見出し画像

さくらやで接客したお客さん、翌日フジテレビの入社試験に行ったら、受付にいた話し

1997年のこと。
明治を卒業した年。
つまり就職浪人一年目。
卒業前の2月1日からさくらやの店頭に立ってカメラを売り始めた。

もちろん、カメラや写真の構造については明るいから、
販売するのに戸惑うことはなかった。
初日から何台か、売ることができた。
順調なスタートを切った。

そして販売員の仕事にも慣れてきたころ、写真やカメラについての知識がない男性を接客する機会を得た。
丁寧にじっくりと、説明をさせていただいた。
私はペンタックスからお給料をもらう派遣販売員で、
でもそのお客さんにお求めいただいたのは、ニコンのF70というカメラのレンズキットだった。キャノンでいうところのEOSKissみたいな入門機だ。

とても仲良くなった、というか、我ながら丁寧に接客したので、とても感謝していただいた。
もちろん個人情報を交換したりすることはなかったが、商品をお求めいただいたし、お客さんも私の接客に満足か感謝かしてくださって、よい時間を過ごすことができた。
とても心地よい時間だった。

そしてその翌日。

私は就職浪人一年目で、マスコミ志望だった。
私はフジテレビの記者職の書類選考を通過して、
翌日は1次面接だった。新しく移転したばかりのお台場に行った。
日本テレビも書類選考は通過した。
日本テレビはまだ新本社ではなく、麹町だった。

フジテレビに行ってみると、いきなり受付に昨日接客してさんざん話した男性がいた。

「あ、どうも」

という感じで、私はさらっと挨拶をした。それ以上の会話はない。
それから1次面接が終了し、私はまた受付に戻った。それからただ帰宅するだけである。
帰り際、その男性は一言だけわたしに向かって言葉をかけた。

「それとこれとは別ですから」


そんなことはわかっとるわい。

その男性は受付にいるくらいだから、人事に口を出せるほどの職位ではないだろう、というのは容易に想像できる。
さらに、人事に口を出せたとしても、「昨日丁寧な接客を受けた」ことが
大いにプラス材料になるとも思えない。
社長とか創業者とかならまだしも。

もうちょっと気の利いたこと言えよ、って、思う。

だって、だれも口利いてくれることなんぞ、期待しとらんのだから。

そして、私がフジテレビの2次面接に進むことはなかった(笑)。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?