シーズンの果てこんは、本日初日である。

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◆日本全国の73名の方々から535,000円の応援をいただき、資金調達が無事に成功しました。ありがとうございました!!
【平泳ぎ本店 クラウドファンディングについて】
「一枚の舞台の床が、才能のゆりかごに。
野外で自由に演劇を上演できるようにするための所作台をつくりたい。」

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平泳ぎ本店/Hiraoyogi Co. 第8回公演
戸山公園野外演劇祭参加作品
『若き日の詩人たちの肖像』
2024年 5月17日(金)ー19日(日)
各日18時30分開演(17時45分受付開始・開場)
※雨天決行
於:戸山公園(箱根山地区)陸軍戸山学校軍楽隊 野外演奏場跡
https://g.co/kgs/Ksc4VNJ
【チケット】
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【公演詳細】

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