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平野啓一郎|小説『マチネの終わりに』後編

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平野啓一郎のロングセラー恋愛小説『マチネの終わりに』全編公開!たった三度出会った人が、誰よりも深く愛した人だった―― 天才ギタリスト・蒔野聡史、国際ジャーナリスト・小峰洋子。四十… もっと読む
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#連載

6月3日 毎日放送「ちちんぷいぷい」にて、平野啓一郎のインタビューが放送されます

6月3日(金)13:55〜17:50 毎日放送「ちちんぷいぷい」にて、平野啓一郎のインタビューが放送さ…

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書籍『マチネの終わりに』、発売から2ヶ月で第4刷が決定しました!

毎日新聞とnoteで連載していた『マチネの終わりに』の書籍が、発売から2ヶ月で第4刷となりまし…

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明日5/27(金) 平野啓一郎からのメールレターvol. 4を配信します

平野啓一郎から直接メールが届く『Mail letter from 平野啓一郎』のvol. 4が、明日午前10時に…

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【cakesで連載されている『文學者の肖像』に、平野啓一郎のインタビューが掲載されて…

文学とは、なんなのか。 文学者たちは今をどうとらえ、いかに作品に結実しているのか。 cakes…

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【大変お待たせしました】Amazonに書籍"マチネの終わりに"が再入荷しました!

Amazonで大好評のため、在庫を切らしていた書籍"マチネの終わりに"が、 本日再入荷致しました…

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『マチネの終わりに』作品展は4月18日まで!最終日にはサイン会を開催します

こんにちは。平野啓一郎です。 熊本を中心とする九州の地震が心配で、なかなか落ち着きません…

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京都岡崎蔦屋書店にて、平野啓一郎と美術評論家・林道郎によるトークとサイン会を開催します

今年の"KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭"のテーマ「Circle of Life|いのちの環」に関連したトークイベントを、京都岡崎蔦屋書店にて開催します。 "KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭"は、京都を舞台に開催する日本でも数少ない国際的な写真祭です。芸術的手法である「写真」への理解とその可能性を伝える事を目的としています。 京都にゆかりが深い平野啓一郎と、美術批評家・上智大学教授であり、写真批評も行う林道郎氏が、KYOTOGRAPHIEの楽しみ方を、独自

『マチネの終わりに』作品展、本日より開催しています!

毎日新聞とnoteで連載した、平野啓一郎の小説『マチネの終わりに』。 新聞での連載時の挿絵…

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『マチネの終わりに』第七章(17)

 あなただけは、純粋無垢な美しい人間だって、どうして信じられるのかしら? 誰も文句のつけ…

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『マチネの終わりに』第七章(18)

 「なかなか、一般には理解されにくいことだけど、彼女たちと話せば、君も見方が変わるよ。最…

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『マチネの終わりに』第七章(19)

 あの時、何が起きたのか?――洋子はまず、リチャードではなく、クレアに抱きしめられた。そ…

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『マチネの終わりに』第七章(20)

 あれも、自分にバグダッドを思い出させる悪い記憶の一つだったのかもしれないとさえ考えた。…

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『マチネの終わりに』第七章(21)

【あらすじ】蒔野と洋子が偽メールの事実を知らぬまま決別して二年が過ぎた。蒔野はマネージャ…

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『マチネの終わりに』第七章(22)

 名医だと人気の産婦人科通いの効果もあって、ケンの妊娠は思いの外早かった。それが、どれほどの喜びをもたらし、自分の人生を新しく感じさせたかは、幾ら言葉を尽くしても足りなかった。リチャードも、そして、双方の家族も皆が祝福してくれた。その笑顔がまた嬉しく、少しくプレッシャーにも感じた。  四十二歳となっていた洋子は、これが恐らくは最後の出産のチャンスだろうと思っていた。  悪阻が重かっただけでなく流産の懸念もあり、夫婦関係は保守的に慎んだ。リチャードは、それを当然のこととして