『マチネの終わりに』第一章(13)
「わたしの母のルーツは長崎です。」
「えっ、九州なんですか?」
三谷は、テーブルの端の者まで振り返るような大声を出した。
「ええ。夏や冬には、よく祖母の家に遊びに行きましたから。海でも泳いだし。」
「へー、急に親近感が湧きますね。なんか、日本人って感じで。」
「日本的だと思います、わたし。実際、よく言われますし。父の方はルーツが複雑なんです。父方はオーストリア系イタリア人で、母方は元々はブルガリア系ですから。でも、母はシンプルです。祖母の真似をして、長崎弁も覚えま